6話
『そう言える君は強いよ』
そう言った女の子は微笑みながらちょっと悲しそうに呟いた
『私も君みたいに考えれたらいいのにな。私は私を持っていない。何が本当の私なのか自分でもわからない。君は生きていて楽しい❓』
『楽しいよ。君は❓』
『私は楽しいとは思えない。特に趣味もないし、やりたいこともない、これから生きていても楽しいことあるのかなってふと考える。』
『確かに楽しいことばかりではないけど楽しいこともきっとあるんじゃないのかな。僕は家に帰ってから、ご飯を食べたり、アニメを見たり、漫画を読んだりするときは楽しいよ。学校にいる時間は楽しいとは思わないかな。だから学校で笑うこともないし、友達と遊ぶなんてもっとないし。でも学校だけが人生ではないと思うから、学校以外で楽しいことを探せばいいんじゃないかなって思っている』
『やっぱり君は強いよ。自分で楽しいことを見つけることができて、そこに満足できている。それに比べて私は空っぽだ。こんな私がこれから先生きていても楽しいことなんてあるのかな。いっそのこと死んだほうがらくなんじゃないだだろうか』
『ふざけるなっ!!』
彼女がビクッとしたのがわかった。でも言葉は止まらなかった。
僕の頭の中では昔のことが思い浮かんでいた
僕の母は小学六年生の時に亡くなった。もともとはすごく元気な母で、僕が落ち込んで帰った時もいつも元気付けてくれて、その日は僕が好きな餃子を作ってくれていた。五年生に上がったあたりから母の体調が少しずつ悪くなっていき、病気が判明した。末期の肺がんだった。余命は一年と宣告され、まだ小学生の僕は何でお母さんが一年で死んでしまうのと父に何回も聞いていた。父は聞かれるたびに僕の頭をさすってくれていた。それでも僕は理解ができなくて母に、何で一年で死んじゃうの、嫌だよ。とたくさん泣いたのを覚えいている。そんな僕に母は話してくれた。
『お母さんは生まれた場所に戻るんだよ。』
『生まれた場所ってどこ❓いつでも会えるの❓』
『いつでも会えるさ。空が私のことを思ってくれていたらいつだって会える』
『本当に❓』
『本当だよ』
『お母さんも本当は死にたくないよ。空と海のこともずっと見ていたいし、あなたたちとたくさん遊んで、たくさん笑って、時にはあなたたちのことを怒って、そしてまた笑って。もっともっとあなた達と一緒にいたい。』
母は泣きながら言葉を続けた
『空、これからきついこと、辛いことたくさんあると思う。お母さんは死んでしまうかもしれない。でも忘れないで、死にたくて死ぬ人はいないんだよ。きついこと辛いことがあって死にたくなるぐらい追い込まれていても生きていれば、生きていればきっと何かが変わるから。死にたくて死ぬ人はいる、でも生きたくても生きれない人はもっといる。命は大事にしないといけないんだよ。それが新しい命に繋がって。そうやって命は繋がっていくの。だから、これから空の前で簡単に死を口に出す子がいたらあなたが味方になってあげなさい。あなたなら大丈夫。私とお父さんの自慢の子供だもん。空、あなたは優しい子だから絶対に大丈夫』
その時の僕は母が何を言いたかったのかわからなかったが、今ならわかる、今目の前にいる女の子は全てを見限って、自分の人生も見限ろうとしている。そう考えた時考えるよりも先に言葉がてていた。
『君は死んだ方が楽といった。本当にそうなの❓死んだら全部終わりなんだよ。一人で何が悪いの。一人でも生きていれば何か変わるんじゃないの、一人が嫌になったらここにくればいい。僕はいつも一人だ。でも一人の僕と一人の君が一緒にいれば二人になれる。だから簡単に死ぬなんて言わないでよ。僕は君のことを知らない。君は僕のことを知らない。でも君が、何でそう考えてしまうのかわかってやれる部分もある。だから大丈夫だよ。君のことを少しはわかってやれる男がここにいるということ。全然頼りにならないけど(笑)』
彼女は顔を伏せたまま何も言わなくなってしまった。
背中がビクビクしている。笑われているのかな
あーやっちまった。そりゃそうだよね。今日あったやつにいきなり偉そうにこんなこと言われたら笑いたくもなるよね。恥ずかしさの波が僕を飲み込もうとしていた
『初めてだよ・・・』
『何が❓』
『君みたいに自分の思いをぶつけてくれた子』
そうですよねー。ドン引きですよね。
『ごめん・・・』
『何で君が謝るの。久しぶりに泣いちゃったじゃん。中学生の時から泣いたことなんてなかったのに。』
目元に溜まった涙が夕陽に照らされて綺麗に輝いていて、微笑みながら彼女は言葉を続けた
『私ね、こうゆうことを言われたかったんだと思う。死にたいなんて言葉にしても死ぬ勇気もない臆病者なの。ただ、私は自分のことを知って欲しかった。一人でも平気だけど平気じゃないときもある。だから私は、多分友達が欲しかったんだと思う。』
じっと女の子が僕を見つめてきた
『えっなに』
『私と友達になってくれない』
最初何を言われているのかわからなかった。自分が友達を作ろうなんて中学生の時から考えないようしてきた。でもこの女の子が言っていて僕も気づけたことがある。人間をやめるって自分の中で言い聞かせて他の人を拒絶して一人で生きていくことを自分の糧にして生きてきたけど、心の何処かでは寂しさもあった。でもそれを押し殺すことで今日までやってこれた。この女の子が言ってくれた友達になってくれないという言葉は僕の中にある分厚い氷を溶かしてくれたような気がした。
『こちらこそよろしくお願いします』
『なんか告白の返事みたいになっているよ』
『あっ違う。ごめん、こうゆうの全然慣れていなくて』
『いいよいいよ君らしい。こちらこそよろしくね』
『そういえば、君の名前は❓』
『私の名前は、桜井光。君の名前は』
『山辺空』
『空だね。私のことは光って呼んで。よろしくね空』
『うん。よろしくね光』
いきなり名前ってハードル高すぎませんか。この日、山部空に初めてのお友達ができました。