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第五話

あれは中学の入学式の夜だった。


私と仁だけがパパとママに呼ばれて、リビングのソファに座らされた。


「仁、有希、座りなさい。大事な話がある。」




私も仁もそれまでに見たことのない表情のパパとママを見て、只事ではない雰囲気を感じていた。




「これから大切な話をするから、最後まで静かに聞いてくれるか?」


「何か聞きたいことがあったら、パパが話終わった後に、聞いてあげるから。」




「「はい。」」




「仁と有希は同い年だけど、双子じゃないんだ。血は繋がっていない。」


「「・・・・えっ!?」」


「2人だけじゃない、雄一も竜也も聖も淳之介も和也も、そしてパパとママとも。」




「うちの家族は血が繋がっていないんだ。」


「どういうことだよ!?」


「仁!パパが話終わるまで待ってくれる?」


「・・・わかったよ。」




仁は怒ったけど、私は何も考えられなかった・・・。




それからパパは初めから話してくれた。


パパとママは結婚したけれど、子供ができなかったらしい。


そんな時、遠縁で虐待を受けていて保護された子供を引き取らないか?という話があって。


それが、雄ちゃんだったそうだ。


雄ちゃんがあんなに優しいのは心も体も痛みをわかってるから・・・・。


それを初めて知った。


だから、雄ちゃんだけはちょこっとだけパパとママと血が繋がっているらしい。




雄ちゃんを引き取った後、弟が欲しいと言った雄ちゃんのためにたっちゃんを引き取って。


その後、女の子を引き取って終わりにしようとしていたそうだ。




20年前、仁は夏の暑い盛りに、私は雪振る夜に同じ教会の前に捨てられていた。


たまたま同い年は2人しかいなくて、凄く仲が良かったそうだ。


2人とも信じられるものはお互いだけだと、どこかで思っていたのかもしれない。


そんな時、パパとママが見学に来て、私は優しそうな2人を見てすぐに懐いて、引き取られることが決まった。


私が引き取られる前の晩、寝ている私をこっそりパパとママが見にきたそうだ。


その時に手をしっかり繋いで寝ている私と仁を見て、


この2人を離すのは可哀相だと、2人とも引き取ってくれたらしい。




それから、あれよあれよと弟組を引き取って、うちは9人の大家族になった。






「いいか、うちは血は繋がっていなくても、心の絆・家族の絆は強いんだ。


 だから、2人ともこれからも今まで通り生活して欲しい。」


「何か、パパに聞きたいことはある?」




「そんなのいきなり言われたってわかんねーよ。。。」


私は頭の中が真っ白で、何も考えられなかった。




「そうか。


 何かあったら、すぐにパパかママに聞きなさい。」


「今日はもう2人とも寝なさい。」




私たちは部屋へと上がっていった。






ベッドに入っても、パパの言葉がぐるぐると回っていた。


私たちは血が繋がってない。


パパもママも本当の親じゃないし、雄ちゃんもたっちゃんも聖も淳之介も和也も本当の兄弟じゃない。


ただ、仁に少しだけ抱いていた気持ちには説明がついた気がした。


(仁のこと、好きでもいいのかな・・・?)






次の日の朝、そこにはいつもと変わらない景色があって、ほっとした私と仁だった。


そして、いつも通りの生活を続けていった。






それから月日が流れ、高校1年の時。


いつも通り、楽しい夕ご飯の後、進路のことを話していたたっちゃんとパパが言い争いになってしまったのだ。


「俺の行きたいところに行かせてくれよ!」


「父さんは竜也のためを思って言ってるんだ。」


「2人とも落ち着いて!!」




初めて見た、家族同士のけんかに一気にあのパパの話を聞いたときに引き戻された気がして、


私は涙が止まらなかった。。。。




「ひっく・・・ん・・・ひっく・・・・。」


「どうした、有希眠れない?」


「あっ、ごめん。。。」


「・・・一緒に寝てやる?」


「う、うん。」




仁は2段ベッドの下へ下りてきた。




「おじゃましまーす。あったけ〜♪」


仁は何も言わずに頭をぽんぽんしてくれた。


それが嬉しくて、優しくて・・・。


私は仁の胸を借りて泣いていた。




「どう、落ち着いた??」


「うん。ごめんね、ありがとう。」


「泣きたいときは思い切り泣いた方がいいんだよ!」


「じゃあ、これからも泣きたい時は仁の胸貸してくれる?」


「お前さぁ。そんなこと言ったら、もう俺止まんねーじゃん。」




そう言って、仁の唇がおりてきた。




ちゅっ




そのまま、私たちは1晩を共にした。






次の日、目が覚めると仁の姿は無かった。


いつのまにか、自分のふとんに戻っていたみたい。


(どんな顔して会えばいいんだろ?//)


私は1人、ドキドキしていた。




でも、仁は何も無かったかのように「おはよー・・・。」と


いつも通り眠そうな声をして下りてきた。


そして、それからもいつも通りだった。




あれから4年。私と仁は触れ合ったことはない。


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