ぶすくれ譲との対決
その後わたしは、小さくなった日本黒鱗鷲と日本虹鳥と日本黒犬をぞろぞろ従えて、デューク王の寝室からおいとました。5大エレメントのうちの3大精霊を間近に見て、未だに呆然としている近衛兵達に、くれぐれも危害を加えないようにデューク王に念をおしておくのも忘れなかった。
この鬼畜野郎、目を離すと何やらかすか分からないから要注意だ。
寝室からの去り際に、超普通、激平凡の、私の心のオアシス、ベン・スミス様と視線を合わせることも忘れなかった。これで私の気持ちは伝わったはずだ。今度サインの練習でもしておこう。ユリカ・スミスと結婚承諾書に書く日が待ち遠しい。るんるん。
今日のお勤めをミルバさん監修の元、ラウラと他の侍女達と迅速に終え、超・侍女になるための修行に励んだ。合間にエリョリーナ王女の婚約破棄作戦も考えなくてはいけない。なんて重労働なんだ。でも敵を知らなければ戦えない。私はこっそりエリョリーナ王女を探る事にした。
エリョリーナ王女付きの侍女の話だと、名前の通り可憐で清楚な王女らしい。いやそれ嘘でしょう。馬車で同乗した時、ぶすくれてた、ぶすくれ嬢だよ!可哀想な瀕死の犬を馬車から放り出せって言ってた女が、可憐で清楚であるわけが無い!!やっぱ真実を知るためには、実際に見てみるしかないのかな?
私が覚悟を決めた時に、当の本人にばったり王城の庭園で会った。あれ?ここって今、庭師が手入れをしている時間帯だから、お城にいらっしゃるお貴族様とかが来るときは事前に連絡があるはずだけど?
私はパニックになった。
本来選ばれた侍女や侍従以外は、お貴族様を見ることも許されないのだ。なので掃除や庭の手入れの時間はあらかじめ決まってあって、お貴族様は通らないようになっている。突発的に通りかかりそうになれば連絡が来て、すぐさま我々が撤退するといった感じだ。デューク王は例外だ。あの男はわざわざ私に会いに来る。迷惑な奴だ。
「貴方がデューク王がわざわざ王城の侍女に推したっていう女なの?」
といって蔑みの目で私を見る。私の傍にいつもいるレオールとシューリとドイールが私を守るかのように間に立つ。
いやいいってば。あんた達の力じゃ、ぶすくれ嬢が細切れところか塵芥になってしまうよ。それだけじゃない王城だって無事で済むか怪しい感じだ。
慌てて目で奴らを牽制しながら、エリョリーナ王女に愛想笑いを浮かべていった。
「はい。私がデューク王がわざわざ王城の侍女に推したっていう女です。なにか?」
こういう女の対処は元彼のお陰でエキスパートになっている。まかせなさい!!感情的になった女のいうことを否定すると良くない。全て肯定するのがコツだ。
ぶすくれ嬢が以前にも増してぶすくれる。・・・しまった何か間違ったか?!
「あなたデューク王とどういう関係なの?」
「私はデューク王がわざわざ王城の侍女に推したっていう関係の女です」
「彼の寝室でも度々会っているそうじゃない・・・」
ぶすくれ嬢の眉間がぴくぴくしてきた。なんか、おかしいな。怒ってる?なんで?
「はい。私はデューク王の寝室で毎朝会ってます」
これは嘘じゃない。殆ど毎日、早朝寝室に突撃してエリョリーナ王女の婚約破棄作戦の進行状況を話している。じゃないと鬼畜ドS王がいつエリョリーナ王女をバ・ラ・シ・テしまうのか気が気でないからだ。しかし大抵いつも全て却下されているので最近頭頂部が常に痛む。
「わたくしが2週間後にデューク王と結婚式をあげることも知っているの?」
「はい。エリョリーナ王女様が2週間後にデューク王と結婚式をあげることも知っています」
そうだよ。だから焦っているんだよ!!あんたこのままだと2週間後にばらばら死体になって、自国に送り返されちゃうから、こうやってその前に婚約破棄させようと躍起になっているんじゃないの!!
なかなか私の本意が伝わらないのがもどかしくなってきたので、もうどうにでもなれと直球で突撃してみた。
「エリョリーナ王女様。結婚を考え直してください。デューク王は対外的には柔和で温和な男に見えるかもしれませんが、その実中身は、鬼畜で、ドSの、悪魔、なんです!!最近では王女のことを只のブレダ王国産の肉塊にしかみていません。どこから斬ろうか悩んでいるだけなんです。なので、なにとぞ、その死体が私のトラウマにならないためにも婚約を破棄してくださいーーーーーー!!!!!」
心からの願いだった。エリョリーナ王女付きのブレダ王国からの騎士が、こいつ刺していいですか?と許可を取るためにぶすくれ嬢を見る。私のペットの日本黒鱗鷲と日本虹鳥と日本黒犬がそれに答えて、身構えた。
緊張が走るが、私の頭の中はエリョリーナ王女が私の意見を汲んでくれたかどうかが気になって一杯になっていた。そこをエリョリーナ王女が、騎士を手で制して答えた。
「わたくし知っていましてよ」
へ・・・?どういうことですか?ぶすくれ嬢・・・。




