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転生した元社畜、普通に安全確認してるだけなのに無双扱いされる ~異世界の常識が、どう考えても信用できない件~  作者: 黒木ソウ


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第3話 冒険者ギルドと、測定不能

 翌朝、俺は町の中央にある建物の前に立っていた。


 看板には、剣と盾が交差した意匠。

 分かりやすい。


「……ここが、冒険者ギルドか」


 昨日の時点で、町の人から何度も勧められていた。

 身分証代わりになる、仕事がある、危険から守られる――らしい。


(まあ、無一文だしな……)


 宿代を考えると、選択肢はない。


 中に入ると、酒場のような空間が広がっていた。

 朝なのに、すでに酒の匂いがする。


「登録希望ですか?」


 カウンター越しに声をかけてきたのは、茶髪の少女だった。

 昨日、魔法の練習をしていた――あの少女。


「あ」


 向こうも俺に気づいて、目を見開く。


「き、昨日の……」

「どうも」


 少し気まずい。


「えっと、私はリナです。冒険者ギルドの受付をしています」

「カナメです。登録、お願いしたくて」


 リナは一瞬だけ迷うような顔をしてから、頷いた。


「では、こちらへ。最初に簡単な測定を行います」

「測定?」

「能力や魔力量の確認です」


 ……嫌な予感がする。


 案内されたのは、ギルド奥の小部屋だった。

 中央に、水晶のような球体が置かれている。


「これに手を触れてください」

「触るだけで?」

「はい」


 説明が短い。

 この世界、やっぱり雑だ。


 言われた通り、水晶に手を置く。


 ……何も起きない。


「あれ?」


 リナが首を傾げる。


「もう一度お願いします」

「はい」


 再度触る。

 沈黙。


 水晶は、うんともすんとも言わない。


「……おかしいですね」


 リナが困ったように笑う。


「測定器が壊れてる?」

「いえ、昨日点検したばかりで……」


 そのとき、水晶が一瞬だけ淡く光った。

 だが、すぐに消える。


「今、光りましたよね?」

「え、ええ……一瞬だけ……」


 リナは慌てて紙に何かを書き始めた。


「魔力量……測定不能」

「不能?」

「はい。規定範囲外です」


 ……範囲外。


(あ、これ面倒なやつだ)


「ちなみに、普通はどれくらいで?」

「初級で数値10〜20くらいですね」

「なるほど」


 参考にならない。


 部屋を出ると、待合スペースの冒険者たちの視線が集まった。

 完全に注目されている。


「なんだ、あいつ」

「新人か?」

「遅いな」


 リナが咳払いをする。


「えー、カナメさんは……仮登録という形になります」

「仮?」

「正式登録には、簡単な実技確認が必要でして」


 ですよね。


「内容は?」

「模擬戦か、簡単な討伐依頼です」

「……討伐で」


 模擬戦は、色々誤解が生まれそうだ。


 掲示板の前で、依頼を選ぶ。

 スライム討伐。

 初心者向け。

 危険度・低。


「これで」

「はい。では、このリナが同行します」

「え?」


 思わず声が出た。


「いえ、規定ですので。仮登録者には必ず案内役が付きます」

「……そうなんですか」


 リナは少し胸を張った。


「私、これでも冒険者ランクはEです」

「それ、最下位では?」

「こ、これから上がります!」


 すみません。


 町の外れ、森の入口。

 じめっとした空気。


「スライムは、この辺りに出ます」

「了解です」


 少し歩くと、ぷるぷるとした半透明の物体が現れた。

 テンプレ通りのスライム。


「では、カナメさん。お願いします」

「はい」


 近づいて、観察する。


(……構造、単純だな)


 核の位置も分かりやすい。

 魔法を使うまでもない。


 拾った石を投げ、角度と力を調整する。

 核に直撃。


 スライムは、霧散した。


「……え?」


 リナが固まっている。


「今の、物理攻撃ですか?」

「ええ。再現性高いので」


 意味が分からない、という顔だ。


 その後も、数体倒した。

 全部同じ手順。

 同じ結果。


「……これで、終わりです」


 リナはしばらく黙ってから、口を開いた。


「カナメさん」

「はい」

「自覚は、ありますか?」

「何の?」


 彼女は真剣な目で言った。


「昨日からずっと、全部おかしいです」


 でしょうね。


 ギルドに戻ると、今度は職員が集まってきた。

 水晶を見て、報告書を見て、俺を見る。


「測定不能……?」

「スライムを石で……?」


 ひそひそ声。


 最終的に、偉そうな人が一言。


「……危険性なし。だが、要観察」


 それ、危険って言ってません?


「カナメさんは、仮登録・自由行動とします」

「監視付き、ですね」

「察しが良い」


 良くない。


 ギルドを出ると、リナが深く頭を下げた。


「ありがとうございました」

「え?」

「……正直、魔法が失敗するのが普通だって、疑ったことなかったので」


 顔を上げて、少しだけ笑う。


「でも、考える余地はあるんですね」

「……あると思います」


 そう答えながら、俺は思った。


(やっぱり、関わると面倒なことになる)


 でも同時に――


(もう、手遅れだな)


 町のあちこちから、俺を見る視線を感じながら、そう確信していた。


 ──第3話・完


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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