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転生した元社畜、普通に安全確認してるだけなのに無双扱いされる ~異世界の常識が、どう考えても信用できない件~  作者: 黒木ソウ


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第22話 授業を見ているだけ

 その日の予定は、授業見学だった。


 見学、と言っても最前列ではない。

 教室の後ろ。

 壁際。


 要するに、「いないもの」として扱われる位置だ。


(助かる……)


 魔法学院の基礎講義室。

 階段状の座席に、学生がずらりと並んでいる。


 年齢はバラバラだが、全員真剣な顔だ。

 真面目なのは、悪くない。


 問題は、その前に立っている教師だった。


「では、詠唱を開始しろ」

「失敗しても構わん」

「才能があれば、自然と成功する」


 嫌な前置きだな、と思った。


 学生たちが、一斉に詠唱を始める。

 魔力が揺れ、空気が少しだけ歪む。


 半分ほどは、失敗した。


 小さな爆ぜ音。

 煙。

 咳き込む学生。


「気にするな」

 教師は、平然と言う。

「才能が足りないだけだ」

「次だ」


(……いや、今の配置と手順の問題だろ)


 内心でツッコミを入れるが、口には出さない。

 今日は見学だ。


 成功した学生だけが、次の工程に進む。


 失敗した学生は、肩を落としながら座る。


(再挑戦、させないんだ……)


 イーサが、隣で小声で言った。


「何か、気づきましたか?」

「いくつか」

「言いませんね」

「今日は、見てるだけなので」


 彼は、静かに頷いた。


 授業は進む。


 教師が言う。


「成功率は、例年通りだ」

「問題はない」


 例年通り、という言葉が、

 なぜか一番怖かった。


 途中、教師が形式的に言う。


「質問はあるか?」


 教室が、静まり返る。


(あ、これ質問しちゃダメな空気だ)


 俺は、視線を落とした。


 すると、前列の学生が、おずおずと手を挙げる。


「……失敗した場合、どこを直せばいいのでしょうか」


 勇気ある質問だ。


 教師は、一瞬だけ言葉に詰まった。


「……努力だ」

「繰り返せ」

「才能があれば、分かる」


 学生は、それ以上聞けなかった。


(回答になってない)


 俺は、ほんの一瞬だけ、

 口を開きかけた。


「……」


 だが、閉じた。


 今、俺が言えば、

 授業が壊れる。


 イーサが、ぼそっと言う。


「今、言いかけましたね」

「三回くらい」

「数えてたんですか」

「仕事なので」


 嫌な仕事だな。


 授業の終盤。

 教師が、まとめに入る。


「よいか」

「魔法は、才能だ」

「理屈で理解しようとするな」


 学生たちは、頷いている。

 疑問を持つより、楽だからだ。


(……それ、事故るやつだ)


 だが、今日は何も起きない。

 小さな失敗で済んでいる。


 授業が終わり、学生が出ていく。


 教室に残ったのは、俺とイーサだけだ。


「どうでした?」

「教育としては……」

「はい」

「安全ではありません」


 即答した。


 イーサは、少しだけ目を細める。


「それでも、言わなかった」

「今日は、役割外なので」

「役割、守りますね」


 褒められているのか、よく分からない。


 廊下を歩きながら、俺は思った。


 この学院は、

 知識を教えている。


 だが――


(“失敗しない理由”は、教えてない)


 だから、事故は起き続ける。

 起きてから、「才能がなかった」で終わる。


 それが、この場所の常識だ。


 俺は、小さく息を吐いた。


「……見てるだけでも、疲れるな」


 イーサが、淡々と答える。


「それが、あなたの仕事です」


 そんな仕事、頼んだ覚えはない。


 ──第22話・完


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