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超科学エンドマーク  作者: 銀木犀/のるづ
1章:Beginning
2/5

No.2:始まる、崩壊

ーーーあの後、響、咲、恵美、大樹の4人は、バイクに乗ってとある街の中へ走っていた。


響「奴らもここまでは追って来れないか...」

大樹「だいぶしぶとかったねーあの連中...ま、結構な数仕留めたわけだし、ここ暫くはあのギャング集団も盗みやらかす余裕もないんじゃないかな?」

大樹「裏道に入ったし、すぐ先まで行ってしまえばもう到着だ。」

裏道。4人のような仕事を生業とする人やアングラ集団が利用する危険地域とのアクセス通路である。

通路と言っても、街の封鎖された小さな区画を通るだけだが。

すると日中にも関わらず暗い路地に光が差し込み、鉄格子のフェンスがちらりと見えた。

恵美「お、あれじゃね?えーと、...何タウンだっけ」

大樹「スパイアタウンね...依頼人の人が指定した場所はこの街のハズ」

スパイアタウン。響たち4人の暮らす巨大都市地区の西側に位置する街で、鉄道路線の多い商業都市。スパイアの名を冠する通りに街の中央に鎮座している塔は、雲を貫くほどに高く、巨大である。

響「そろそろ降りよう、このバイクであの街に入るのは怪しさ満点すぎる。」

大樹「だね、万が一目をつけられても困るし、歩いていってもそこまで遠くはないからね。降りようか。」

咲「...やぁっと....降りられるん.....ですね....」

咲はもう2、30分はこの調子だったので、響の後ろで溶けていた。

大樹「....そろそろ咲もヤバそうだし、捨てるか。」

恵美「えーーーー?!歩くのヤダーー!!!」

響「駄々をこねるな...嫌なら1人で乗ってけ。お前だけ裏道のフェンスからぶっ飛んでお縄になっても知らんぞ。ただでさえ出入りが危険なとこなんだからな。」

恵美「うぐ...しゃーないかー....あーーー歩きたくないーーー!」

大樹「ほら、行くよ?依頼人を待たせちゃいけないんだから」

恵美「ちぇー...」

渋々恵美は降り、響と大樹はバイクを人目につかない場所におろした。

目の前には、背後のずっと奥にある砂埃の舞う地にはとても不自然に立ち並ぶビル群が、地平線の先まで伸びていた。


検問を通って街中に足を踏み込んだ彼らは、依頼人の待つ「第7番街」の大通りへと足を運んでいた。

忙しなく人々が行き交い、街を包む談笑の数々と仰々しく貼り出された広告の電子看板から流れてくる音が混じりあって響たちの鼓膜を揺らす。

まさに活気に溢れる都会そのものである。

響は今一度依頼人の情報を確認しながら辺りを見回した。

響「紺のスーツに赤黒いハット...やっぱ妙なカッコだな」

咲「人のファッションにあんま文句言わない方がいいですよ...あ、噂をすれば」

彼らは依頼人を見つけると、駆け寄る。

先方も気付いたようで、ハットを深々と被り直し、軽くお辞儀をした。

依頼人「これはこれは...本当にあなた方が少年少女だったとは。依頼した時は半信半疑でしたが、きちんと依頼をこなしていただけたようで、感謝します」

大樹「これ、依頼されたもので間違いないでしょうか?」

そういうと大樹は「L.C.」と刻印がされたアタッシュケースを手渡す。

齢は見たところ20後半~30前半と言ったところか。背の高いその男は、礼儀正しくケースを受け取り、4人に見えぬよう中身を開けると、とても満足そうな表情が見えた。

依頼人「確かに私の依頼したものに違いはありません。実はとても希少で価値の高いものである故、あの連中に盗られて困っていたところです。」

咲「盗まれたものとは聞いていましたが...そんなに貴重な品だったのですね...」

響は首を傾げる。

響「取り合いになるほど貴重って...何かの部品?それとも...原材料か」

咲「こら響さん、プライバシーに関わること聞いちゃいけませんよ!」

依頼人は朗らかに笑うと、

依頼人「はっはっは...いいんですよ。まあ、どちらかと言われれば後者の方でしょうかね。とある製品の製造の際に必要不可欠でして。...あぁ、決して、法に触れるものではございませんよ。...正規のルートであれば、ね。それでは、代金をお支払いさせていただきます」

