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転生した元社畜、普通に安全確認してるだけなのに無双扱いされる ~異世界の常識が、どう考えても信用できない件~  作者: 黒木ソウ


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第9話 危険の正体が、思ってたのと違う

 翌日、ギルドは朝から騒がしかった。


「例のダンジョン、閉鎖だって?」

「いや、まだ調査中らしい」

「でも依頼は残ってるぞ」


 掲示板の前で、冒険者たちが口々に言っている。


 嫌な予感がした。


(昨日、あれだけ書いたのに……)


 依頼書を見る。

 確かに、ダンジョン調査の紙はまだ貼られていた。

 ただし、注意書きが一行だけ増えている。


『落盤に注意』


「……そこじゃない」


 そこじゃないんだ。


 リナが、少し慌てた様子で近づいてきた。


「カナメさん、聞きました?」

「たぶん、俺が嫌な顔するやつですよね」

「はい……もう一組、入るみたいで」


 視線の先。

 三人パーティが装備を整えている。


 ベテラン二人に、新人一人。

 昨日の俺より、よほど“普通”の構成だ。


(だから余計に、危ない)


「止められます?」

「……説得はしました」

「結果は?」

「『危険なのは分かってる』って」


 それが一番危ない。


 俺は、ため息をついて歩き出した。


「……様子だけ、見てきます」

「えっ」

「止められなかったら、逃げ道作るので」


 それを“様子見”と言っていいのかは、分からない。


 ダンジョン前。

 昨日より、人が多い。


「お、あんたか」

 声をかけてきたのは、昨日見たベテランの一人だった。

「噂の新人」


 噂、という単語に胃が痛くなる。


「中、入るんですか」

「ああ。危険だって話だろ?」

「……危険です」

「それでも仕事だ」


 理解はできる。

 だからこそ、厄介だ。


「一つだけ」

「?」

「戦闘になったら、深追いしないでください」

「なんでだ?」

「……足元が、敵なので」


 伝わった気はしなかった。


 パーティが中に入るのを確認してから、俺も距離を保って後を追う。


 内部は、昨日よりさらに不安定だった。

 空気が、重い。


(振動が、増えてる……)


 通路の奥で、戦闘音が響いた。


「来たぞ!」

「挟まれるな!」


 魔物の声。

 剣がぶつかる音。


 その瞬間。


 ――ミシッ。


 嫌な音が、天井から走った。


「……っ」


 俺は即座に走り出した。


「下がって!」

「え?」


 叫んだ直後、通路の一部が崩れ落ちる。


「うわっ!」

「足が!」


 幸い、直撃ではない。

 だが、退路が塞がれた。


「くそ、囲まれた!」

「魔物が――」


「戦うな!」


 俺は叫びながら、壁際に投石する。

 狙うのは魔物じゃない。


 天井の支点。


 ――ドン。


 小規模崩落。

 魔物の動きが止まる。


「な、何を……」

「今は、倒す必要ない!」


 俺は素早く状況を見る。

 残った通路。

 耐えられる時間。


「全員、俺の後ろに!」

「指示するな、新人!」

「死にたくなかったら、黙ってください!」


 我ながら、口調が強かった。


 幸い、従ってくれた。


 崩れにくい側の壁沿いを進む。

 一歩ずつ、確認しながら。


「今度は、俺が先に行く」

「……分かった」


 出口が見えた瞬間、再び振動。


「走って!」


 全員が外に転がり出た直後、入口付近が崩れた。


 ……間に合った。


 しばらく、誰も喋れなかった。


「……魔物、倒してないな」

 誰かが言った。


「倒す必要、ありませんでした」

 俺は答える。

「敵は、構造です」


 ベテランの一人が、地面に座り込んだ。


「……そんな発想、なかった」


 ギルドに戻ると、今度は即座に動きがあった。


「ダンジョン、一時封鎖」

「再調査」

「補強か、放棄かを検討」


 判断が、やけに早い。


 俺はリナに小声で聞いた。


「昨日と、反応違いません?」

「……今日、人が死にかけたので」


 なるほど。


 夕方。

 例によって、噂は変質していた。


「新人が、全員を連れ戻したらしい」

「魔物より、地形を見てたとか」

「戦わずに制圧……?」


 違う。

 制圧してない。

 止めただけだ。


 宿に戻り、椅子に座る。


「……危険の正体が、全部ズレてるんだよな」


 この世界は、戦うことばかり見ている。

 だから、足元を見ない。


 そしてたぶん――


(俺は、そこを指摘し続ける役になる)


 それが面倒で、でも避けられない役割だと、

 薄々理解し始めていた。


 ──第9話・完


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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