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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

ちょっとだけ重めの百合

作者: よくヘラ
掲載日:2026/02/22

「それでね、彼ったら私のをさ……こう、ジュルジュルっと音を出してね……舐めてきたの。ビックリしたし……ほらその……初めてされたから本当に凄くて……ヤバかった」

「……ヤバかったかー」

「そ、ヤバかった」

 昼休み。互いの机を向け合い過ごす休み時間。

 箸を片手に私は、友達の惚気話を延々と聞かされていた。

 同人誌とか青年向け漫画とか、そういうサイトで観れるサンプルとかとは違うリアルな体験談。私は未だ未経験だから、実際その話がどれだけ現実的でどれほど盛られているのか、判別も想像も出来ないが、ごく自然と進んでいく彼女の話は前述の通りリアルを感じさせる。

 男と女の交わり。くだらない、つまらない、意味がわからない。正直してみたいとは思うが、それへ向かっての一歩を踏み出す気はまるっきり無い。

 舌を絡ませ唾液を交換、秘部と秘部を結合し物理的に繋がる。それを抽象的に、時折やけに細かく話しながら、彼女は己の性事情を私にぶつけまくる。

 正直、そうされるのは私、嬉しく感じる。だってこんなにプライベートな話を出来てしまうほどに私は彼女に信頼されていると、そう思わせてくれるから。

 それと同時に、当然イラついている。こんなにも信頼を置かれているのに、こんなにも好き好まれているのに、こんなにも仲が良いのに、彼女には私よりも仲が良く、私よりも深く激しく愛し合う相手が居ることも思い知らされるから。

 彼女が女性で、私も女性だからか? 女の子と女の子だから友愛以上恋人未満で満足してしまうのか? 

 イライラする。ムカムカする。私が男ならば彼女の大切な人になれたのだろうか?

 ああ、友情と愛情を同時に手にしたい。最高の友であり、パートナーでいたい。横に並ぶのも、前を進むのも、後を着いていくのも、全て私でありたい。

 私以外の人と仲良くしているのを想像したくない。延々とこうして、私に向かって私だけを見て私だけに自分の話をして欲しい。

 私以外に自らを教えず、私以外に己を知らせず、私以外の人間とは関わってほしくない。

 そう思うのはきっと我儘、誰が見たって我儘、自認できるほどに客観視できてしまうほどにとんでもなくとてつもなく半端なく嫌な我儘。

 でも私が私である限り、この欲求は抱き続ける。我が儘であり続ける限り。

「……なんか怒ってない?」

「んゃ……別に」

 不思議そうな顔で、どこか心配そうな顔で、ほんの少しだけ首を傾げながら彼女は私に問う。

 図星を突かれたが動じず動かず反応せず、平穏を装い平然としたまま私は返事をする。

 よくわかったなと、思わず感心してしまった。私は一切合切顔に出していないはずなのに、雰囲気など纏っていないというのに、私の募ったそれを把握できたものだ。

 友達だからだろうか。仲良しだからなのだろうか。お互い思い合えているから、相思相愛だから、互いを大切に思えているから、いつでも相手の様子を伺っているから、長く一緒に居るからなんとなく察せるから。

