表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

幼馴染と僕

夏と怪談は得てしてお互いを尊重し合うものだ。


そんな持論を携えながら、学校内で五本の指に入るほどの美人でありながら、学校一の奇人と呼ばれているミステリー研究部の部長、野島 みゆき。

そんな彼女に付き添いながら夜の校舎を徘徊する平部員である僕こと黒澤 優一。


部長である野島みゆきが、夏休みの部活提出のレポートとして学校の七不思議についてを実体験をもって書こうと提案した。

もちろん、夜の校舎に入るのは先生にダメだと言われたので、夜こっそりと忍び込むことにした。

我ながら頭おかしい。

そもそも、他の部員が集合場所に集まらない。どうやらみんなも部長の提案には乗り気ではないようだ。


もっとも、そんな同級生で幼馴染の彼女の頼みを断らない僕もおかしいのだが。


「ねーねー、ユウくんはどの怪談から体験したいと思う?」


背中に大きなリュックを背負いながら懐中電灯で校舎を照らしていた彼女は振り返って僕に聞いてくる。

もちろん、僕も他の部員と同様乗り気ではない。


「そうだね。とりあえず王道で『トイレの花子さん』とかやってみようよ。案外アレって降霊術に起因するって本で読んだことあるし」


僕はとりあえずも第一の定番的な学校の怪談を持ちかけてみる。

しかし、彼女は口を可愛く膨らませて「ぶー」とする。なんだか可愛い。


「もっと最初から飛ばすやつやろうよ! ユウくんがそんなんが良いなら、あたしはもっと怖いやつや恐ろしいやつのほうが断然良いんだけど!」


夜の校舎を、現在1時過ぎに大声で意見する野島みゆき。僕は耳や肩をビクつかせながら人差し指口元に持っていきでシッーっという。


「警備や巡回の人がいるかもしれないから静かにしろ。あんまり騒ぐなよ」


僕がそう言うと、なおも不機嫌そうに頷いて顔を背ける。ほおを膨らましてまだ不機嫌なご様子だ。


そんな彼女に僕はため息をついてこれからのことを話す。


「なら、どの怪談が良いんだよ?波野高校ってあんまり怪談聞いたことないけど」


僕はそう言って頭の中にある怪談話をまとめてみる。定番しか思い浮かばなかったが。




私立 波野高校。

僕たちが通う高校は結構なマンモス校で、大きい校舎と多勢の生徒が有名である。

しかし、その反面で不良生徒も少なくない。最近は静かになったようなんだけど。

僕が要らぬことを考えながらうーんと唸っていたら、彼女ははっと思い出したように手をポンっと叩く。


「そうだ! ウチには『影遊び』があったじゃない」


僕は彼女が急に言った事とその『影遊び』の二つにギョッと驚いて後ずさった。

まさか、あの学校の怪談を思い出すとは。


『影遊び』とは自分の影が襲いかかるといった怪談で、昔この学校に在学中だった女性と数名が行方不明になったあとに囁かれた怪談だと聞いた。

けれど、僕は興味本位で過去の資料を漁ると、その噂ができたあとに一年に一人は失踪している事に気づいた。

その失踪した生徒は、どれも全員がその怪談の有無を確かめるといった内容のことを前日言っていることから、この怪談は関わってはいけないものだと悟って触れずにいた。


だが、目の前にいる幼馴染はというと。


「自分の影に襲われて死んじゃうとか、なーんかワクワクしない!?」


恐怖の怪談の前で目をキラキラと輝かせていた。もうサンサンとね。


「よせよ、あの怪談はガチでやばいらしいから。つか、本当に消えたらお前レポート書けないじゃん」


「大丈夫! あたしが死んでも副部長の福島くんに任せているから」


「え!? まさかの自分の命よりレポートの方が大事!? でもどうやって『影遊び』のことを伝えるんだよ」


「安心しなされ! ここにボイレコがあるのだよジャジャーン!」


そう言ってスカートのポケットからボイスレコーダーを取り出す。

確かにこれさえあれば後のことはいいのだが、みさきの命が危ないということに変わりはない。

僕は彼女にもう一度言い聞かせる。


「止めておくんだ」


でも彼女は。


「止まるわけないでしょ! あたしはミス研の部長なんだから。それに過去何度も同じことしてるのに何をいまさら言ってんのよ付き添いくん」


そう言って片目を瞑って僕にウィンクを投げつける彼女に、僕はドキッとするのと同時に諦めることにした。


「分かった分かった……。そんで、『影遊び』って具体的に何すればいいんだ?」


僕は質問する。

本当は知っているのだが、彼女がやり方を本当に知っているか確認を取っているだけだ。


「当然知ってるわよ!」


彼女はそう言って最初から準備していたのか、ポケットからロウソクを取り出すと片手で弄り始める。


「まずはお部屋探しから行こうか」


彼女のその発言に僕は気が重くなるのを感じ、再びため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