表のプロローグ 銀色の出会い
五月八日、日曜日。雲一つない快晴。買い物帰りの昼下がり。その日、その時、あの交差点で、僕は、運命の出会いを果たした。
それは見事に、完膚なきまでに一目惚れだった。
彼女は、清楚な白いワンピースを着て、頭に大きな白い帽子を被っていた。
その肌は病的なまでに白く、細い手足と相まってそのか弱さがまた僕の心を揺さぶった。
流れるような髪はまるで清廉潔白な聖職者のような神秘性を感じさせる銀色をしていて、今まで見たどんな髪よりも艶やかで美しかった。
あまりの可憐さに僕は鞄をその場に落としてしまった。
彼女が近づいてくる。
路上に立ったまま惚けている僕に気付いたらしく声をかけてきた。
「だいじょうぶ?」
その声はさえずる小鳥のように綺麗だった。
「き、君は、誰?」
「わたし? エリザベス」
いい名前だ。日本人離れした彼女の美貌に違わず、外国人なのだろう。
それだけ目立つはずなのに、僕は彼女を今まで見たことがなかった。どこからきたのだろうか。
「今日この町に引っ越してきたの」
なるほど。
「そろそろ時間だ」
彼女は思い出したように時計を見ると、また歩き始めた。
「あ……」
「じゃあね」
行ってしまった。
彼女が立ち去り、視界から消えた後も、僕はしばらくぼーっとしていた。
家に帰ってからも、その日はずっと彼女のことばかり考えていた。
ああ、それにしても、可愛かったな、エリザベス……ううん、エリちゃん。