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ある日、能ある狸は尻尾を隠した

貴方いつまで月を見上げて泣くのです?

そういう私の目にも涙

どうやら我々は同じ穴の狢……

いや、仲間ですな

しかし歌いましょう踊りましょう

人に化けきれぬ狸たちよ


我々は元来陽気です

腹鼓 宵闇に響けば

ほら 同胞たちも目を醒ます

夜です 我々の目が輝く時は

人の世に化かされて悔しいなら

今こそ化かし返しましょう


月や森に呼ばれ心躍ります

耳も尻尾も出してしまいましょう

山へ向かって駆けませんか

もはや人の世で

正体を隠す必要などないのです


尻尾を出し 正体を見破られれば

食べられる、ですって?

もうそんな時代じゃあございません

なぜ我々が化け続け

人の世に合わせねばならぬのですか

姿を変え

心まで人の世に吸われたではありませんか


ここまで付き合って差し上げたのだから

もう良しとしましょう

狸の姿でいることの

どこに不都合があるのです

今度は人間が我々に合わせる番です

人間も動物に戻るのです


我らは木の葉舞わせ

人の町に森の風を吹きこみましょう

月と共に歌うのです

人に化けきれぬ狸たちよ


森羅万象の声に

人間たちも手を止め足を止め

聞き惚れるでしょう


どうせこの世は幻想

ふと目を開き振り返れば

もう跡には影も残らぬ

幻に振り落とされぬよう気を付けて


静寂の中に響く 偽りの喧騒に耳塞ぎ

よくまぁここまで化かされたものです

どうせこの世は化かし合い


化かされたままでは終われません

変化の術なら我々の方が得意でしょう


水もなき所で涙の海に溺れ

星明かり掻き消すライトに翻弄され

人の世は恐ろしいものですな


しかし見てください

積極的に我々を化かしにかかる人間など

今やごく一握りではありませんか

惑うあの者たちは 我らの同胞

目を潤ませ月を見上げ

今にも尻尾を出しそうです


あの一族は我々と同じ

自分を人間だと思いこんだ化け狸なのです

人の世に紛れこの時代をやり過ごそうとし

徐々に心も取りこまれ

そのうち狸だということを忘れた一族です


それでも狸の性に誘われて

星明かりを求め 森の声に耳澄ます

さぁ、彼らの元へ駆けていって

今すぐ我々の世界に引き戻しましょう


化かされっぱなしではありましたが

実は人の世の一番重要なシステムは

我々が世を安定させるため

人知れず協力し、維持し

支えてきたものなのです

我々の妖術でね


さぁ、札束を掴み投げ飛ばし

撒き散らしましょう

同胞たちが目醒め

無意識の幻術の効果が切れれば

やがて木の葉に戻ります


我々は元来陽気です

笑顔の方が似合うでしょう

腹鼓 宵闇に響けば

ほら 同胞たちも目を醒ます


さて、そろそろ戻りましょうか

人と妖怪と神々が共演するあの時代へ

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