9話
空と光、ぼっちにとって苦手な体育祭がはじまる。みんなから期待されることなく走る100m走。空の意外な部分が...
『ふぁ〜。朝が来た』
当たり前のことだけど、毎日朝は来る。でも今日の朝は一味違う、一味ちがうと言っても楽しみだからという理由ではない、憂鬱なんです。今日は一年に一回の体育祭だからです。
僕、山部空はぼっちです。ぼっちは行事が好きではない、人に合わせることが苦手だから。
『おはよっ。』
ぼーっと歩いていると、ふと女の子が話しかけて来た。3ヶ月前に家の近所で知り合った同じ学校の同級生の桜井光だ。僕が朝から女の子に話しかけられるなんて入学した時には考えられなかったことだ、しかも光はスタイルもいいし、顔も可愛いと僕が絶対に仲良くなれないタイプの女の子だ。ただ光も僕と同じぼっちだ。
『おはよ〜』
『とうとうこの日が来てしまったね』
やっぱり光は僕に似ている
『来てしまった。いきなり大雨が振ればいいのに』
『さすがに、この天気から大雨が降ったら、神様に供え物持ってお礼言いに行こう。』
『でもわからないよ。今の時代いきなり大雨がふることなんて珍しくないし、何年か前には夏なのにいきなり雹が降ってきたことだってあったんだから。だからもしかしたら、もしかしたらだけど雨がいきなりふるかもしれないよ』
『なに、その雨に対する熱烈な気持ち』
そんなくだらないことを話しながら学校に投稿した。
リア充からしたらこんなことを考える時点で、空気読めてないなこいつってなるんだろうが、僕たちは違う。
基本体育祭みたいなイベントは嫌いだ。
そんなことを考えながらでも時間は過ぎて、開会式が始まった
校長先生や来賓の人の全然面白くない話を聞いて無事に開会式が終わった。
校長先生ってあの話が面白いと思って話しているのかなと校長先生が話すたびに思うのは僕だけだろうか。いや僕だけではないはずだ。多分100人生徒がいたら70人は面白くないって思っているはず。
『空、また後でね。とりあえず頑張ろう』
『うんっ。目立たないように頑張ろう』
今回の体育祭では、僕と光は救護班で一緒になったので、自分の出場する競技以外の時間は基本的に救護のテントにいることになるので、体育祭中に話をできる相手がいることは新鮮だ。ただ体育祭はそれだけではない、自分も出場しなければならない。僕が出る競技は100m走・800m走・棒倒しに出場する。全然乗り気でないけど、
いつも偉そうにしているリア充に負けるのはなんか悔しいので、競技は頑張ろうと思っている。
そして、最初の種目の100m走が始まって僕の出番がやって来た
僕たちは3組目で僕の他にサッカー部・野球部・陸上部・帰宅部とスポーツ界系の生徒がたくさんいる組に入ってしまった。
『位置について、よーい、どんっ』
スターターピストルの音とともに一斉にスタートした。
走り出して、陸上部の時が流石のスタートの速さで少し前に出て、その後ろにサッカー部・野球部・そして僕・その後ろに帰宅部という感じの並びになった。
そこからゴールに近づくにつれて、陸上部・サッカー部・僕・野球部・帰宅部と並び、 僕は必死にサッカー部を抜くために手と足を全力で動かした。先に陸上部その後に僕とサッカー部が同時にゴールした。横を見ながら走るなんて余裕は全くなかった僕は順位をつけている先生を見た。
『1位陸上部 2位僕 3位サッカー部 4位野球部 5位帰宅部 』
という順位になった。サッカー部は猛抗議をしている。野球部はすごく悔しがっているのがわかる。僕みたいな影みたいな存在に負けたことがよっぽど悔しかったんだろう。少しの差で僕の方が先にゴールを切っていたらしい。先生の声が少し聴こえた。
『山部は走り方が前かがみになっているから、お前より頭が先にゴールラインを割っていたんだよ』
なるほど、常日頃ゲームをしたり、漫画を読んでいる日常を送っている僕の猫背がこんなとこで役に立つとは。
サッカー部がこっちを睨みながらテントに帰っていく。
プライドの高お運動部はめんどくさい。
空が走っている時、救護班のテントでは
『ねぇ、あの子って救護班の一年生の子じゃない❓』
『あー。いたね。ちょっと暗い一人でいる子だよね。運動できなさそう」
救護班の上級生が空のことをバカにしていた時、一人だけワクワクしていた子がいた
『早く走らないかな』
救護班のテントで光だけは、友達が走るのをワクワクしながら見ていた
空の出番が来て、ピストルの音と同じタイミングで一斉に走り出した。
『えっ、空すごい』
空が見るからにスポーツ界系の子たちと同レベル以上で張り合っているのを見て、光だけではなく先輩たちも驚きを隠せてなかった。そして空がサッカー部の子と2位を争って最後の20mを走っている。
『空、頑張れ!!!!!!』
気づいたら叫んでいた。結果は同着ゴールで空が2位になっている。
最初バカにしていた先輩達も空のことを褒めているのがわかる
中には少しかっこよく見えたと言っている先輩もいる。
『なんか嫌だな』
この気持ちがなんなのか、この時の光にはわからなかった