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蘭癖高家  作者: 八島唯
第2章 江戸を震わす狐茶屋
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統秀の申し出

 その日より、多鶴の後を常につけるようになった平左。

 正直、気持ち悪くもあり、また自分の未熟さを思い知らされているようでもあり、なんとも言えない気持ちであった。

 しかし、統秀がそのように命じたのであれば受け入れるしかない。

 屋敷で統秀は書面を山のように積んでなにやら、難しい顔をしている。

 三浦の所領で打ち明けられた、秘密。何か大きなことをしようとしているのは多鶴にも理解できた。それが天下国家につながることで、また多くの民のためになることであろうことを。

 それに比して自分の小ささよ。

 私利私欲の結果、目付高山乗元にいいように利用され結果、統秀に迷惑をかけている身の上である。

「なにかしたいと――」

 帳面に目を落とし、それをたぐりながら統秀が応える。

 なにか自分にできることはないか。このままではあまりにも申し訳ないと。

「そなたは、高山主膳に対する大事な証人だ。いずれやつの悪行は暴くことになる。それまではゆっくり――とも言いたいところだが、そうもいかんようだな」

 ぱたんと帳面を閉じて、多鶴の方を見つめる統秀。流れる総髪と涼やかな目が多鶴に向けられる。

「ならば、自らを鍛えてもらおうか。江戸の町中では少し差し障りがある。私はここを離れられないので、平左にお願いしようか」

 平左、嫌な名前を聞く。あの気持ち悪い同心である。確かに十手の技は巧みであったが、自分に剣術をつけるほどの腕の持ちぬしなのだろうか。

「こちらに来なさい」

 統秀が屋敷の奥に多鶴を誘う。奥まった納戸。鍵を開け、暗い納戸の中から黒塗りの箱を運び出す。

 それを奥の間の畳の上に、そっと乗せる。何が出てくるか固唾を飲む多鶴。

 箱にも鍵がかかっており、それを外して蓋を開ける。

 幾重のさらしに巻かれた細長い棒。最後に包まれた油紙を取ると黒光りする、鉄棒がその姿を表した。

「......!」

 田鶴は驚きのあまり思わず手を口にあててしまう。

 それは火縄銃――いわゆる鉄砲と呼ばれるものである。江戸には『入鉄砲に出女』という有名な格言がある。参勤交代で江戸に来た大名の婦女は、関所で必ず厳しく取り締まりを受ける。逆に江戸には鉄砲などの危険な武器は入れないということわざである。

「これは私の所領から直接運ばれたものだ。関所云々は問題ではない」

 淡々と語りながら、統秀は銃を取り出す。

 火縄銃――のようにも見えるが、多鶴には少し形が違うように見えた。

「烏銃と呼ぶ。今までの火縄銃とは一線を画している。これを――」

 すっと銃を多鶴の前に掲げる統秀。

 その黒く鈍く光る小銃に多鶴の視線は釘付けとなっていた――

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