表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/96

4章 天秤の星22―作戦を立てる―

 はっと意識が浮上した。目の前にいるマルフィクが眉根を寄せてじっと俺たちを見ている。数回目を瞬くと、頭も起きた。

 同時にどっと胸が大きく鳴って、体が熱くなる。

「ねえ、レグルス。天秤の神って今の状況を見たらどう思う?」

「そりゃあ、嘆くんじゃねぇか?」

 俺もそう思う。だって、天秤の神は戦いを絶対に望んでいなかった。こんな、否応なしに戦いに駆り出され、見世物にされる風景なんて天秤の神は望んでなんかいない。

 ひゅっと体温が落ちた。でも、それができてしまうほど、天秤の星に今、天秤の神の影響が薄い。頭にあのひからびた天秤の神の姿がまた浮かび上がる。力のない身体、意思の感じられない光を映さない瞳。生きてないような精気のなさを感じた。彼はもう天秤の星の民のことを諦めたのだろうか。あれだけ信じたいと言っていたのに。

 でも、それも蛇使いの星が離脱した時だとすれば六千年も前の話。遠い過去の話だ。諦めてしまっても仕方ないかもしれない。でも、まだ希望はあると”確信”している。だって、双子の神のポルックスだって、六千年も過去に縛られても諦めなかった。だから、民と繋がれたんだ。だから、六千年の時は問題なんかじゃない。

 問題なのは、今。天秤の神が沈黙してること。エスカマリさんに力を使わせていることだ。打開策なんて、思いつかない。でも……。

「マルフィク。俺、やってみたいことがあるんだ。エスカマリさんのところに行けないかな?」

 エスカマリさんは今、大きな天秤を出した上に座っている。そこからヘレとスピカのやりとりを眺めているんだ。早く辞めさせないと、ヘレとスピカが危ない。

 俺は目の前のマルフィクの顔を見た。俺とレグルスのやり取りでもう状況を察しているようで、肩を竦めてみせる。

「使える加護による……けど、いいぜ。サポートしてやる」

 マルフィクが頷いてくれた。良かった。俺は今度はレグルスの方を見る。

「レグルス、たぶん時間がかかるんだ。その間にヘレとスピカを助けられない?」

「そうだなぁ。俺流でいいならやれるだけやってみるぜ」

 レグルスは笑って親指を突き出した。任せとけとは言わないけど、どうにかしてくれそうな雰囲気でほっとした。

「うん!」

 頷くと、レグルスはすぐに踵を返す。どうやら思いついたことがあるようだ。

「じゃあ、作戦立てッぞ」

「もちろん」

 マルフィクと向かい合い、俺は天秤の神の話と打開案を話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