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思いつ記。

作者: オキシドール・凪

「嗚呼。もう、やだ」

無意識に、よくある言葉が僕の口から漏れ出す。

「あー、やだやだやだ」

何が、嫌なんだろうか。それは、自分でもよく分からない。

それは、まるで子供が言う『駄々こね』のような口調。

こんな独り言が、最近はよく出る。

自分は、子供に帰りたいのだろうか。いや、違うだろう。

きっと、自分が孤独だから。勿論、見渡せば腐る程、人はいる。むしろ、居すぎなくらいだ。

『一人で居れど、二人で居れど、孤独は孤独に変わりやしない……』こんな歌詞があったな、と、潤けた頭をレコードみたいに廻して再生した。このような歌を、僕は今までに少なくとも二曲は聴いている筈だった。

──気がつくと僕は、禁止していた筈の爪噛みを、行っていた。

それに気がついたのは、爪を噛み終えた後だった。小さな破片のようなモノが、僕の指先にこびり付いている。

歪な形になってしまった親指の爪。少し痛みが走る。

僕はまた、諦めてしまった。

耐えることを。続けることを。自分を大切にすることを。

僕は髪の毛を弄り、くしゃりと束を潰す。

いつか、この髪の毛も一本ずつ抜いていくのではないか。そう思うと、得体の知れない恐怖に駆られる。

「死にたい死にたい死にたい」

また、無意識に言葉が紡がれる。

冗談みたいな言葉だ。僕はまだ、死にたくは無い。そんなの、わかっている。

それでも、思い出してしまう。過去のちょっとした羞恥から、一生消せないトラウマまで。

フェードアウトした頭に遺るのは、ただの『後悔』だけだ。

でも、それもまた、別の様々な感情が綯い交ぜになって、頭のレコードには狂った曲が再生される。

「死にたい」また、この言葉。もう、飽き飽きしている。だけど、止まらない。止められない。

どれもそれも、原因は『孤独』だからだと思う。

いつも独りだから。こんな冗談みたいな言葉を止めてくれる人が、一人も居亡いから。

孤独は、小さな毒。

じわじわと、少しずつ、内部から侵食していく。

人によっては、死にも値してしまう毒。

人によっては、完治する事も可能な毒。

処方箋は他人。自ら縋ることで、何かしらの変化を得られる。必ず効果があると言う訳では無い。

だけど、僕はそんな事は出来ない。やれって言われたって、どうやったらいいのか、わからない。もっともっと酷くなるだけだ。

そんな僕は、処方箋が差し出されるのを待つしかない。


「嗚呼。もう、やだ」

僕は、今日も独り言を呟いて、小毒に蝕まれながら、孤独を得ている。


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