1話
『卒業おめでとう』
中学の卒業式、最後のホームルームで先生が少し涙ぐみながら話している。
生徒の中では泣いている人もいれば、いつも通り近くの友達と話している人もいるし
いつも通り先生の話を聞き流している人もいる。
卒業式に対する思いは人それぞれだと思う。この3年間を振り返って、泣く人もいれば、いい思い出だったと笑っている人もいる。早く卒業したかった人もいれば、まだ卒業したくなかった人もいる。
生徒一人一人がそれぞれの思いを抱いて卒業式を迎えている。
『卒業しても絶対に会おうね』
『離れてもずっと友達だよ』
『同じ高校同士仲良くしようね』
『高校になっても頑張ろうね』
『高校に入ったら敵同士だけど、負けないから』
ホームルームが終わって校舎を出ようとした時、各々が最後のあいさつをしながら、未来に向かって歩き出そうとしてる。しかし、これはあくまでも片方の目線でしかない。なぜなら僕は卒業式だからと言って、3年間を振り返って泣かなかったし、学校も笑うほど楽しくはなかったし、早く卒業したいと思っていなかったし、早く高校に行きたいとも思ってはいなかった。こんな感情で卒業式を迎えているのは僕だけではないと思っている。3年間と言うのは本当にいろんなことがある。楽しい思い出がいっぱいできた人もいれば、楽しい思い出よりも辛い思い出の方がたくさんできた人もいる。
高校に入っても自分の状況が大きく変わることはないと思っている。同じ中学の子がたくさん高校に上がるからだ。高校で遠くに行くことも考えたが、家族に迷惑はかけたくない。だから高校生活が辛いものになろうとも僕は現実から逃げない。現実を受け入れて戦って行くんだ。
そして僕の高校生活は始まった。
桜の花がまだ咲いてる春だった。