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四季への想い

作者: いろは


夏は嫌い

 気持ちの悪い虫たちが姿を見せるから。

 私はその虫たちに、何もできない。

 追い払うことも、遠ざかることも。

 ただ、いなくなるのを待つしかない。

「虫が来たら、僕が追い払うよ」

 それに、強い日差しが照りつけるから。

 私はその日差しに、何もできない。

 逃れることも、遮ることも。

 ただ、じっと立ち尽くすしかない。

「日に当たる姿は、とても輝いて見えるよ?」

 彼がそう言うと、夏も少し好きになる。


秋は嫌い

 日に日に私の姿が枯れていくから。

 私はその状況に、何もできない。

 食い止めることも、水を飲むことも。

 ただ、時に任せて細くなるしかない。

「渇いたら、僕が水を持ってくるよ」

 それに、衣が暗い色に替わるから。

 私はその変化に、何もできない。

 止めることも、衣を鮮やかにすることも。

 ただ、見つめているしかない。

「秋色をまとう姿は、とても素敵だよ?」

 彼がそう言うと、秋も少し好きになる。


冬は嫌い

 凍てつく寒さが私を覆うから。

 私はその寒さに、何もできない。

 寒さを防ぐことも、暖めることも。

 ただ、寒さに耐えるしかない。

「寒い日は、僕が暖めに来るよ」

 それに、遠慮なく雪が私に積もるから。

 私はその雪に、何もできない。

 雪から身を守ることも、雪を払うことも。

 ただ、雪解けを待つしかない。

「雪化粧をした姿は、とても神秘的だよ?」

 彼がそう言うと、冬も少し好きになる。


春は好き

 穏やかな風が私を撫でてくれるから。

 それに、美しい衣をまとうことができるから。

 そうだ、彼にその姿を見てもらおう。

 日々やつれていく彼。

 腕に管をつなげる彼。

 青白く痩けた顔の彼。

 いつも、穏やかな笑みを浮かべる彼。

 そんな彼に、美しい私を見てほしい。

 けれど、彼は来なかった。

 蕾がぷっくりと膨らんだときも。

 花がぱらぱらと咲き始めたときも。

 私が満開の花々に覆われたときも。

 花びらが風にさらわれていくときも。

 彼は、来なかった。



 彼が来ないなら、春なんて大嫌い



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