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無人駅〜語り継がれた記憶〜  作者: 田舎の乗り鉄
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第2回 出会い(前編)

日曜日。遥は1週間ぶりの貴重な休日を利用してあの無人駅にやって来た。勿論、この駅に降りたのは初めてだ。2両編成の短い列車は暗いトンネルの中へと消えていった。


するとその駅はとても静かになった。聞こえてくるのは崖下を流れる清流の音と川下の遥の街から吹いてくる潮風の音と、揺れる木々の音だけ……

「きれい……」

思わず声が漏れた。これ程居心地の良い場所があっただろうか。


遥は誰もいないホームで大きく背伸びした。誰にも話せないでいたモヤモヤした何かが緑の木々に吸い込まれて行くようだった。するとその時、海側からの風がどうっと強く吹きつけた。その時、

くらっ……

突然めまいを起こしたかのように、彼女は何が何だか分からぬままその場に倒れてしまった。無論、こんな山奥の無人駅では遥を見ていた人など居ない。


それから何分経っただろう。見当もつかないが、何故か自分は無人駅の小さな待合室のベンチに寝かされており、体には端の擦り切れた布が掛けられていた事は理解できた。しかし誰が? 誰かがこの駅に来て遥を見つけたというのか? 全くわからない。


ふと立ち上がり待合室の外に出てみると、もう山の向こうに夕日が沈み、駅の周りは真っ暗。街灯一本、建物一件さえも見当たらないのだからそれはそのはずだ。待合室やホームにある小さく、レトロなランプは点いているので駅には電気が通っているようだった。

遥もそう思い辺りを見回すも何も……

「えっ⁉︎」

何の灯りかは分からないが、小さなオレンジの光が揺れながら動いている。近くに車が通れると思える道もなければ人が住んでいそうな集落が近くにある訳でもない。

(あれは何?)

その光を見ながら色々考えるうちに遥は恐ろしく感じ始めた。それは、川も流れる崖下へ降りる小さな路伝いにこちらに近づいている気がした。恐ろしくなった彼女は、急いで待合室に入った。 動物が噛んだりしたのか、ボロボロになった分厚い本を開いた。「JR時刻表」

もう結構遅い。帰りの列車は__

遥は必死でページをめくった。


彼女自身とても混乱しており、もう訳がわからなかった。何故倒れてしまったのか? 誰が待合室に運んだのか? 一体どうしてこうなったのか、整理がついていなかった。


やっとのことで見つけた次の列車はあと1時間後。それまでの間に何が起こるのか、遥は知る由もなかった。

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