そう言うと、依頼人は先程より少し大きなケースを彼らに手渡した。

恵美「うぉぉ...っ?!割と重い...!金の重みだぁ...」

大樹が念の為中を少し確認すると、そこには札束が10束ほど入っていた。

依頼人「万一不備がございましたらまたご連絡ください。それでは、私はこの後も用事がありますので、これでお暇とさせていただきます」

そう言ってまた依頼人の男はハットを深々と被り、心なしか早足でその場を去っていった。

響「...なんだったんだ?あの人...妙に急いで」

大樹「裏があるジェントルマン...てな感じだね、しかも見た感じすごく若いし。」

恵美「それにしてもさぁ、あのケースに書いてあった『L.C.』ってなんだったんだろうね?」

咲「気にはなりますけど...まあこんな広い世界ですし、私達もいままで何個かそんな依頼あったでしょう?気にしたところで...」

大樹「無駄...だけどね。まぁ、どうせ考えても仕方ないんだったらちょっと予想してみる?」

依頼も終わり暇となった4人で少しばかり考えてみた。

結果、どこぞの企業組織の名前、ということに落ち着き、せっかくということで少し寄り道をしてから彼らは帰路を辿るのだった。

...


薄暗く、湿った路地の奥。

誰にも気付かれないような場所にある、『立入禁止』の文字がはられた鉄格子のドアの前で、男が携帯電話を片手に誰かと会話をしていた。

依頼人の男「....ええ、ええ。しっかりと取り戻してくれました。やはり、噂通り舌を巻くほどの手際の良さでしたよ。最近の若者は活気に溢れている......勧誘?っはは...できませんよ。まだうら若き少年少女の彼らには荷が重すぎる......ふふ、ええ、まあ......見る限り普通の子ではなさそうですし、またどこかで会うでしょうね。」

そうして男は通話を切ると、ドアの奥へと入っていくのであった。


ーーーーー


恵美「ふぁーーー!!!疲れたびーーーー...」

地下鉄を通り、彼らは住処となるの廃ビルへと足を引きずっていた。

片道40分、都市の外れに位置するこの街は、政府の管轄が完全には行き届いていないからか、整備がされている場所は少なく、治安もそこまで良くない。幸い規模は他の地区に比べればとても小さく、人通りもほぼゼロに近いので隠れ住むにはうってつけである。

大樹「今回の依頼、物品の奪取が優先で少しの武装しか持っていけなかったからちょっと危なかったしね...さあ、帰って休もう。明日は依頼受けてないし、ぐっすり寝られる」

響「...だといいな...明日になって依頼が山のように来るなんてこと、もう何度目かわからん」

咲「まあまあ...今日のところは休めるんですし...」

響も腕を上げ背伸びをすると、空を見上げる。

響(やっぱり引っかかる。あのスーツ野郎の微妙な胡散臭さ...それと足早に去る程の機密な原材料....何か...良くないことに巻き込まれる気がしてくる。...俺の杞憂だと思いたいが...)

...気にするのは明日からにしよう。そう区切りをつけ、いつの間にか3人と離れていた距離を縮めに小走りするのであった。

それから彼らは拠点とする廃ビルに着くやいなや、軽く支度を済ませてそれぞれの寝床で死んだように眠った。

恵美のいびきに若干嫌な顔をしながら響は3人の様子を見ていた。

恵美は妹の布団を引っ剥がし寝床を乗っ取っている。咲はそんなことも知らず姉に布団を吸収されたまま眠っていた。

大樹は静かながらも頭まで布団を被り寝ていた。まるでサナギのようである。

響(...やっぱり落ち着かない...何故こうも気持ち悪い身震いがするんだ...?...どうか全部夢で完結してくれたらいいんだが。)

じきに響も意識が遠のき、辺りは寝息と...いびきひとつに包まれた。

その夜、ピシッ...と、どこかで音がしたことは、誰も気付きはしなかった。


-----



次の朝。

つけっぱなしだったテレビの音で最初に目を開けたのは大樹であった。

朦朧とする頭へかすかに聞こえてくるのは、急いだ様子のニュースの音であった。

大樹(...なんだろう、ニュース?何か話題でもあったんだろうか。)

