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第二十五話 戦況

 クラッサに恭順を示したカムラ王国は、クラッサの先兵として隣国ホレスに侵攻を開始した。

 ホレスはスルスリ川の交易の保護を行う国の一つ。

 それをクラッサに抑えられると征四郎たちの旅路の危険性は格段に跳ね上がる。

 故に、防衛戦に参加するべく傭兵としてホレスに向かい、紆余曲折の末に征四郎一行は戦場に赴く事になった。



 征四郎がその武をホレスの王子マイワスに認められたてから数日経った頃、クラッサの聖騎士レドルファはカムラの軍勢と共に進軍するクラッサの兵団に紛れていた。

 素手の男に一度敗れたと言う噂が兵団内に流れてり、レドルファが20代前半の若造と言う事もあり、指揮官を始めとして彼を侮っていた。

 この兵団はカムラ、ホレスの牽制の為の兵団である事から聖騎士の戦い方を知らないと言う事と、彼の連れが黄衣の兵とは言え、若い女である事も侮りの要因となっている。

 が、レドルファは彼等の侮りを訂正する心算はなかった。

 一度戦場に立てば幾らでも黙らせる事が出来ると言う自負があるからだ。

 

 この様に連携もうまく取れるか分からない雰囲気の中、クラッサの兵団は進んだ。

 その状況が一変したのは、一つの報告が齎されてからだ。


「馬鹿を言うな! 高々二百程度の傭兵が相手だと! それでなぜ押せぬ!」


「傭兵と言えども烏合の衆とは言えません! まとまりのない傭兵とは思えぬ練度を示しており、攻めると見たかと思えば、ふらりと退き、騎兵部隊は弓兵の射程に誘い込まれてしまい……」


「騎兵部隊の隊長はどうした!」


「嵐に如き速さで駆ける黒髪の剣士に切られ討ち死を……!」


 カムラ、ホレス攻めの要である西方兵団司令の叱責が伝令に向けられるが、後の祭りだ。

 聖騎士殿の出番はないなどと皮肉を言われながら、司令部で暇を持て余していたレドルファは緩く息を吐き出す。

 そして、緩やかに立ち上がれば伝令に向けて視線を向けた。


「そいつの剣は黒いか? 手足に赤光を灯してはいないか?」


「仰せの通り、剣は黒く、その手足は時折赤く輝いていたと……」


「間違いなく神土少佐ですね。彼は近衛師団に配属前は二百名規模の部隊を率いておりました」


「……これも巡りあわせか。南下したとは聞いていたが……雪辱を果たすとしよう」


「お気持ちはお察ししますが、陛下からの任務の一つを全うされてからの方が宜しいのではないかと」


「――気が進まん。とは言え主命なれば」


 伝令の報告を聞き、黄衣の兵でありながらガスマスクを付けない数少ない一人である蛇宮伊都たみやいとの補足を受ければ、レドルファは底冷えする殺意を滾らせた。

 だが、伊都の諫めの言葉に深いため息をついて、その殺意を一旦は隠す。

 そして、陣に張られて居る天幕を二人で出ていく。


「ど、どちらに?」


「陛下の命だ、ホレスの王族を一人狩ってくる」


 聖騎士の殺意を眼前で受けた司令部にいた者は、誰一人レドルファに異議を申し出る事が出来ず、ただただその背を見送るだけだった。



 ホレスの防衛に勤しむ征四郎は、傭兵達に力を見せ付けて、その指揮権を獲得していた。

 全ての傭兵を自由にする裁量など与えられていないが、二百の兵を扱えるのは心強い。

 二百の傭兵と共に、戦場を駆け、敵を誘導し、ホレス正規軍の射程におびき寄せてクラッサ騎兵部隊を潰し、今はカムラの歩兵部隊と切り結んでいた。


「退がるぞ! 敵弓部隊の射程に入りかけている!」


 傍らのアゾンにそう怒鳴れば、アゾンは頷きオーク特有の大声量で傭兵達に指示を出した。


「先生、距離を開けた後はどうしましょう?」


「――先生は慣れんな。……カムラの騎兵はホレス騎兵とぶつかり合いの最中、か。クラッサの騎兵を潰せたのはでかい。一旦は陣に戻り様子を見よう」


「戻る陣は?」


「一番近くに決まっている」


「……宜しいので? あそこには……」


「戦の最中に好き嫌い言うのは阿呆のやる事だ! ……戻るぞ!」


 征四郎の言葉に恭しく首を垂れるアゾン。

 それを横目で見ながら指示を飛ばして征四郎は他の傭兵と共に戦場の左にある小高い丘へと駆けた。

 そこにホレスの防衛陣の一つが構築されているのだ。

 機動性こそ征四郎の戦いには肝要であれば、彼は退くときも俊敏さを求めるのだ。


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