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動物園襲撃  作者: ふしみ士郎
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動物園襲撃…2の10


動物園襲撃…2の10


 小リスはキッチンの冷蔵庫の上にちょこんとのっていた。「お前。」とぼくが言いかけて手を出すと、奴はぼくの腕から肩に上がった。おい、なんてかわいい奴なんだ。「戻ってきてくれたんだな。」ぼくは思わず泣きそうになっている。そして気づいた、ぼくらのチームに不在だったのは小リスだったんだなと。でもどうやって戻ってきたんだろう。たしかにあの晩、車から公園へと逃げ出していったと思ったのに。まぁ細かいことは置いておこう。突然ぼくは勇気を与えられた。そしてあっという間に、動物たちを救い出すのが可能であるように思えてきた。


 それからぼくは朝食を作った。ハムエッグとご飯に味噌汁、そしてもちろんキムチ。小リスにはハチミツとミルクをあげた。ちょうど出来上がったとき、ユキが起きてきて”Good morning, Susumu. Oh, you cook this?”(「おはようススム。わーこれ作ったの?」)と驚いた。もちろんさ、そんな驚くことじゃないだろ。それよりホラ、この肩にいる小リスに気づいてくれよ。とぼくは、わざと肩を下げてみせる。でもユキは料理に気をとられて、まったく小リスに気づいてくれない。なんだよ、じゃあ気づくまで言わないでおこう。と考えて、朝ごはんを食べ始める。それでも彼女は小リスのことに気がつかない。


 朝食を食べながら、あらかた計画のことを復習してみた。まずは当然のごとく、ぼくたち四人はお客として動物園に入るわけだ。それでタイキがちょっとした騒ぎを持ち上げる(それは奴の得意とするところだ)。それでぼくとヨウコとユキが警備室にいく。もし警備員が残っていれば、ぼくが彼らを引きつける。その間にユキとヨウコがカギをゲットする。カギのある場所はすでにタイキとヨウコが事前に調べていた。警備室のドアの裏にカギの束が掛かっているのだ。警備室の金庫にはお金や集金のキーも眠っているが、今回のぼくらにそれは必要ない。必要なのは動物たちの檻のカギ。それだけだ。


 そしてカギを手に入れたら、一旦退去して夜にまた出向くってわけ。そこまで喋るとユキが箸の手を止めた。あ、ようやくリスの存在に気づいたのかな、と思ったら。”Washroom.”(「お手洗い。」)だって。まったく。ぼくらは朝食を終えると(結局リスのことは話さないまま)、車に乗り込んだ。タイキたちを拾っていくため。すると車が動かない。「あれ?」ぼくが何度キーを回しても車が動かない。たしかにオンボロの車だけど、今までこんな故障は初めてだ。”Run out of gas?”(「ガソリン切れ?」)ってユキは言ったけど、そんなはずはなかった。ぼくは昨日ガソリンを入れたばかりだ。そりゃぼくは部分的記憶喪失になったけど、今はそれなりに回復してきたし昨日のことだって覚えている。いったいどうなってるんだ。


 仕方なくタイキたちに電話しようかと思ったとき、ようやくエンジンがかかった。ぼくはホッとして、ユキにキスをした。そして車をガレージから出して出発する。横にはストリートカーが走っている。オークの木々がぼくらを祝っているようだ。デコボコの道だけど、快適に走りながらぼくは呑気に鼻歌なんて歌っていた。そしてタイキの家に着く直前「あっ!」と声を出した。”What’s happening?”(「どうしたの?」)とユキが言う。いやそれが、小リスがいないんだ。”What? She’s gone a long time ago. Don’t you remember?”(「何?小リスなら大昔にいなくなったじゃない。覚えてないの?」)と彼女はぼくのことを心配する。いや、そうじゃなくて。ぼくは説明しようとしたけど、あきらめた。どちらにしても、今となっては小リスはここにはいないのだ。



そして津波の後に


 新大陸発見から初めてということは、アメリカ合衆国建国以来のビッグ・ゲームってわけだ。おれはほくそえむ。「でもさ、それってどんな意味があるの?」とハリオが冷めたことを言う。いや、だからもしこの戦いに勝てば、おれたちは建国史上に残る大物になれるってわけ。「リンカーンやケネディと並ぶさ。」とおれが言うと、テリーが口笛をピューっと吹く。”Don’t’ you remember Martin Luther King Jr.?”(「キング牧師を忘れてるのか。」)仕方なくおれが付け足すと、今度はマークがギターをかき鳴らす。「わかってるって、チャーリー・パーカーやマイルス・デイビスでもいい。」とおれが言うと、首をテーブルに置いたままのKがつぶやいた。「嵐が終わった。外に出よう。」



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