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4.リフレイン

お気に入りにしてくださった方…


更新が遅くなってすみません…m(_ _)m


勉強が忙しくなり、これからはなかなか更新できそうにありません…


それでも余裕がある時に更新するので、広い心で待っていてください。

…ふぅ、ようやく一息つける。


私は小型飛竜ワイバーンから降りると、大きく伸びをした。

王宮を抜け出してからずっと飛び続けたから、いくら戦で慣れているといってもそろそろお尻が痛くなる。まぁこのワイバーンはずいぶん優秀なのか、思ったより早くここに着いたから良かったけど。


ワイバーンが飛び去ると、周囲からの圧力が一層強くなった。

…どうやら、あのワイバーンは私の為に魔除けの魔力を出していてくれたようだ。無理矢理召喚されたはずなのに、ここまで尽くしてくれるとは。次に逢えたら、今度は向こうのお願いも叶えてあげよう。



気づくと、歩き始めてもう二時間が経っていた。まだ余力があるものの、少し息が切れてくる。五時間くらいは歩けると思っていたが…想像以上に体力の代わりの魔力の減りが早い。この森が来訪者よそものの魔力を奪うという噂はどうやら本当のようだ。

…早く休める場所を見つけないと。

ここならば追われることはないだろう…そう考えていたが、どうやらそれば甘かったようだ。

…さすがは勇者殺しの森と言うべきか…



ーー霊峰アムリターー

それがこの地の名だ。ここは遥か昔…それも神話の頃から存在していたと言われる。元はただの山だったそうだが…長い年月が経ってこの地に竜王が棲むようになってから、森が魔境と変わり始め、今ではもうすっかり名だたる魔境の一つとなってしまった。…訪れし旅人の魔力を奪う魔の森として。

しかし、この地が恐れられる理由は他にもある。

ーー今から五百年程前のこと、この地を一人の勇者が訪れた。彼は多勢の仲間を連れてこの森にやってきた。この森の主と話すために。……けれども彼は帰ってこなかった。一緒にいた多くの仲間達も。

彼らは世界を脅かした魔族を倒した程の実力があった。おそらく、当時最強の力を持っていたことは想像に難くない。なんせ、『不敗の勇者』と呼ばれる程なのだ。

しかし…そんな彼らが敗れたのだ。他の者が敵うはずがない。だから昔の人々はこの森を『勇者殺しの森』と名付け、人の出入りを禁止したのだ。

…誰も勇者達の二の舞にならないように…

そんな訳でここには人が訪れることはほとんど無い。ここに来る者があるとしたら、大馬鹿者か、私のように逃げてきた者だけだ。だから、さすがに皇太子といってもここならば危険すぎるから追うことはできないだろう、そう考えたのだ。


しかし今も私の魔力は削られつつある。あの食えない皇太子に嫁ぐくらいなら、ここで死んだ方がマシだが、私もまだやりたいことはいくらでもある。しかし、肝心の魔力が尽きてしまえば…もう何もできないのだ。


体力と魔力は相反する力だが、どちらも身を守るのに必要な力であることに変わりはない。そして…これが問題なのだが…体力は使い果たしても休めば回復するが、魔力はなかなか回復せず、下手したら一生回復しないまま…という場合もあるのだ。

魔力が尽きた人間は魔獣のいい餌だ。力は弱いし、人の生き血は彼らからするとおいしいらしいし、人によっては神の加護を受けていたりするからだ。人が授かる加護は大抵の場合魔力なのだ。魔力は消えてしまうことがあるが、一度受けた加護の名残はそのまま残る。

基本的に、魔獣は神から厭われる存在だ。そのため、加護を受けた人間を食おうとする…が、加護が強いままでは触れることすらままならない。だから魔力が尽きて弱体化するまで待つのだ。…自分達だけでは決して手に入らない神の加護を得るために。



…やっと圧力がほぼ無い場所を見つけた。ちなみにこの圧力というは周囲の魔獣が放つ邪気だったりする。だから、圧力が無い場所というのは、魔獣が立ち入れないような聖なる場所であることが多い。たまに魔獣も敵わないような極めて高位の存在…例えば大型竜ドラゴン一角獣ユニコーンなど…の棲家である場合もあるのだが、それはまずあり得ないくらい稀だし、もしそうでも大抵彼らは私達人間に友好的だから特に心配はないだろう。



それは走ればすぐに安全地帯に入る程の近さまで来た時だった。

突然周囲の音が消え、そして私を中心として半径十メートルの円を描くように暗い闇が広がった。そして次第に魔獣あいてが姿を現す。

マズイことに、現れたのは、魔獣の中で一、二を争うくらい強力な魔獣である闇狼ヴァルトだったのた。ヴァルトはただ力が強いだけではなく、かなりの知能を持つ。そのため獲物を集団で追い詰めて捕らえ、瀕死の状態で長時間痛めつけるのだ。もし捕まれば、手足を一本ずつもいで食べられたり、元の姿が分からなくなるまでその鋭い爪の餌食オモチャにされたりするのだ。

…正直、今魔獣の中で一番会いたくないヤツだった。…どうして後少しというところでコイツに遭遇するのか。あまりの不運さに今までで一番のピンチなはずなのに乾いた笑いがこみ上げる。


