ユリカ 城に行く
馬車の中にはお金持ちイケメンのほかに、もう一人ご令嬢が乗っていらっしゃった。さすがお金持ち超絶イケメン様と同伴されているだけあって・・・・おおっと、キャバクラ用語が出てしまった。もとい・・・超絶イケメン様と同乗されているだけあって、金持ちオーラ半端無い。
そのなかに、まあキャバクラ用のワンピースだからドレスと形容してもいいのだろう服と、10センチヒールを履いたノーメイクの女。プラス、死にかけの演技をしている黒豆芝。
そりゃあ気分悪くなるよね、お嬢さん。そんなに睨まないでくださいな。こちとら無職でホームレスで無一文の女なんですから。背に腹は替えられないんです。とにかく仕事さえいただければ、ささっとおいとましますから、その後はお二人でにゃんにゃんしてくださいな。
イケメン様とぶすくれ嬢のほうをあまり見ないようにしながら、気まずい雰囲気の中をどうやってやり過ごそうと考えていると、イケメン様が口を開いた。
「その犬はどこで手に入れたの?」
いやだから、死んだお母さんが残してくれたっていったじゃん。
「母が子供の頃、川で拾ってきたそうです」
「ふうん。あんまり見ない犬種だね。なんていう種類なの?」
そうだ黒豆芝は日本産だった。この世界では存在しない犬種なのかもしれない。
「これは日本黒犬と言いまして、この国から最遠方にある日本国で産出された希少種の末裔です」
適当なことをもっともらしく言うのは得意分野だ。
「ふうん。で、君はどこから来たのかな?」
いやぁ。これ不審者がられてますよね。でもここで引くわけには行かない。何故かと言うともう少しでお仕事を貰えそうだからだ。私はキャバクラで鍛えた、愛想笑いを満面に貼り付けて言った。
「どこからだと思います?」
答えたくない質問には質問で返す。これもキャバクラで覚えた技だ。できる限り可愛く言うのがコツだ。
イケメン様が反応される前に、ぶすくれ嬢が口を開いた。
「デューク様。このような者と同乗されるなんて・・・信じられませんわ。それにこの犬、さっきからなんだか笑っているような顔をしていて、気味が悪いんですの。早く降りていただいてくださいな」
おい!!レオール!!私のさっきからのやり取りを聞いていて、笑っていやがったな!!私はひそかに指でひげをひっぱってやった。ザマアミロ!レオールの尻尾が一瞬はねた。
イケメン様は思い切り優しい顔をされ、ぶすくれ嬢に笑いかける。
「そんなことを言うのはダメだよ。この黒犬は私の馬車に跳ねられて死にかけているんだ。早く獣医に見せてやりたいと思うのは人として当然ではないかな?」
おーー。人として論でました。これは反論できないよね。反論したら人に非ずってことだものね。やっぱ私このイケメン様、苦手かも・・・。こういう話し方本当に元彼にそっくり。そうそうに仕事を紹介してもらったら、とっととずらかろう。レオール(布団)さえあればどこでも寝られるしね。
そうこうするうちに、お城に着いた。ものすごく豪奢でかつ豪勢な、チェコのプラハ城に似た感じの細長いお城だった。
やった、かなりのお金持ち様をゲットしたらしい。見えないようにガッツポーズをする。やっぱり金持ちはスケールが違うね!でも私はこんな大きなお城で驚いたりはしない。何故ならドィズニーランドには何度も通ったことがあるからね。ふふふ。
訳の分からない自慢をする。