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3章 山羊の星9―特訓マルフィク、アスクペア&サダル、タルフペア―

 俺とマルフィクは、焚火にあたりながら声が聞こえてくる方を注意深く観察した。

 二つの声はだんだん近づいてくる。

「――やざっ!」

「――さいなっ!」

 何やら言い合いをしているようだ。この声はたしか――

「サダルとタルフ?」

「あっ、アスクさん! よかった、みつかって!」

 二人の姿が確認できると、向こうも気が付いた様子で駆け寄ってくる。マルフィクが目深にフードを被りなおすのが横目に見えた。

「聞いてくださいよ~。タルフったら、人魚がいたって言うんですよ」

「この目でしゃきんと見たやざ」

 マルフィクが存在感消したせいで、二人が俺に迫ってくる。

「人魚って魚の星の人間のこと?」

「ほやほや」

 魚の星はすべてが水で覆われていて、水の中で生きることができる人間が住んでいるらしい。姿は魚と人の境目だとかなんとか……。

「山羊の神は下半身が魚だったから、見間違えたんですよ」

「カプリコルヌス様がいなくなった後やざ」

「丘から水が噴き出してのまれた後に、アスクさんの傍にいたっていうんでしょ? アスクさん、どうですか? 身に覚えありませんか?」

「ええ……? 俺はすぐ気を失ったからなぁ……」

 そんな姿は見てない。

 俺はその時助けてくれたマルフィクに視線を投げる。

「マルフィクは見た?」

「いンや……魚と見間違えたンだろ」

 顔をそらしたまま、マルフィクは低く答える。なんだか居心地悪そう。人見知りかな?

「ほーら、タルフの勘違いだって」

「あれは絶対、人魚やったやざ!」

 目の前でにらみ合い、また喧嘩しそうなサダルとタルフ。なんか、こういう喧嘩に身に覚えがあるなぁ。

 ちらっとマルフィクを見れば、目の前でバチバチと視線を戦わせている二人を眉をひそめてみていた。

「だーかーら、こだわりすぎなんだよ、タルフは。カプリコルヌス様が言ってたでしょ、ここに人間はいないって」

「……こだわって何が悪いんやざ。俺はおーてみたいんやざ」

 にらみ合いをやめそうにない二人に、マルフィクはため息を吐く。

「はァ……ンなことより、お前らは加護の強化ほッぽいといていいのか?」

「あっ……」

「……よくないやざ」

 マルフィクの言葉に、二人とも目を瞬いてから首を横に振った。喧嘩で忘れてた目的を思い出したようだ。気まずそうにお互い目をそらす。

「すみません。お二人の修行の邪魔をしてしまいましたよね」

 サダルはすぐに切り替えて俺とマルフィクに頭を下げた。

「ううん、今どうやって修行しようか話してたところだから大丈夫だよ」

「修行についてお悩みなんですか? でしたら、とっておきの話があります!」

 サダルはにっこりと笑って、さらりと提案をしてくる。

「タルフと力比しませんか?」

「え、なんで……?」

 予想しない内容に俺は目を瞬いた。

「アスクさんとタルフの現状の力量を見るためです。僕、タルフの加護の使い方を把握したいのですが、誰かと戦ってるのを見て客観的に観察したいんですよね。マルフィクさん、どうですか?」

 サダルは丁寧に説明をしてから、修行をつけるほうのマルフィクに問いかけた。

「いいんじゃねェか。定期的にやッて力量を見た方が効率がいい」

「ですよね! 同意していただけてうれしいです!」

「ンでも、アスクはまだ加護が引き出ねェからやッても意味がねェ。使えるようになッてからだ」

「う~ん。それだと、僕の方が困るんですよね~。タルフの育成にも入れませんし……? よそを当たってもいいんですけどね」

「……めんどくせェ。なら、初回は俺がしてやる」

「ほんとですか? ありがたいです、僕は最初のタルフの力量が見れればいいので」

「別に、こっちもアスクの勉強不足を補えるから問題ない」

「ウィンウィンってことですね♪」

「フン、アスクのヤツ、加護のことはさっぱりわかッてねェからな。見せるのが一番はえー」

 本人たちを置いて、話が進んでいるのは気のせいだろうか?

 タルフを見ればこちらも俺同様、困ったように眉尻を下げている。

「では、タルフのことは決まりということで。もう一点、お願いがありまして……マルフィクさん、僕と戦ってはくれませんか?」

「はッ?」

「いえ、マルフィクさんの実力がわかった方が、タルフとの力の差がわかりやすいかと思いまして。僕の戦い方もアスクさんが見れるとすればそっちにもメリットがありますし、悪くない話かと」

「……別にいいぜ。一人相手にすンのも二人相手にすンのもかわりゃしねェ」

 マルフィクが立ち上がってサダルに視線を合わせた。サダルは頭を下げると、一度タルフに俺の横に行くように促してから、再びマルフィクと対峙した。

「ところで、僕もオフィウクスには興味がありまして。よければ戦いながらオフィウクスについてご教授いただけませんか?」

「いいぜ。お前に俺の話を聞く余裕があるならな」

 先に動いたのはマルフィクだった。どこに持っていたのか三又の槍を取り出し、攻撃をしかけた。

 サダルは口笛を吹くとそれを軽々と跳ねて交わす。

「あ、オフィウクスの話を聞く前に、この話はタルフもアスクさんも聞きたいと思うので、音の増強をさせていただきますね」

 サダルは近場にある水へ近づくと、小さな水の玉を宙に浮かせる。マルフィクはサダルの言葉を了承しているように追撃はしない。

 水の玉はマルフィクの口元とサダルの口元両方に触れると消えた。

「見えないくらいの薄い膜になってますが、それが音を増強させます」

 サダルが話すと、大声を出していないのに声がはっきりと耳に届いた。

「では、再開しましょうか」

 掛け声とともに、二人とも地面を蹴って距離を詰める。

20220607 タルフ口調の調整

ブクマありがとうございます!

大変うれしいです、3章まだ序盤なので執筆がんばります!


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