第20話 断っても、次は来る
翌朝、俺はいつも通り目を覚ました。
特別なことは、何もない。
頭痛もないし、世界も壊れていない。
「……平和だな」
昨日、正式に断った。
学院とも、都市とも、距離は保った。
だから今日は、普通に過ごす予定だった。
朝食を取り、掲示板を見る。
配送依頼。
採取依頼。
危険度・低。
(完璧だ)
依頼を一つ剥がそうとした、その時。
「失礼」
背後から、聞き慣れた声。
振り返ると、都市管理局の使いが立っていた。
丁寧だが、逃げ道のない立ち姿。
「……嫌な予感しかしません」
「ご安心ください」
「その言い方が、一番安心できません」
差し出されたのは、一通の書状。
「都市連合からの正式通知です」
「学院とは、別件になります」
別件。
それ、もっと面倒なやつだ。
中を読む。
『近隣都市において、
判断を要する案件が発生した。
貴殿の意見を、一度だけ聞きたい』
一度だけ。
信用ならない言葉ランキング上位だ。
「……これ、拒否できます?」
「形式上は」
「実質は?」
「同行者が、すでに手配されています」
やっぱり。
「なお」
使いは続ける。
「今回は、現場同行ではありません」
「移動中の、意見聴取のみです」
それ、フラグだ。
荷物をまとめながら、ため息をつく。
「断っても、結局こうなるんだな……」
宿の外では、馬車が待っていた。
学院の紋章ではない。
都市連合のものだ。
イーサが、そこにいた。
「……あなたもですか」
「安全確認の延長です」
「延長、長くないですか?」
彼は、否定しなかった。
馬車が動き出す。
都市を離れ、街道へ。
見慣れた風景が、少しずつ遠ざかる。
「今回は」
イーサが言う。
「あなたに、何かをさせるつもりはありません」
「それ、信用していいですか?」
「少なくとも」
「最初は」
最初は、ね。
俺は、外を見る。
戦うつもりはない。
改革するつもりもない。
世界を変える気もない。
ただ、危ないものを減らしたいだけだ。
(それだけなのに……)
馬車は、速度を上げる。
向かう先には、
また別の都市。
別の制度。
別の“常識”。
俺は、小さく肩をすくめた。
「……次は、何も起きないといいんだけどな」
その願いが叶わないことを、
俺はもう、薄々分かっている。
だってこの世界は――
俺が何を選ぶかより先に、
**俺を必要とする理由を、勝手に用意してくるのだから。**
──第20話・完
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