第15話 扱いづらい存在
その日の午後、俺は呼び出された。
場所は、都市管理局の分室。
豪華ではないが、無駄のない部屋だ。
(無駄がない=逃げ道がない)
机を挟んで座っているのは、例の二人に加えて、もう一人。
年配の男。
たぶん、決定権を持つ側だ。
「……まず、感謝を」
男は言った。
「市場での対応、被害は最小限だった」
「たまたまです」
「そういうことにしておこう」
助かる。
「だが」
男は指を組む。
「君は、問題でもある」
ですよね。
「何もしなかった」
「だが、見抜いていた」
「必要最小限だけ、介入した」
並べられると、だいぶ怪しい。
「君は、命令に従う人材ではない」
「はい」
「かといって、無秩序でもない」
「それは、そうありたいです」
男は、小さく笑った。
「つまり」
「扱いづらい」
はっきり言われた。
「命令すれば反発する」
「放置すれば、勝手に止める」
「責任を負わせれば、逃げる」
全部、否定できない。
「君の行動基準は?」
「危険を減らすことです」
「それだけ?」
「それだけです」
沈黙。
「善意の英雄ではないな」
「なりたくないので」
それは即答だった。
男は、椅子にもたれかかる。
「では、結論だ」
「君を、組織に組み込むのはやめる」
「代わりに――」
嫌な間。
「“自由だが、呼べば来る存在”として扱う」
「……便利枠ですか?」
「切り札とも言う」
どっちも嫌だ。
「拒否権は?」
「形式上はある」
「実質は?」
「状況次第だ」
やっぱり。
「ただし」
男は、真剣な目で続けた。
「君に、判断を強要することはしない」
「止めるかどうかは、君が決めろ」
それは、意外だった。
「代わりに」
「止めなかった結果についても」
「我々は、君を責めない」
……本当か?
「責任は、世界が負う」
「君は、ただ“見ているだけ”でいい」
皮肉な信頼だ。
部屋を出ると、調査官の一人が言った。
「おめでとうございます」
「何がです?」
「どこにも属さない、という地位です」
最悪では?
都市の通りを歩きながら、考える。
命令されない。
縛られない。
だが、期待はされる。
(これ、自由か……?)
宿に戻ると、リナから手紙が届いていた。
簡単な近況報告。
『町は、少し静かになりました』
『あなたの噂は、都市でも広がっています』
ですよね。
ベッドに座り、天井を見る。
「……扱いづらい存在、か」
否定する気はない。
むしろ、正確だ。
誰の味方でもない。
誰の敵でもない。
ただ、危ないものを見つけて、
必要なら、止める。
それだけの存在。
(これ以上、評価が進まなければいいんだけどな)
だが、世界はたぶん――
そういう存在を、
一番、放っておかない。
──第15話・完
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