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動物園襲撃  作者: ふしみ士郎
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動物園襲撃…3の6

動物園襲撃…3の6


 夜の動物園はたしかに暗かった。そして暗闇はぼくらの野性的本能をも増幅するみたいだ。嗅覚は強くなるし、聴覚は鋭敏に聞こえてくるし目も冴えてくる。暗闇でも何かを察知する。「におうね。」とヨウコがうなる。確かに昼間に来たときよりも強く匂いを感じる。「朝飯前。」とタイキが言うと、走り出す。奴の持っているカギがチャラチャラ鳴って、その音で動物たちが起きだした。そしてあちこちからうなり声や鳴き声が聞こえてくる。「まずいぞ。」とぼくが言っても、タイキはすでにはるか彼方にいる。


 すると突然、ヨウコがぼくの手を握った。「なんだよ。」と言おうとしたけど、彼女はぼくを引き寄せてなんと唇に口づけをした。「抱いて。」とヨウコが言う。何を言ってると、言おうとしたけどぼくはジョン・レノンのように服を脱いだ。そして彼女の胸をまさぐり、愛撫した。なぜだか知らないけど動物たちが騒ぐ夜の動物園で、ぼくらは警備員が来るかもしれないってのに抱き合っていた。それは抑えようがない衝動、としか言いようがない。いや常識で考えたらおかしいってことくらい分かるよ。何しろタイキやユキもすぐ近くにいるのだし、ぼくらは友達同士なのだし、それどころか我々は動物園を襲撃中なのだから。でもそんな分別が吹き飛んでしまい、ぼくとヨウコはそのまま体をぶつけ合い快感に身をまかせた。


 動物たちが騒いでいるのが、まるで応援歌のように聞こえてた。後にも先にもそんなことをはこの一回きりだった。正直に言うと、ヨウコとは二度ほど寝たことはあった。以前のアメリカと、日本に帰国したときだ。でもそのどちらとも違い、ぼくらは今までにないオルガズムを味わった。まさにカギが合ったという感じ。ぼくはそのとき思った。そうか、こうやってカギが穴と合わされば何でも可能なんだ。腰を振りながらぼくは考える。おかしなものだけど、肉欲的になればなるほど頭も冴えてくる。動物園の廊下、ぼくたちは髪をかき乱し、汗をかいていた。


 ヨウコとの交わりが終わりに近づく頃、妙な悲鳴が聞こえた。でもぼくらはもうそれどころじゃなかった。動物たちに混じって自分たちも声をあげていたからだ。おかしな話しだが事実だった。ここで捕まってもいいとさえ思った。後で聞くとヨウコはそんなことさえ考える余裕もなかったって笑っていたけど。ぼくは発射して、ヨウコも頂点に達した。ぼくたちは汗まみれの液体まみれで(汚いけど動物ってそんなもんでしょ?)、あらゆる匂いの中で恍惚感に浸っていた。ぐったりとしながらもようやく服を着たとき、タイキが戻ってきた。「なにしてんだよ、お前ら。」と言いながらも奴は半笑いだった。多分、すべて知っていたのだ。


 でも、そのおかげかどうかはわからないけど、カギはピタリと檻に合致していき、扉が開く。それで動物たちは逃げ出した。空を飛ぶものは飛び、走り出すものは走り出す。猛獣たちだって素直に出ていった。眠ったままのやつらもいたけど、そいつらだって朝には出ていくはずだ。「警備員は?」とぼくが尋ねると、タイキがヘヘヘと笑った。まさかと思ったけど、さっき聞こえてきた悲鳴は奴の仕業だったのだ。木にくくりつけられた警備員は身ぐるみはがされて可愛そうだった。「ごめんね。」とヨウコが日本語で言った。そしてすぐに英語で”Sorry.”(「ごめん。」)と言いなおした。ぼくは満足気に(それが肉体的なものか何だったのか今だにぼくには分からない)その場所をあとにした。




まるでダンスするように


 撃たれたと思って、もう一度胸を見たら、実際に撃たれたのは胸に潜んでいたリスだった。「え?」とおれは口に出す。他の連中もそれを見守っている。ガンマンのマークはもう一度狙いをこちらに定めている。「ど、どうしたんですか。」と横にいるハリオが聞いてくる。こっちだって分からない。いつからリスが自分の胸ポケットに忍び込んだのだ。「まったく、大したもんだな。」と首のないKが言う。おれに言ったのか、リスに言ったのか、それとも白人のマークに言ったのかはわからない。ただテリーだけが、その瞬間を逃さなかった。電光石火の動きでマークに近づくと、その銃を蹴り上げた。そして”You shouldn’t do it, man.”(「そんなことすべきじゃないんだ、オメー。」)と言った。



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