ここは何処?
「とにかく落ち着こう・・・落ち着け私・・」
周りを見回すと、そこは雪国・・・じゃなくて森の中だった。うっそうと茂った高い木が辺りを取り囲んで、どこを見回しても真っ暗だった。さっきとは打って変わって、都会の喧騒が森の静寂に変わっている。
時々あちこちからがさっと言う音が聞こえて、びくっとする。どうしよう野犬かも・・・。とにかくこうしちゃいられない武器を探さなきゃ。私は手に握っていたバックをあけて中身を見る。
中にはキャバクラ用のライター。財布。化粧道具。ハンカチ。ちり紙に。名刺。家の鍵。カラリーメイト。ペン。メモ帳。携帯。これしか入っていなかった。
私は家の鍵を指の隙間にはさんで尖ったほうを指から出して、なんとか武器とした。そしてライターで火をおこし、そのへんの木を集めて火をつけた。火は森の奥でサバイバルするには重要な要素だ。これで野犬の心配はないよね。体育座りをしながら火に手をかざす。
これは一体どういうことなのだろうか?私はさっきまで東京にいたはずだ。なのに今は森の中、一体何があったのだろうか?
唯一推測されることは私が橋から落ちて頭でも打って気を失った隙に、誰かがきっと埼玉らへんの森に私を放置した。それ以外に答えはないような気がした。
なんだか状況が分かってき始めたので、ほっと安心した瞬間ふと空を見上げて驚愕した。
「あれ・・?月が3つある・・・?」
空には満面の星空とともに、3つのそれぞれ違う色をした月が浮かんでいた。それらは黄色と青色と赤色の3色だった。血が引いていくのが分かる。自分の心臓の音が、太鼓のように激しく聞こえてきた。
これって・・・この世界は・・・もしかして地球じゃないって事・・・?!
ユーマのしわざで、グレーが私を宇宙に連れてきたって事なの?!!
混乱しすぎて考えがまとまらない。そんな時、一人の少女が私の前にいきなり現れた。その少女は草むらから突然出てきたと思ったら、私に気がついて警戒しはじめた。
「#$%&&%$#$%」
うーん。何を言ってるかさっぱりわからん。でもエイリアンが私と同じような人種でよかった。もし変な両生動物の大きいのとかがいっぱいでてきたら、どうしようと思っていたところだ。
私は身振り手振りで怪しい人物ではないことを示して、少女を火の隣の特等席に座らせた。思いがけずに一瞬触れた少女の体が冷え切っていたので、私は着ていたコートを少女の肩にかけてあげた。キャバクラの仕事帰りなので、少し・・・かなり派手なワンピースを着てはいるが、まだその上にカーデガンを羽織っている。コートくらいなら、この少女に譲ってあげよう。
そうすると少女は少し怯えた感じを残しつつ、ちいさく微笑んだ。
かわいいーーー!!こんな妹欲しかったなーー。
「$#%&%$%%&」
ん?なにいってんの・・・?
「$#%&%$%%&」
少女が自分を指差して、同じ言葉を繰りかえす。もしかして名前かな?そう思った私は、少女の言った言葉を繰り返した。
「$#%&%$%%&」
少女が満面の笑顔になる。おー合ってたみたい。
「ユ・リ・カ」
私も自分の名前をゆっくりと発音して聞かせる。少女の発音はかなりいけてた。でも、この世界の言語が理解できないのは、かなり痛いなぁ。私は今自分のおかれている状況を思うと、かなり落ち込んできた。
その時だった。少女が何かにはじかれたように身を起こし、私の手を取って逃げろと言う感じで何かをしゃべった。
「#$%&%$%&&!!!!」
少女が必死に怯えたように訴える様をみて、私にも緊張が走る。突然、後方からたくさんの人が近づいてくる足音がしてきた。
「逃げよう!!」