動物園襲撃…3の10
動物園襲撃…3の10
タイキがいなくなって寂しくないかって?そんなことはない。なぜなら今、ぼくは新たな仕事をしにかかっているからだ。それはカギを使った商売、なんかじゃないよ。確かにぼくは手に職を身につけたから、いつだってカギの110番なんかに就職できると思う。だけどぼくが選んだ道は、スイカ泥棒だった。ま、パンプキンだってよかったんだけどさ、やはり西瓜でしょ。それに泥棒、まさにカギのスペシャリストってわけ。意味のない確信に満ちて、ぼくは歩き始める。もう動物たちを傷つける必要もない。リスの亡霊に惑わされることもない。ぼくは、スイカ泥棒になったわけ。
そんな話をユキにすると”So cool. I like it.”(「すっごくかっこいい。いい、それ。」)だって。ぼくは彼女を助手席に乗せて、ニューオリンズの道を走る。その道がどこに続いているかはわからないけど、走らないと始まらない。誰かさんが言うように。ぼくは再びこの町におさらばすることにした。だっていつまでも同じところに留まるのは性にあってないからね。いや、どこにいたっていいんだ。そう住めば都とはよく言ったものだ。それでもニューオリンズはぼくに多くのものを与えてくれた。何より、ぼくはこの町のファンキーさが大スキなのだ。
「そっか。」とヨウコは寂しがるわけでもなく言った。彼女のアパートメントで「フェアウェル・パーティーにはまだ早いね。」とか言いながら、唐辛子をいっぱいふったペペロンチーノを作ってくれた。ぼくらは暑さの戻ったニューオリンズのテラスで、コロナを飲みながら色んな感傷を胃の中に流し込んだ。「で、どこに行く気?」と彼女が聞くので、ぼくは首を振った。「決めてない。」そう答えると、ヨウコは笑った。「タイキみたいだね。」影響というのは自分でも気がつかないうちに受けているのかもしれない。
パスタを食べ終わると、ヨウコは立ち上がった。「ちょっと付き合って。」と言うので「どこに。」って聞くと、彼女は目をつむった。あまりにもその沈黙が長いので、キスをしようか迷ったくらいだ。だけどしなくてよかった、彼女は自分の感情に身を任せていたのだから。「いいから運転して。」と言うので、ぼくは自分のオンボロ車に乗り込む。そしてヨウコは助手席に乗り、ぼくらはニューオリンズの郊外方面に走り出す。どうやら目的地は明確なようだ。アクセルを吹かして走ると、オークの木々が挨拶してくれているようだった。その中にはあのリスもいるのだろうか。しばらく行くと「そこ曲がって。」とヨウコに言われて、ハンドルを切る。ニューオリンズ・ミュージアムの奥あたりだ。するとそこはニューオリンズ屈指の場所。かの「イージー・ライダー」にも登場したセメタリー、つまり墓地だった。
「なんだよ、こんな場所に連れてきて。」と言いながらも、ニューオリンズの墓地は普通とはちょっと違うのでドキドキした。そう、普通の墓地よりも小高く積み上げられた墓石が美しく特徴的なのだ。「あたし、ここ好きなんだ。」とヨウコは言った。そして、よく見ると彼女の瞳はぬれていた。もしかして、とぼくは思った。あの亡くなった動物たちのために、この女性は泣いているのだろうか。そうだとしたら見上げたもんだ。それとも、浮気をしたタイキを銃で殺して、この墓地にでも埋めたとでもいうのだろうか。隣の木々では、カラスたちが薄情な姿でモノマネ鳥のように鳴いていた。
まるでダンスするように
おれが武器を置くと、みんなは不思議そうな顔でこちらを見た。「どうしたんですか。」とハリオが聞く。「なんだよ、飽きたのか?」とは首のないK。まるでイエスのようだったマークの顔は、普通の顔色に戻っていく。そして悪魔みたいな形相をしていたテリーも、穏やかなお釈迦様のような表情だ。一応言っておくと、マホメットみたいに落ち着いたKの首だけは、さっきからテーブルの上で戦況をうかがっている。「いいんだ、もう。」とおれは言った。そして血を流したリスを手に取り、それを首のないKの手に渡す。「新しいバンドを始めようと思う。」っておれが言うと、首のないKは首を振って涙を流した。




