3章 山羊の星22―賛同者の集い(マルフィク)―
赤い星が沈み、青い星が空に浮かぶ。
赤い星が上った時は焦りに焦ってたくせに、もう調子こいてやがるアイツは喧嘩した相手と会ッてンだろう。
修行にも差支えがあるから、さッさと仲直りでもして精神的に安定してほしいんもンだ。
ンなことより、オレはどこまでアイツのことを師匠に話すべきか考えておかねェと……。
前と同じで、木々の合間から覗く光のもとへ足を運ンだ。
なンで牡牛のと水瓶のが師匠と一緒にいるンだ?
「マルフィク、来たね。ほら、こっちにおいでよ」
「…………」
口元だけの笑みを浮かべた師匠が隣を示した。断る理由も思いつかねェし、従うしかない。
俺が指定された位置に腰を下ろせば、イヤでも他の二人から視線を受ける。
「緊張なさらなくても大丈夫ですわ~」
「そうですよ、マルフィクさん。僕たちはレーピオスさんの仲間ですから」
にこにこと笑みを浮かべてるが、腹で何考えてるかわかンねェヤツらだ。オレは二人のことは無視して師匠へ目を向ける。
「二人は私たちの賛同者だよ」
オレの視線の意味に的確な返答を寄越してくる。オレはどこまで知ッてるのかと、目を細めて二人を眺める。
「はっきり言った方がいいでしょうね。神殺しについて賛同してるんですよ」
水瓶の言葉に、ある程度話が通ッてることがわかる。だからと言ってオレからそれ以上の情報を渡す必要もない。
俺は返答もせずに師匠に顔を戻して、呼び出した理由を聞く。
「で、なんの用なンすか」
「もちろん牡羊の迷い子のその後を聞きたくてさ」
この場ではッきりと言うンだから、アイツのことを話しても構わないンだろう。だけど……
「……アスクは、順調に加護を使えるようになッてます」
「それは、迷い子の力がわかったってことかな?」
くそ、洗いざらい話せッてコトか?
どこまでなら話しても大丈夫だ……? 別にアイツをかばうわけじゃねェが、イヤな感じが拭えねェ。
「多少ッすけど。どうも加護との意思疎通が声に出さないと無理ッぽくて、加護と話し合ってパターン決めて……技に名前をつけるようにしたら上手く――」
「マルフィク。本当はわかってるんだろう?」
「っ……」
お見通しッてか。師匠は本当にやりづらい。
「僕、アスクさんが牡羊の封印を解いた時、見てましたよ。マルフィクさんの加護がアスクさんの体から出た時に、力が増してたの」
水瓶のヤツが割って入ってくる。余計なことを……ごまかすのは無理か。
「……はあ。師匠こそもう検討つけてるンじゃないッすか。アスクが牡羊の加護を取り戻した後、あンたの加護をオレがアスクにくッつけたンッすから」
「予想はついてるけどね。で、どうなんだい? 一緒にいて、確信は持てたかい? 星の子だって」
「……あいつの話を聞けば聞くほどそうでしょうね。あいつの性質は神や人間じゃない。星そのものッすよ」
星は、神の力で繁栄する。そして、繁栄した星は神の力を増幅させ還元する。神と星が切っても切れない関係ッて言われてるのはそのせいだ。
アイツの力は星と同じだ。オレたちが加護を自分の中に吸収して、神と同等になるのとは違う。加護が、力がそのままの状態で増幅する。アイツが加護の力を使えるンじゃない。加護が、自分の意志でアイツのために力を使っているンだ。
「まあ~、すごいですわ~。アスクさんは神や加護持ちに莫大な利益をもたらしますわね~」
「仲間になれば心強いことこの上ないだろうね」
牡牛のヤツに師匠は上機嫌で応える。利用するならッて意味だろうけどな。
「でも、僕たちにはちょっと邪魔な力なんじゃないんですか? 加護の力が増幅って、下手したら神の量産ができるじゃないですか」
「いくら神を滅しても~、増えるのでは手に負えませんわね~」
「本人がその力を知って、神に捧げるならだいぶ手がかかるだろうね。彼はどこまで自分の力を理解しているのかな?」
「さあ? まだ全然わかッてないと思いますけど?」
意識してわかッてるわけじゃないはずだ。むしろ気づかないようにしてるように見える。
「僕も見てる限りはわかってないと思いますよ」
「ふーん? オフィウクスの加護を使ってないのかい?」
たしかにアイツのオフィウクスの加護は、アイツの力を教えてくれるはずだ。だけど、ここまで使う気配が全くない。本能的に危機でも察しているのか……。
「使ッてないです」
「へぇ、じゃあちょうどいいかもね。彼女とも会えなかっただろうし」
師匠の薄ら笑いに、背中が寒くなッた。アイツは師匠の手の上で転がされてンのか。不憫なヤツだ。
オレは知ってる。オフィウクスの加護をアイツが使ッたらどうなるのか。
本当師匠はやりにくい。
ヤな感じだ……。
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