5話
「君はいつも一人だね』
そう言った女の子は夕陽に照らされながら微笑んでいた。
『えっと・・・』
ここでもコミュ障を最大限に発揮した僕は、ただでさえ人と話せないのに、増しては異性のこと話すなんて一気に背中と脇に汗をかきながら頭をフル回転させて言葉を探した。
『君は誰?』
『やっぱり私のこと知らないか〜』
『うんっ。ごめん。いつも一人でいるから他の人のこと全然わからないんだ。』
『知ってる。いつも君が学校で一人でいること』
まさか自分のことを知っている子がいたとは、学校の中で空気のような存在の自分が同級生に声をかけられるとは思ってもいなかった。でも少し嬉しかったのは内緒だ。
『私もいつも一人なんだ』
『そうなの❓』
これも驚いた。僕みたいに地味でなんの取り柄もなくいつも笑うこともなく生きている自分とは真逆の印象を勝手に思っていたから。第一印象でも可愛いし、スタイルもいいし、髪の毛もサラサラでとても綺麗。まさに学校の中心にいそうな女の子だった。
『私ね・・・』
女の子は静かに突然は話し始めた。
『私はそんなに性格も暗い方ではなかったし、むしろ明るい方で友達もたくさんじゃなかったけど、それなりに一緒に遊んだりする子はいたの小学生までは。中学2年生になったぐらいだったかな、今時の中学生って恋愛なんて当たり前にするでしょ。付き合う付き合わないで盛り上がったりして。
私はそうゆうの全然興味がなかったの、でも2年生の時にクラスの中心的存在の好きだった子が私のことを好きになって告白してきて、興味がなかった私はもちろんお断りしたの。そしたら嫌がらせが始まった。
最初は簡単な嫌がらせしかなかったから私も我慢したし、友だちも味方になってくれていたから流せていた
でもその友達がある日から少しずつ私から距離を取るようになってきて気づいたら私は一人になっていた。
それから3年生になっても状況は変わらず、先生に相談したこともあったけど何も変わらなかった。
だから私は誰かに何かを求めることを諦めた』
静かに女の子は僕に自分がどうゆう経緯で一人になったのかを説明してくれた。なんで自分にこんな話をしてくれたんだろうと思ったけど、聞いてて共感できることもあったし、少し自分に似ているなとも思った。
『高校からまた友たちを作ろうとは考えなかったの』
『私は高校からこっちに引っ越してきたの、だから知り合いも一人もいなかったし、中学生の途中から友達とほとんど話すこともなかったから、どうやって友達を作るのかもわからないまま半年経っちゃった』
確かに僕が同じ立場だったら、絶対に無理なことだ。結局友達っていう線引きはどこからなんだろうといつも思う。少し話したら友達なのか、一緒に一回遊んだら友達なのか、クラスには男女それぞれグループがあるが、その中には一人はそこにいるだけの空気的存在の子が在籍していることも珍しくない。
グループにいる子達からしたら、自分みたいにいつも一人でいる子のことを下に見ているんだろうと思う。
だからその子たちに声を大にして言いたい。お前も一人になってから同じことを言え!!
『でも一人は悪くないよ』
『私も最初は高校こそは友達を作ろうと思っていたけど、友達作りに失敗して、ちょっと落ち込んでいたときに君を見つけたんだ。それから学校で度々君のことが気になって見ていたら、君が他の人と一緒にいるところ見ることなかったし、他の人にいじられても気にすることなく綺麗に流していたし。あ~この人、自分を持っているんだなって思っていんだよ』
僕は素直に嬉しかった。それと同時に急にほめられたことの恥ずかしさが同時に襲い掛かってきた。自分が一人でいることを認めてもらえたような気がしていたから。ただちょっと過大評価されすぎているような気がするけど
『あっ照れた』
『照れてないよ』
女の子はそんな僕を見透かしたように微笑んでいた。
『ありがとう。でもそんなにすごいことは何もしていないよ。ただ、僕も過去にいろんなことがあって誰かに何かを求めることを諦めて、人間らしく笑ったり怒ったり泣いたりすることを自分の中で抑え込んで今の自分がいる。自分が自分を理解して強く生きるために考えて、毎日を過ごしているだけなんだ』
『それができる君が十分強いよ』
女の子は僕にそう言ってくれた。