仮
何かがおかしい、そう思ったのはポーカーゲームの5試合目に入り手札が配られてからだ。
1試合目は全額ベットで勝ったために気付けなかったが
2試合目、3試合目とゲームが進み
進行状況としては
ユウマ コイン6枚
アリス コイン12枚
ルルティア コイン8枚
ミレディ コイン14枚
勝者の報酬が「相手の頼みを一つ聞く」とあまりに抽象的な報酬なため
この試合の勝ち負けはそこまで勝負に熱が入れずにいた。
ましてや、ルルティアが選んだゲームと決めた報酬だ。
どう転んでも自分が悪いようにはならないと考えていた。現にアリスやミレディにも前回のような切迫したような緊張感はなかった。
戦争という最悪の事態を回避し代わりに行われたゲームだというのに
和やかさすら少し感じるこの妙な空気感は午後の柔らかな日差しのせいもあったのかもしれない
だが1番の違和感はそこではなくゲーム結果だ。今日の午前中に行ったポーカーでは圧倒的な強さを持っていたルルティアが現状負けている。
勝負をせずに降りている場面が多く、実際のところルルティアが勝ったのは1戦だけ
それ以降はゲームを降り敗北しているている。
「姫様、体調でも悪いんですか?」
アリスとミレディはカードを口元で伏せ横眼で会話を聞く
「いえ、今日も絶好調ですよ。夢中になると少し口数が減ってしまうんです!」
先程までカードに穴でも開いてしまうのではないかというくらい険しい表情だったが
話しかけられるとすぐに元通りの優しい表情で微笑むルルティア
トランプの山札は52枚あるが毎ゲームごとに山札から減っている
ドローフェイズの時に引き直しを行い全員が5枚交換を想定した山札になった時、つまり山札が20枚以下になったゲーム後に捨てられたカードは再び集められ52枚となる。
『捨てられたカードを記憶するだけでなくその順番まで姫様おそらく覚えている。
そんな恐ろしいまでの記憶力を持っているというのにどうしてこうも敗北を繰り返すのだろう』
ユウマは疑問だった。
ポーカーとは駆け引き、基本的に手札が弱ければ勝負しなければ、負けてもダメージは少ない。
逆に強い時に勝負に出れれば大金を得る可能性がある。
「他人の心配などしている暇があるのか愚民。アタシの勝利は目前だというのに。」
「初めは随分と気乗りしていなかったのにすっかり楽しんでるんだな」
手札をを扇子のように艶めかしく扇ぐミレディに対して軽口をたたいてみたが彼女は気にする様子もなく足を組む。
「赤の女王様は姫様とほぼ互角の強さだから、有利になってうれしいのですぅ」
「お黙り耳長、お前はこのゲームが終わるまで発言を禁じたはず」
会話に混ざろうとするリーファをミレディはカード越しに睨みを利かせる。
「それと、アタシとルルティアは互角などではない。」
「私が4勝でミレディが3勝でしたかね?」
「たわけ、私が4でお前が3だっ!」
ミレディはルルティアに吠えた。
「そんなことよりさっさと賭てくれるかしら、アリスもルルティアも賭けているわ。降りる選択権もないお前はなけなしのコインをすべて賭けるしかないがな。」
ミレディの不満はこちらにまで飛び火してきた。
ミレディの言う通り降りるという選択肢はない今回のルール上コインの所持数が10枚以下の者は
周りにどう金額が動いてもゲームを降りて勝逃げつことはできない。
「はいはい、全部かけますよ女王様」
ゲームに参加の1枚に賭金5枚を綺麗に重ねてテーブルの中央に出した。
先ほどまで思考を巡らせていたせいで三人の動向を見落としていたが
アリスは4枚
ルルティアは6枚、
ミレディも4枚それぞれかけており
全員の視線はこちらに向けられ出方を伺っていた。
「全額賭けですか?、ユウマ様・・・」
「貴方ってなんていうか、本当に駆け引きってものをわかってないわよね・・・」
不思議なものを見る純粋なルルティアの瞳とゴミを見るような蔑んだアリスの視線が同時に向けられ
一応は本拠地なはずだがなぜか居場所が悪い
「どこにでもいるわ、こういう負けそうになるとやけくそになる男、そう言って負けた時には
いや、俺適当にやってたとかいうタイプ」
ミレディにまで悪態をつかれたが初めてミレディとアリスの意見があったのを見て少しうれしくなった。
『ゲームはこうでなくっちゃな』
「何笑ってるのよ」と再度にらむアリスに首を小さく振って返す
戦局はドローフェイズへと移りそれぞれが引き直しをしていく
ルルティアは1枚
アリスは2枚
ミレディは交換をしなかった。
「今回はなんだか勝てそうな気がします。私は6枚賭けます」