ヴァルトの恐ろしいところはその残虐な性質だけではない。ヤツらはかなりの魔術耐性を持つのだ。だからヴァルトと戦う時は最低でも、高位の魔術師が二人以上いる時に行う。

一人ではヴァルトを倒しきれずに魔力切れになり、そのまま喰われることが多いのだ。

ーーどちらかが魔力切れを起こしても、もう一人が助けが到着するまで持ち堪えることが前提だが。


そのため、今の私に出来ることは、一刻も早く助けを呼ぶことだ。まぁ、ヴァルトにうでの一本、二本持っていかれるだろうが、死ぬことよりはマシである。


私は腰に付けてある笛を取り、一つの歌を奏でた。それは、遠い昔にとある少女がその想い人に贈ったとされる歌だ。


ーー愛してる、だからどうか、無事で帰ってきて。


切ないメロディーと歌詞から、彼女の想いが伝わってくる。苦しいような、それでいて幸せな想い人への想い。娘と想い人は、血の繋がらない親子関係にあり、そのためか彼女は自身の想いを伝えずに想い人を見送ったと言われている。ーー伝えられない想いを歌に込めて。


この歌にはそんな彼女の想いが強く込められている。そのため、奏でた者に強い魔除けの加護をもたらすのだ。

だから旅人は魔獣に囲まれると、大抵この歌を奏でる。そして時間を稼いでから、狼煙をあげて助けを求めるのだ。


しかし、ここはほとんど人が訪れない魔境である。助けを呼んだとしても、人が来るはずがない。だから私は加護を掛けた後、すぐにヴァルトを攻撃することにした。


ーーこのままられるのは『騎士姫』の名が廃る。例え一匹でも道連れにしてやる。


今にも襲いかかりそうなヴァルトの群れに私は魔術を叩き込むーーまずは水系統の魔術を。氷の矢をいくつも飛んでいく。暗い森の中を飛んでいく氷の矢はさながら一筋の銀の光のようだ。


しかし、これくらいではヴァルトには傷一つ付けられない。そんなことは予想済みだ。ーーわざと水を大量に含む脆い氷にしたのだから。


次に、風系統の魔術を使い、周囲から空気を取り除く。ーー要するに真空状態にしたのだ…が、魔獣であるヴァルトには全く影響しない。むしろ単なる人間である私の方が窒息死しそうだが、加護のおかげか特に苦しくなることもない。

…正直、こんなにすごい加護とは思わなかった…そうと知っていたらもっと使っていたのに。


最後に、火系統の魔術で普通・・なら辺り一面を焼け野原にするほどの火力を起こす。まぁここは魔の森だから、そこら辺の雑草すら燃えやしない。しかし、これで私は魔力切れ。もう魔術は使えない。


けれども、炎を起こすと同時に幾つもの爆発・・が起こり、ヴァルト達を焼き殺していった。もちろん、これは偶然ではない。

私が意図的に爆発を引き起こしたのだ。


原理は単純だ。水を高火力で熱すると、突然爆発を起こすことがある。氷なら飛び散ってなおさら大きな威力となる。ーー氷の中に上手く水を閉じ込めることが必要だが。


計画通り、いやそれ以上に上手くいって、予想以上のヴァルトを倒せた。これなら走れば安全地帯に着ける。そう考え、走り出そうとした……が、できなかった。


背後からいきなり斬りつけられたのだ。


鈍い痛みに堪えて振り返ると、そこには巨大なドラゴンがいた。ーー純白の鱗に琥珀のような金の瞳。…このドラゴンは『色無し』なのだ。


大抵のドラゴンは何らかの色を持つ。しかしたまに全く色を持たない、人間で言うところの白色個体アルビノのドラゴンが存在する。それを人は『色無し』と呼ぶ。

『色無し』となるには判っているだけで、二つ理由がある。

一つ目は、そのドラゴンが弱すぎて、色を纏う程の魔力がないこと。これは、まだ幼くあまり成長していないドラゴンにのみ当てはまる。ドラゴンでありさえすれば必ず巨大な魔力を持つので、成長したドラゴンが色を纏えないということはない。…例外を除いて。

二つ目は…これがその例外なのだが…強力なドラゴン、それも数多いるドラゴンの中でも一、二を争うくらい強力なものは、たまに神の加護を受けることがある。神の加護を受けたドラゴンはその証として体から色が抜けるのだ。


目の前にいるドラゴンはどう見ても、成長しきった成竜である。つまり後者の、神の加護を受けたドラゴンなのだ。


一体なぜ攻撃されるのか。全く分からない。穢れたモノを忌み嫌うドラゴンは神から厭われた魔獣を攻撃するはず。仮に人間を攻撃するとしても、強力な闇の魔術をつかう人間だけだ。私は闇の魔術は使えない。

ーーならどうして……


考えがまとまらない。背中から流れる血は止まる様子がない。出血のせいで立つこともままならなくなり、膝から崩れ落ちる。

無防備になった私はこのまま殺されるはずなのに、いつまでたっても攻撃される気配はない。訝しんでドラゴンの方を見ると、今にも目がこぼれ落ちそうなほどに目を見開いて私を見ていた。

あまりにも人間の呆気ない最期に驚いたのか。それとも他の理由が……


そこで私の意識は途切れた。薄れゆく意識の中、私は何か人でないものが痛ましい叫び声をあげるのを聞いた。






















今回はファンタジー要素の多い話になりました。


そんな中で物資の状態変化による体積変化の話も入れてみました!


これからもこんな感じで遊び心を入れていけるようにしたいです(*^_^*)

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