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DESIRE -Vengeance Werwolf-  作者: 渡鳥 鴎
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Episode:00

初めまして、渡鳥 鴎です。

拙い文章ですが宜しければゆっくり見ていってください。

 何回も繰り返した。

 何度も繰り返した。

 繰り返して繰り返して。

 結果は変わらず失敗。

 何がいけなかったのか。

 何がダメだったのか。

 思考に思考を重ね。

 世界樹の根にて燻ぶる壊れ果てた熾天使は。

 今度こそ成功すると信じて。

 次こそは成功させると決意して。

 此度もまたいつもと同じく。

 刻の歯車を逆向きに回転させた。


 その姿を滑稽だと嘲笑う、1匹の鼠の存在には気づかずに。


 ────こうして、予定調和は再び始まった。



     ◆

     ◇

     ◆



 陰険な街。醜悪の地。掃き溜め場。

 この区画を言葉で表現するのであれば、おそらくそういったものが最も的確だろう。


『AREA:03』


 バベルを7つに分断した区画のうちの1つ。軍事力、領土、経済、どの面から見ても大国と言わざるをえないバベルにおいて、唯一の汚点ともいえる場所だ。

 社会不適合者や人生において取り返しがつかないほどの失敗を犯してしまった人間が集う街。至る場所に死体は転がり、人の争いは日夜途絶えることはない。

 そんな平和とはかけ離れた凄惨な区画で、最近とある異名が広まっていた。


 "紅狼ウェアウルフ"。


 己が欲したものを他者から好きなだけ簒奪する暴力の獣。弱者からあらゆる財を強奪する強欲の化身。己から何かを奪おうとした者を決して許さない復讐の鬼。

 襲われた者は決して彼から逃れる事ができず、彼の欲望が満たされるまでただひたすらに奪われ続ける。

 これは、そんな1人の欲望の狼が描く物語。



     ◆



「俺は、俺から何かを奪おうとするクソ野郎を絶対に許しはしない」


 退廃とした雰囲気に覆われた街。

 そのとある路地裏で、乱闘が起こっていた。

 衝突を起こしたのは、この路地裏をいつも溜まり場としている複数人の男グループと、どこの誰かも分からない赤髪の青年。

 圧倒的な戦力差。

 にも関わらず、この場を制しているのはたった1人の青年の方であった。


「畜生ォッ!」

「バケモノめェッ!」


 歪みに歪んだ鉄パイプを構え、男達は一斉に青年に向かって駆け出し、構えていた得物を次々と振り下ろしていく。

 当たれば間違いなく即死だ。たとえ運が良くても致命傷は免れない。

 だというのに、赤髪の青年は欠片も臆さない。男達の殺気や気迫をまるでそよ風のように受け流している。


「簒奪者は俺だ。略奪者は俺だ。狩人は俺で、獲物はお前ら。……狩られる側の分際で、この俺に牙剥いてんじゃねぇよアホが」


 そこから先は最早乱闘ですらない。────青年による一方的な虐殺だ。

 振り下ろされる数々の鉄パイプを掴んではへし折り、男達を捩じ伏せていく。

 青年から放たれる拳撃や蹴りはとても目で追いきれるものではなく、彼は赤子の手をひねるように次々と男達を薙ぎ倒していった。

 一方的に男達全員を戦闘不能に貶めた青年は、不気味にその口元を歪ませ嘲笑うかのように男達を見下ろす。

 その姿はどこまでも凶悪で残虐。

 獲物を一方的に蹂躙し屠る狼の姿そのものだ。


「カイン」


 そんな彼に背後から近づく人影。

 それは、とてもこの凄惨な場所には似合わない美しい少女だった。

 その髪は雪原よりもなお白く、その肌はどこまでも純白で無機質。


「リリィ」


 カインと呼ばれた赤髪の青年は振り返り、背後から近づく彼女に対してそう声を投げかける。

 リリィと呼ばれた少女は無表情に、まるで音声を再生したラジオのような声音で淡々と言葉を告げる。


「報告//"魔導書"の在り処を見つけました。目標は現在AREA:03中央街道を移動中。また、私たちの他にも目標を狙っている存在が複数います」

「……へぇ、俺たちの他にも"魔導書"を付け狙っている連中がいるのか。おもしれぇじゃねぇか」


 ニヤリと笑みを浮かべた彼の顔は、嗜虐心に満ちた悪魔そのもの。いや、悪魔ですらもう少しマシな表情を浮かべるだろう。

 そんな彼の表情を見たリリィは「またか」と言わんばかりに深いため息を零した。呆れ果てている。


「行こうぜリリィ。狩りの時間だ」

「了解//ですが、また以前のように調子に乗らないでくださいね」

「ハァ? 調子に乗ったことなんて、一度もないんですけどぉ?」

「諦観//カインには何を言っても無駄」

「よく分かってるじゃねぇか」


 そうおどけてみせるカインに対し、リリィは再び深いため息。

 これが彼らのいつものやり取りなのだろう。カインがリリィの態度を気にした様子はない。あくまでも不敵な笑みを崩さず、彼は傍らに止めてあった自身の愛機に跨る。明らかに違法な改造が施された大型の自動二輪車だ。

 カインに続き、側面に取り付けられたサイドカーに、慣れた動作でリリィが座る。

 

「さぁて、ひと暴れといきますかァッ!!」


 狼と少女。2人を乗せたオートバイが、爆音と爆煙を放ちながら夜の街を駆け抜ける。それはまるで、眠らぬ街の喧騒を切り裂く弾丸のよう。彼らは止まることなく獲物をめがけて突き進んで行った。

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