誰かと知らないクリスマス
「どうして過ごすのが正解ですか」
並んで歩く少女は正面を見据えたまま、どこか機械的に言った。
「正解?」
「はい。このイベントの楽しみ方の、正解」
「難しいね」
僕の濁した応えに少女は足を止め、振り返る僕と目を合わせた。
化粧っ気のない幼い顔に飾り気のないニット帽と無骨な黒縁の眼鏡。身体を覆う真っ黒なダウンジャケット。そこまではどことなく男っぽさのある恰好で、けれどジャケットの下は極端に短い紺色のスカートに白いニーソックス。
「ではイベントは考慮しなくて結構です」
「そこに重点を置いていない時点で正解はない気もするけど」
足を止めたままの少女に愛想笑いを返すと、一層不思議だというように目を丸くした。
「こうして君と僕が居る時点で、このイベントの恩恵だからね」
「そうですか」
数歩分空いた隙間を埋めるだけ少女に近づき、再び歩き始める。見習うように少女が続く。
すっかり葉を失った細い樹たちに撒きついた電飾が光っていた。
「消えると思いますか?」
「今朝は消えてたね」
歩道脇の光る木を見ながらの呟きに、何の浪漫も見えない応えをした。
少女は興味なかったように正面に向き直った。時々何かを見つめる少女だったが、一度も僕の方を振り向いてはなかった。
「もし消えるとこが見えたら、ロマンチックってやつですか」
やってることと言えば、意味もなくイルミネーションされた並木道を往復しているだけだった。思いついたように言う少女は淡々としたいたけど、先ほどよりどことなく暖かみを感じた。
「光らせることでロマンチックの演出だから、強いて言えば逆ロマンチックかもね」
「丁度いいですね」
「僕らに?」
「ええ」
初めて僕の方を見た少女は笑って見せ、その笑顔を見た瞬間に並木道が暗転した。
「……メリークリスマス」
突然に消えたイルミネーションを見ようと少女から目を逸らすと耳元で囁かれた。
思わず怯む僕が次に聞いたのは軽く駆ける足音で、暗くなった夜道に見たのは不格好に走る誰かだった。




