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蘭癖高家  作者: 八島唯
第2章 江戸を震わす狐茶屋
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待ち伏せ

 暗闇を蠢く一団。

 指で合図をしながら二手に分かれる。主だったものは裏口へ。それ以外は門の前に闇を合間を縫うように、小走りに。

 門前にたどり着く盗賊たち。慣れた風に一人が塀をよじ登る。旗本屋敷とはいえ二百石の小身、さして大きなものでもない。内側から閂をはずし、門外の仲間を呼び寄せる。使用人は数人。それも年寄りばかりである。たとえ目を覚ましたとしても、対して障害になるわけでもない。

 玄関にたどり着く一隊。扉を壊そうとした次の瞬間――木の扉が自ら開き、提灯の明かりがあたりを照らす。

 おもわず身構える男たち。次の瞬間には抜刀し、体制を整える。

 光の中から、巻羽織に着流しの男が現れる。手にはいかにも太い――十手を構えながら。

(町方か――?!)

 一瞬怯むも、相手が一人であることに気づく男たち。右手を上げ、取り囲んで『殺る』合図を出す。

 十手の男は手に持っていた提灯を空に放り投げる。

 次の瞬間、男の姿が消える。

 ばぎぃ!

 黒装束の一人が地面に倒れる。したたか十手の男の攻撃を身に受けたらしい。

「大したことはござんせんな。もう少し、手練を差し向けたと思いましたが」

 十手を掲げる男。町方のようであるが、どこまでも顔は青白く、そしてなんとも言えない気味悪さに満ちていた。

「南町同心、そして『蘭癖高家』さまが家臣稲富平左直禎が盗賊を退治してくれようか!」

 名乗りの最中に上段から剣を振り下ろす一人。

 次の瞬間、その刀は真っ二つに折れ、男は喉を潰され地面の上に転がっていた。

「並の十手とは違いますよ、盗賊の方々。太さは二寸五分、骨に当たれば粉々に砕きますさぁ」

 もう一人が槍をつく。その槍の穂先も軽々と十手で叩き落した。

 僅かなうちに、玄関に静寂が訪れる。盗賊共は無様に土の上に転がり、泡を吹いているものもいた。

 平左は屋敷の彼方を見つめる。

 どかどかと音が響き渡る。それはもう盗賊の一隊が裏口より入っていたことを示していた。


 盗賊の主力は裏口より屋敷に侵入する。障子を開け放ち、部屋の中を覗き込む。

『いない』

『こちらにも』

 数部屋を巡るも、人の気配はまったくない。逃げられたか――そう判断するより早く、一人の野盗が大きな声を上げて庭に転がる。

 構える盗賊たち。敵は庭にいるようだ。どうやら謀られたらしい。縁側に整列し、敵を囲い込もうとする盗賊たち。

 彼らは見た。

 暗闇の庭に立つ、長身の男性を。

 髪は金色に光り、その風体はこの国のものとは違うまるで鬼のような格好をした。

 ――そう、『蘭癖高家』の姿を――

 

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