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3章 山羊の星21―アスクとタルフの手合わせ―

 夜はあっという間で、すぐに昼になった。

 力が戻った俺はタルフと力試しをすることになって、今彼と向き合っている。

 集中しなきゃいけないのに、カプリコルヌス様が戻ってきて伝えてくれた内容が頭から離れない。

「浮かれすぎやざ」

「現金ですよね~」

 思い出してほほが緩むのをタルフは呆れながら、サダルはからかうように指摘してくる。

 仕方ないだろ。カプリコルヌス様がヘレから伝言を預かってきてきてくれたんだから。「次の夜に、ちゃんと話をしよう」って。

「う、うるさいな~! 二人みたく喧嘩してすぐ仲直りできないんだよ!」

「うらはサダルのことを許した覚えはないやざ」

「仲直りっていうか、そういうもんだっていう割り切りですよ~」

 サダルの言葉にタルフがじと目を向けるが、サダルはふふんと鼻を鳴らしてさらに煽っている。そのうちまた喧嘩になりそうな雰囲気だ。

「ええ? 二人は仲良いの? 悪いの?」

「腐れ縁やざ。イヤなら口きかなければいいんやざ」

「タルフはああ言ってますけど、仲は良いですよ。僕はタルフのこと好きですし、タルフは僕のこと嫌いになりませんから~」

「嫌いやざ」

「ひっどーい」

「オイ、いつまでぎゃいぎゃい騒いでンだ」

 いつまでも力試しを始めない俺たちにマルフィクがイラついている。

「マルフィクさんも混ざればいいじゃないですか~。そんな寂しそうな顔してないで」

「ンな顔してねェ」

 けど、サダルの軽口に呆れたように息を吐いた。

「とッとと始めろ」

 マルフィクの言葉に今度こそ俺は気を引き締めた。ヘレとの問題がなんとかなりそうなのはうれしいけど、俺には他にもやらなきゃいけないことがある。この修行で一番大きく成長して、褒美をもらって過去を見に行く。そして、双子の神殺しの真相を知るんだ。

 だから、ちゃんと気合を入れていかないといけない。

「じゃあ、タルフよろしくね」

「手加減はしないやざ」

 さて、どうしようか。タルフの加護の力を俺は知らない。マルフィクはタルフと力試しをしてたから知ってるはずだけど、俺には教えてくれなかった。

 対してタルフも俺の力についてはそこまで詳しく知らないはずだ。

「考え事してるんなら、こっちから行くやざ」

 タルフが地面を蹴って迫ってくる。慌てて後ろに後ずさると、びゅっという音が耳に届いた。

「え?」

 少し遠くで何か振りかぶったと思ったのに、タルフは何も持ってない。

 戸惑っているうちにタルフが再び腕を振るう。

「ぐっ!?」

 避けたつもりだったのに重い”何か”に押されて、木に背中が叩きつけられた。

 何今の!? ”何もない”のに吹っ飛ばされた!

「アスク、さっさと立て」

「双子の加護、脚力の強化!」

 マルフィクの言葉がサダルの水の通信機から聞こえて、俺は慌てて双子の加護を使う。強化された足で地面を蹴って、タルフの拳を避けた。俺の背中にあった木が派手な音を立てて揺らいだ。何かに殴られたような音と衝撃。もちろんタルフの拳が木に当たったわけじゃない。

 やっぱりタルフは何かで攻撃してる。それがタルフの普通の攻撃範囲より大きいものである以外何もわからない。

「タルフはどうやって攻撃してきてるんだ……?」

「答えんやざ」

「勝負中に自分の手の内をさらすわけないじゃないですか」

 俺の呟きは水の通信機に拾われたらしく、タルフが端的に、サダルが補足のように詳細を言ってくる。

「なら、見破ってやるさ! 今度はこっちから行くぞ」

 守りだけじゃ一向にわかりそうにないし。

「牡羊の加護、矢でタルフに攻撃をして!」

 複数の矢が俺の周りに現れて、俺の言葉が終わると同時にタルフへと放たれる。けど、タルフには届かなかった。タルフが左手を上から斜め下にすっと動かしただけで、矢は勢いを失い、地面へと落ちた。

「どうして……!」

「わかンねェのか、差があり過ぎンな」

「タルフいっけー!」

 タルフが俺に向かって左手を突き出したと思えば、びゅっという音が耳に届いて前からものすごい風がふいてきて、立つのもやっとの状態でわかった。そうか、”風”か。

 そろそろ息がやばいと思えば今度は上からの風に地面に押し付けられた。

「そこまでだ」

 マルフィクの言葉で風が止んだ。

「思ッたより何もできなかッたな」

「言葉で言わないと加護が使えないみたいですね。加護の発動の遅さは致命的ですよ」

「先にやられッからな」

 批評するなら聞こえないとこでやってほしい。負けた悔しさと、思ったよりも加護が使えなかったことにすでに十分凹んでるんだよっ!

「平気やざ?」

「はは、結構ダメかも」

「初めての対人戦やから、慣れれば……いいんやざ」

「……うん、そうだね! ありがとうタルフ。少し元気出たよ」

「別に何もしてないやざ……」

 心配してくれるタルフに少し気持ちが落ち着いた。

 そうだよね、まだ一回目だし。それより加護がちゃんと使えるってことがわかったんだから、これから加護を理解してもっと上手く使えるようにならなきゃ。マルフィクに相談してみよう。

「また次回頼む」

「もちろんですよ! あ、丘から虹の星が顔を出し始めたの知ってます?」

「え、虹の星ってこの修行が終わりの合図の星だよね?」

 最初に山羊の神と会った丘を見ると、確かにほんのりと虹の星が丘から覗いていた。しっかり見ないとわからないくらいだ。

「時間が迫ッてきているのか」

「はい。なので、対人戦をする頻度をあげませんか? タルフももう少しで何かつかめると思うんですよね」

「わかった。アスクも戦い方を身につけさせたいしな」

 そっか、時間が短いのかー……って、俺まだ加護使える状態に立てただけじゃん!?他のみんなより出遅れてるよね!?

「じゃあ、赤い星が半分ほど傾いたらまた来ますね」

「ああ」

 焦っている俺を置いて、サダルとタルフとは別行動となった。

明けましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします。


体調の方が11、12月と崩しておりましたが、復帰してきたので更新再開がんばります。

今年の目標は20万文字突破を目指します!


面白い、楽しい、と感じて頂けたら、

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