ルルティアは軽い口どりの割には慎重コインをスッと差し出した
オールインの枚数が6枚の為当然、引き続きゲームを行うに6枚は絶対に払わなければならない。
「私も同じく6枚」
アリスはコインを中央に差し出しこちらに視線を送ってきた。
どうやらアリスはこちらの意図に気付いたらしい。
このポーカーが出来レースだということに
当然だ。ポーカーは本来個人が個々に持つ財産で遊ぶゲーム。奪い合いはあっても譲り合いは絶対に存在しないゲームだ。
しかもゲームは5回戦、それも勝利条件は勝ち星の数はではなく、コインの最終枚数
当然だ。ポーカーは本来コインのふり幅に駆け引きが生まれるゲーム
勝った回数では番狂わせどころがロマンもない。
その目的と手段に矛盾が生じている。そこを突いたこの作戦なのである。
真っ先にゲームを降りたのもアリスにゲームに対して本気で勝負する気はないという意思表示だ。
始めはおどろき蔑んできたが毎試合ゲームを始めるための参加費を払うたびに中央より少しルルティア寄りにコインを置くようにしたことで
2試合目の終わりからアリスも気づいた合図でアリスも理解の意を示すように中央よりルルティア寄りにコインを置き始めてくれていた。
『このポーカーは全員で1位の座を誰が取るかって争うゲームじゃない。
全員で1位の座を誰にするか決めるゲームだ』
そしてその座は自分でもアリスでもなくルルティアでなくてはならない。
このゲームの勝利報酬である「何か一つ聞くという」曖昧な報酬に価値を見出せるのは
この報酬を決めたルルティア本人なのだから。
必ず彼女の求める何かがあるはずだ。
「ユウマ、あなたはオールインしてるからそのまま続行になるけど交換はどうするの?」
アリスが確認のため、目配りしてくれた
「交換するよ。5枚」
「え!?」
「ユ、ユウマ様?」
先程まで心配していてくれていた。アリスの疑問はともかくルルティアの目まで不思議な生物でも見ているかのようなまなざしを向けられている。
「貴方、手札に自信があったんじゃないの?。仮に虚勢でオールインしたのなら
見え透いた嘘に誰もひっかからないわよ!」
「いいんだよ」
「いや、俺はこのゲーム降りる。フォールドだ」
手元のカードを伏せたままテーブルに置いた。
フォールド:ゲームを降りて敗北を宣言するアクションである。
先ほどまでカードを扇のようにし顔の下半分隠していたミレディの表情も目と眉だけでわかる。
「あんたねぇ次から次へと・・・」
アリスの不満は爆発寸前だ。
「いや、これでいい」
「こんなバカに負けたと思うと心底むかっ腹がたつわね。それともまたふざけたやり方で私をおとろかせてくれるのかしら?」
ミレディは怒りを超えてあきれている様子だった
「びっくりをご所望で?それならこんなのはどうです?」
フォールド宣言で伏せた5枚のカードをテーブルの上で表で公開した
【♣4・♣K・♥K・♦6・♦7】
「わ、ワンペアですぅ。たまたま揃ったワンペア・・・」
「もう少しいい役ができると思ったんだけどな」
両腕を組んでため息をついて見せたがそのため息ごと吸い込んでしまうのでないかというほど
ミレディは大きく生きを吸うと
「貴様はどこまでふざければ気が済む!!。ポーカーというゲームであっても勝負は勝負!
貴様がしているのはポーカーにおけるマナー違反だッ!」
「そうだ、立派なマナー違反だ!。だがマナーであってタブ―じゃない。
ゲーム上問題はない。その証拠にこの空間はまだ続いている」
この世界はゲームが開始された時点で違和感が尾を引く異色の空間が形成される。
ゲームが、ゲームで使うトランプがまだ存在しているということは反則とは判定されていない。
「ッ!!!・・・・フンッ。まあいいお前の敗北は決した。これ以上この先の駆け引きにお前は参加できぬ。」
下唇を強くかみしめ引きつった口元からは猛火が噴き出しそうではあったが
一瞬で鎮火し。その瞳は炎の揺らめきから美しい煌めきに変わった。
「さて、最後のゲームだ。最後くらい私も本気を出そう。」
まるく収めただと・・・命のやり取りもその殺意も全部なかったことにしたのか
「勘違いするな。アタシはな、ゲームが好きなわけでも勝負が好きなわけでもなければ戦争が好きなわけでもない
勝つのが好きなんだ。勝利こそが全て、
ここまで読んでくださってる方々本当にありがとうございます。
誤字とか、改行抜けでいろいろ読みずらいのによんでもらえちるのは感謝の極みです(はやくなおせ)
これからしっかりアリスの話を進めていきたいと思っていますので
ブックマーク等応援宜しくお願い致します!!