 どれだ? どれもだ。私と彼女はやはり、深く深くすごく深いところで繋がっている。

 私には彼女がいないとダメで、彼女には私がいないといけなくて、だから私は彼女と共にあることで生存し、それ故に私は彼女と一緒に居ることで存在意義を得られている。

「ぅう……ちょっと私ばかり話しすぎた? ごめんね……」

「謝らないでよ、怒ってないのに謝られたら私、本当の本当にイラッとするよ?」

「あ……ごめんね」

「……だから謝んなくていいって」

 私の怒りを知っているならば、それを察せているのならば、ハッキリと感じているのならば、ならば彼女は何故わざわざ、私を怒らせるような事を言うのだろうか。

 意地悪だ、あまりにも意地悪だ。小学生の男子が気になる女の子にするような意地悪だ。


──そう言うことか。


「ねぇ……その彼氏とさ、別れた方がいいんじゃない?」

「……へ? え? な、えと……急に何を言い出すの?」

 目を泳がせ、身振り手振り交えて、小さな動きだが全身をあわあわとさせ、焦っているアピールをする彼女。

 可愛い、可愛いな。私のこんな姿が見たくてしたんだよね、貴方は。

 それじゃあお返しをしなきゃじゃん。私だって見たいもの。あなたが慌てる姿、困っている姿、不満げに顔を顰める姿を。

「私が聴いてる限りだけどね……彼、普通に地雷だよ? 自分の性器の大きさを自慢してくる時点で碌でもない……その上、自分が攻めてる時に気持ちいい? 気持ちいい? って聴いてくるんでしょ? 支配欲強すぎ、マンスプキツすぎ。多分このまま付き合ってたらさ……碌なことにならないよ?」

「……待って? なんでそんな急に彼のことを悪く言うの? なんで? やっぱり怒って──」

 俯きながら私に謝ろうとする彼女を、私は、彼女の口を抑え、彼女の謝罪をキャンセルする。

 そして、わざとらしく大きくため息をつき、その後、私はゆっくりと彼女の頭を撫でた。

「私ね……助けてあげようと思ってるんだよ? 貴方を。彼氏がいれば勝ち組、彼氏がいればカースト上位、彼氏と居れば社会適合者、そんなのは全部嘘っぱちだよ? 付き合っている人の有無で適切な人間関係を築けているか否かを判別するだなんて、そんな事をやって許されるのは中学生までだよ……」

「……あの、ごめん。何言ってるのかわからない」

「要するに……今カレと別れなって話かな」

「ごめんなさい……そうする理由がわかんない」

 あわよくば、彼女と彼を別れさせてやろうと思ったが、そう簡単な話ではないらしい。

 互いをわかり合い、とても凄く物凄く仲良しな私が言っても聞かないのだ。ならば、ならばならばならば──

「……ねえ? 彼氏と一緒に居るのって楽しい?」

「え? あ、うん……! 優しいし……楽しいよ?」

「……私と居る時とどっちが楽しい?」

「……え?」

 きょとん、とした顔をする彼女。可愛い、撫でたい、甘やかしたい。

 だけどそれはしない。そうして欲しいと彼女が願うように、そうして欲しいと思った時に私しか出てこないように。

「もしも私と彼氏……どっちかとしか付き合えない、そうなったらさ、どっちを選ぶの?」

「え? え? 付き合うって……うぇええ……」

「……言っておくけど、付き合うって何も恋人関係だけを表してるわけじゃないからね?」

「わ、わかってるよ!? でも……え……」

 悩んでいる。当然だ、彼女はとても優しい女の子だから。どちらだけを肯定することはなく、どちらも否定したくないのだろう。

(……わかってるんだろうな、この子の彼氏も。この子がそう言う子だって……だから付き合えたんだろうな)

 私は小さくため息をついて、物凄く小さく咳払いをした後、ゆっくりと手を伸ばし、彼女の頭を撫でる。

 ふにゃっとした感じで、訳がわからないと言った感じで、小さく首を傾げながら彼女は、素直に私の撫で撫でを受け入れる。

「……意地悪言ってごめんね」

 私は小さく呟く。すると彼女は「私の方こそごめんなさい」と、何も悪いことをしていないのに謝ってきた。

(……ムカつくな、この子の彼氏。この子を独占してるなんて……それにマジな話、正直に言って身体目当てなの丸出しすぎで気色悪い。どうにか二人を別れさせられないかな……)

 はぁ、と。小さくため息をつきながら、私は頭を撫でながら彼女から視線を逸らす。

 最近最悪であろう彼氏なんかと別れて私と付き合えば、ずっとずっと幸せにしてあげるのにな。そう、思いながらわたしはもう一度ため息を──

(……まあ、本質は、私もその男と大して変わらないわけだけど)

──ため息をついた。

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