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復讐映画3

3.

「彼女達、アンドロイドがいつからか感情を、心を持っていると発覚した時には、世間では別のニュースが飛び交っていたよ」

「それが……例の隕石ですか?」

「そうだ」

気づけば雨音がだいぶ落ち着いてきているらしかった。シミズさんはキムラさんが淹れてくれたコーヒーを片手に、濡れた身体を暖めていた。テツさんはと周囲を見回すと、縮こまるようにして座ったまま眠っているようだった。

彼女は今ごろ何処にいるのだろう?

背中に不安がのしかかる。

「彼女が心配かい?」

「えぇ……でも、まだ肝心な所を僕は聞いていないです」

「……そうだね、感情を持った彼女が如何にして、処刑用アンドロイドとなったかだ」

顎髭をさすりながら、シミズさんが再びゆっくりと語り始める。

僕は話しの結末を頭のどこかで分かっていた。恐らく時計仕掛けのオレンジを見た時からだろう。それでも、彼女の事と向き合いたかった。


当時の政府機関は焦っていたよ。宇宙移住計画の準備は直ぐに済み、順調に事が運んでいたにも関わらず、現地で殺人事件が発生してしまったんだ。そこで一刻も早く処刑用アンドロイドが必要だったんだ。

事件は1人の技師の確認ミスで、ポッドに入っていた隊員2名が酸欠により死亡してしまうといった内容だった。当初は不慮の事故という事で、犯人の技師を隔離といった処置で解決するつもりだったんだがね……どうやら亡くなった隊員2名はこの技師を虐めていたらしく、技師がその復讐に細工したといった事象が出てきたんだ。

そこからは政府もマスコミも巻き込む大事件さ。技師も悪意を持って細工した事を否定しなかった。悪意を持って2名の人間を殺害したとなれば、それは不慮の事故ではなく、明確な殺人事件だ。

結果としてアンドロイドによる射殺命令が下った。殺人犯であっても人を1人殺すことに変わりはない。それでいてこれからは新しい生活を、新転地で協力し合って過ごすことになる。誰もそんな環境下で悪目立ちや責任を押し付けられたくはないだろう。そこで処刑用アンドロイドの案が挙がった、という訳さ。

でも、私達は処刑用アンドロイドを未だに製作出来ていなかった。

感情を持った彼女達から感情を取り除く。

どんなにリセットしようと、プログラムを組み替えようと、それは決して0にする事が出来ないものだったんだ。

だから私達はある方法を取った。

彼女に生まれた心を殺す方法……時計仕掛けのオレンジの反対。

つまり、アレックスが残酷な映像を見せ続けられて暴力行為に拒否反応を示したように、私達は彼女に平和的で、穏やかで、ハッピーエンドの幸せ溢れる映像ばかりを見せ続けたんだ……。

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