そう思い眠い目をこすりながら起き上がると、彼は唖然とした。画面の上部には、「緊急事態発生」「都市付近の地域で『崩壊』」と書かれていた。

女性ニュースキャスター『--繰り返します23番区で《崩壊》が発生!近隣住民の方々は直ちに避難を開始してください!!----』

大樹は飛び上がり、勢いよく窓のカーテンを開ける。

するとそこには、あちこちで煙が上がり、その奥で鈍く佇んでいる謎の裂け目が、周囲を大きく歪めている様子が広がっていた。

裂け目は堂々とそびえながら、徐々にそのフィールドを広げていく。

普段人がおらず殺風景で、どこか不気味さを孕んでいたこの街も、見慣れた光景ではなくなっていた。

後ろで響が起きたらしく、バタバタと慌ただしい音が近づいてきた。

響「大樹...!....あれは.....!!」

大樹は真剣な表情で頷き、まだ呑気に寝ている姉妹を起こそうとした。

大樹「恵美、恵美!!!」

恵美「むにゃぁあ...ぐえぇ...」

大樹は必死に恵美を揺らす。その隣で咲が目を覚まし、外を見て固まっていた。

咲「えっ....嘘...でしょ....?!」

大樹「俺達もさっき起きて混乱してる....この辺りに高濃度の歪曲反応なんて報道されてなかったはずなのに...!」

響「とりあえずこいつを起こさなきゃ逃げらんねぇだろ...!おい!!起きろぐうたら女!!」

揺らすも反応がない。まだ夢の中でうつつを抜かしているようだ。渋々響は大樹に目配せをする。

大樹「...本当はそっとしとくけど...緊急事態だからね...!」

そう言うと大樹が物置からハエたたきを取り出した。

響は、大樹からハエたたきを受け取ると、

響「...済まないが我慢しろよっ!!」


バチィイイイイイン!!


と、気持ちの良い音を鳴らした。

恵美「痛ッッッッッッッッッッッッッ?!たぁア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!何してくれてんだ人が気持ちよく寝てるってのにィいいいいいい?!」

響「いいから来い!外がヤバいんだ!」

響は首根っこをつかみ、窓の前に引っ張り出した。

恵美「うぉい朝っぱらから何すんださっきからよォ!!離せぇ!!.............」

すると騒いでいた恵美は黙り、青ざめた表情で恐る恐る振り返った。

恵美「....これ.....超やばくね........?!」

大樹「封鎖される前に逃げよう...とにかく今は逃げないと!」

4人は雑に着替えを済ませると、それぞれの武器を携え、全速力で外に出た。

確認していない依頼料の入ったケースなど彼らの頭にはなく、今はただこの街から抜け出すことで頭がいっぱいであった。

状態の悪い階段で足音が次々にこだまするのも気にとめず、足早に1階へと駆け降りた。

しかし出ようとエントランスから出ようとした瞬間目の前に広がったのは、謎の生命体がゾンビのごとく闊歩するおぞましい光景。そこに人なぞはおらず、ただ虚ろに街を練り歩く化け物だけがそこらかしこにいた。

4人「...!!」

咄嗟に物陰へ隠れ、息を潜める。

咲「いつの間にここまであの化け物が活動できるほど侵食しに来てたんですか...!?」

大樹「それに朝のうちだ...昨日の夜あたりで出たにしても、報道はひとつもなかったってのか...!?」

切羽詰まる状況の中、恵美は銃に弾をこめる。そして徐々にドアの方へと近づいていった。

咲「ちょっと姉さん!!!まさか行く気なの!?」

恵美「行くっきゃないでしょ...!ここで居座ってたってどうせ助けが来る前にお陀仏だし!」

響「第一、1度フィールドが確立しちまえば抜け出すのが難しくなる...さっさと行っても損は無い」

大樹はため息をつくと、小声で3人に呼びかける。

大樹「それじゃあ、お互い背中に気をつけよう...弾も無限じゃあない。無駄撃ちしないよう慎重に....!」

全員で頷く。

響「...行くぞ!!」

4人は一斉に駆け出した。

突然物陰から飛び出した4人に怪物たちは一瞬反応が遅れ、すぐに2、3匹がモロに銃弾を食らった。

弾は歪んだその身体を貫き、そしてボロボロと崩れゆく怪物とともに消え去った。

恵美「っしゃ当ったりィ!!」

響「油断するなよ...!こいつらはまだ雑魚の部類だ...!」

恵美「わかってるって!!」

飛びかかって来る化け物達を躱し、そして胸部に弾を打ち込む。しかし1匹毎でも弾は数発使ってしまい、一撃で仕留められるのは5匹に1匹程度だった。

大樹「くっそ、やっぱり実弾じゃ効かないことは無いけど...硬い!!!」

恵美「どうする?!こっから脱出すんのは結構ムズいけど!!!」

咲「駅の方へ急ぎましょう!あそこのトンネルの非常口を使えば最短で本都に出られます!!ここからなら10時の方向、ちょうど裂け目の真反対です!!」

大樹「ラッキーだな...!こうしちゃいられない、早く行こう!!」

3人「了解!!」

目標は彼らの拠点から少し離れた場所にある地下鉄の駅。

こうして、地獄のような脱出劇が、

今始まったのであった。

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