広場にて
広場の噴水に
ふやけた指紋を残した
コインが沈んでいる
偉人の横顔が
水底から
夜空を見上げる
青い影に月は宿る
街角を吹き抜ける風が
夜香木の薫りを運ぶ
石畳の溝の土埃
残らない足跡
放射状の筋道の
どれか一つに
家路へつづく
道があると言うのなら
あなたはどのように
それを選んできたのか
教えてほしい
行き交った日々の
声はもう眠りにつく頃
水は静かに
そこに溜まっている
幸運は尽きても
まだそこで
願われている
過ぎ去った喧騒が
水銀灯に立ち上り
私はそれを
指を鳴らして
一つずつ
消していく
踏み出すごとに
遠ざかる夜
ここからは
寂しい道のりだと言うのなら
私は後ろを向いて
コインを投げるだけ