表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した元社畜、普通に安全確認してるだけなのに無双扱いされる ~異世界の常識が、どう考えても信用できない件~  作者: 黒木ソウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/29

第8話 ダンジョンが危険らしい

 翌朝、俺はギルドの掲示板の前に立っていた。


 理由は単純だ。

 そろそろ、金が減ってきた。


(静かに稼げる仕事……)


 そう思って見渡した掲示板の中央に、やけに目立つ紙が貼られている。


「……ダンジョン調査?」


 赤字。

 注意喚起。

 初心者非推奨。


 嫌な単語が並んでいる。


「最近、被害が増えていて……」


 隣から声をかけてきたのは、リナだった。

 今日は受付ではなく、冒険者装備だ。


「近郊の小規模ダンジョンなんですけど、内部構造が不安定らしくて」

「不安定、というと?」

「昨日まで安全だった通路が、急に崩れたり」

「それ、危険なのは魔物じゃなくて――」


 言いかけて、やめた。


「……仕様ですね」

「し、仕様?」


 リナは首を傾げた。


「とにかく、調査と軽い討伐です」

「人数は?」

「三人一組が基本です」


 視線を感じる。

 周囲の冒険者たちが、さりげなく距離を取っている。


(あ、これ俺、避けられてるな)


 気まずい。


「……俺、一人で行きます」

「えっ」

「その方が、安全なので」


 本音だ。

 集団行動は、失敗条件が増える。


 リナは少し迷ったあと、頷いた。


「分かりました。ただし、無理はしないでください」

「それは、こちらの台詞です」


 ダンジョンは、町から少し離れた丘の麓にあった。

 洞窟型で、入口は崩れかけている。


「……これは」


 一目で分かる。

 設計が甘い。


(荷重計算、してないな……)


 中に入ると、湿った空気。

 松明が等間隔に置かれているが、配置が雑だ。


「光源の影、全部死角になってる……」


 罠を避けながら進む。

 魔物は、出てこない。


 しばらく歩いたところで、行き止まりに出た。


「……?」


 地図では、通路が続いているはずだ。


 足元を見ると、ひび割れ。

 天井も、嫌な感じに歪んでいる。


(これ、魔物がどうこうする前に……)


 考えた瞬間。


 ――ズズッ。


 嫌な音。


「……あ」


 天井の一部が、崩れ落ちてきた。


 俺は、即座に後退。

 落下位置を予測して、壁際に滑り込む。


 土煙。


 数秒後、静寂。


「……間一髪、か」


 いや、間一髪じゃない。

 完全に設計ミスだ。


(魔物いなくても死ねるやつだ、これ)


 崩れた先を見る。

 奥に、別の空間が露出している。


 天然の空洞。

 ……じゃない。


「後付け拡張か」


 誰かが、無理に掘り進めた痕跡。


 その奥で、何かが動いた。


 スライム……ではない。

 少し大きく、動きが鈍い。


(環境適応型……?)


 俺は距離を取り、足場を確認する。


 不用意に踏み込めば、また崩れる。


 石を拾い、投げる。

 天井。

 反応を見る。


 ――小規模崩落。


「やっぱり」


 このダンジョン、戦う場所じゃない。


(戦闘より、退路確保が最優先だ)


 俺は、来た道を戻り始めた。


 途中、魔物が追ってくる。

 だが、無理に倒さない。


 通路の曲がり角で、わざと音を立てる。

 誘導。

 崩れやすい地点へ。


 ――ドン。


 落盤。


 魔物の動きが止まった。


「……はい、隔離完了」


 安全圏に戻り、深く息を吐く。


(これ、調査って言っていいのか……)


 地上に出ると、夕方だった。


 ギルドに戻り、報告書を書く。


「魔物より、構造が危険」

「継続使用は非推奨」

「補強必須」


 受付の職員が、困った顔をする。


「えっと……討伐数は?」

「ゼロです」

「……え?」


 リナが横から覗き込んだ。


「何か、ありました?」

「ありました。ですが、これは――」


 俺は、はっきり言った。


「ダンジョン自体が、敵です」


 その言葉に、周囲がざわついた。


 まただ。

 また、変な方向に行きそうな気配。


「……あのダンジョン、危険なんですか?」

「ええ。使い方を間違えると、人が死にます」


 正直な感想だ。


 その日の夜。


 ギルドでは、こんな噂が流れ始めていた。


「魔物を倒さずに、ダンジョンを制圧したらしい」

「構造を見ただけで、危険を見抜いたとか」

「やっぱり、普通じゃない……」


 俺は知らない。


 宿の部屋で、靴を脱ぎながら思っていた。


「……危険って、別ベクトルで来るんだよな」


 この世界は。


 ──第8話・完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