「見えない二人」
僕は僕と警官を見ている。
あれから半月が経った。
警官は一向に電話に出ない僕を心配して、堪らず僕の家に駆けつけて来たのだろう。
そして、腐敗臭に気づいた警官はそのまま家に上がり込み、こうして二階の自室にいる僕を発見したのだ。
「名前は白石ゆきのさん…でしたよ…」
運ばれて行く僕に手を合わせながら警官が呟いた。
名前は偽っていなかった。
あの半年は実在していたのだ。
ゆきのちゃんがあのストーカーの子だったとしても、それはもうどうでもいい。
それに、だいたいの事は想像がついている。
『ほらレイちゃん、早くご飯を食べちゃってね?』
『ん? わかった……』
僕の返事でサキちゃんは嬉しそうに笑った。
今はこの家には僕とサキちゃんしかいない。
タケゾーもミノルじいさんもショウタロウも、きっとサキちゃんに消されてしまったのだろう。
両親が成仏出来なかったのも、こうなる事を心配していたからかも知れない。
全ては僕がサキちゃんにした約束がいけない。
サキちゃんは僕との約束を忘れる事なく、ずっと待っていたのだ。
僕に恋人が出来そうになった時は、相手の子に取り憑いて邪魔をしていたのだろう。
僕が大人になって、キヨシおじさんやアキおばさんと更に親しくなったのも、彼女にとっては面白くなかったのだろう。
どれも僕がもっとサキちゃんの気持ちをわかってあげられていたら、違う結果になっていたかも知れない。
でも、もう遅い。
全てが終わってしまった事だ。
ゆきのちゃんは僕が殺してしまったようなものだ。
ただ、いくら悔やんでも過去の過ちは償えない。
償えないからこそ、僕は同じ過ちを繰り返さない、繰り返させないようにサキちゃんの側にいる事にした。
『うふふ、やっとレイちゃんのお嫁さんになれたね?』
『そうだね。これからはいつも僕がついてるからね?』
たとえ僕が見えなくなったとしても。




