始まり
「ごめんなさい」
今日は3度目の告白をして、またいつものように振られた。
なぜここまで躍起になっているのか自分でもわからない。
でも好きなものは好きなのだ。何度だって諦めない。
僕は2年間思い続けた人がいる。いや、今も思い続けているが。
彼女は僕の友人だ。最初は部活の後輩として知り合った。うちの学校は校則で部活には強制的に所属させられた。だからそんな校則さえなければこんな感情知らなかったのかもしれない。
初めて会った時には別に何とも思わなかった。吹奏楽をたまたま一緒にやることになった後輩。しかもパートも違うし学年もちがう。ましてや向こうは明るく活発でいかにもスクールカースト上位の女子。オタクの僕が仲良くなる事なんてないんだろう。そんなふうに思っていた。
部活に後輩ができて新たなバンドとして馴染んできた頃、土曜日の一日練の昼休み。弁当を食べ終わり暇を持て余していた僕はいつものように持ってきていたライトノベルに手を伸ばした。
「それって西尾⚫新さんの本ですよね」
彼女が不意に僕へ話しかけてきた。
正直彼女のような人は友人と遊んでばかりで本など読まないと思っていたから僕には話しかけてきたことがとても意外だった。
「君みたいな人でもこういう本読むんだね」
僕は皮肉混じりに言った。
何故こんな言い方をしてしまったのか僕にも分からない。でも不思議と僕の口からはそんな言葉が出てきてしまった。
「先輩、さすがにそれは失礼じゃないですか?」
案の定彼女のお気に召さなかったようだ。
ここはなにか上手く返さなければ彼女の取り巻き含め周りからの僕への印象が悪くなってしまう。しかしなんと返すべきか、上手く言葉が出てこない。
「先輩?ずっと俯いてますけどどうしたんですか?もしかしてちょっと言い方がキツかったですかね、すみません」
なんと彼女に謝らせてしまった。悪いのは僕の方なのに。先輩だからって~~とか裏で言われればたまったもんじゃない。こちらも取り敢えず謝ろう。
「いやいや、こっちこそ話しかけてくれたのに無愛想な返事でごめん。いきなりあんな言い方されれば気
分を悪くしたよね。気をつけるよ」
「そこまで言われるとこっちも居心地悪いですね……あ、話しかけた理由、その本ですよ!先輩このシリーズ好きなんですか?」
彼女は僕にまた話を振ってきた。気まずいと思ったならいつものように取り巻きたちとお喋りしていればいいのに。なぜ今日に限って僕に絡もうとするのだろうか。
しかし話題を振られたからには無視する訳にも行かない。今日は続きを読むのを諦めなければならないだろう
「シリーズというかこの作者さんが好きかな。一応この人の出してる本は全部持ってるし、新刊が出たら買うようにしてる」
「ほんとですか!私もこの作者さん大好きで全部本持ってるんですよ!今まで友達で語れる人いなかったんで助かりますよ〜。ぜひ今度語り合いましょう、それでは!」
彼女はひとしきり話し終わると足早に取り巻きの所へ戻って言った。そろそろ昼休みも終わるため、僕も弁当やラノベを鞄に詰めて片付ける。先生が来る前に練習を初めて置かなければ怒られてしまう。鞄を廊下におき、各自が午後の練習に取り掛かった。