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転生した元社畜、普通に安全確認してるだけなのに無双扱いされる ~異世界の常識が、どう考えても信用できない件~  作者: 黒木ソウ


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第11話 評価が一段階、おかしくなった

 その日の俺は、普通に依頼を受けていた。


 内容は、薬草採取。

 危険度・低。

 静かで、実にいい。


「……こういうのでいいんだよ」


 森の中で、しゃがみ込みながら薬草を摘む。

 誰にも見られていない。

 最高だ。


 ――その頃。


 冒険者ギルドの奥、立ち入り禁止区域では、

 いつもより人数の多い会議が開かれていた。


「……ダンジョンの件、報告は以上だ」


 机を囲む数名の幹部。

 空気は、重い。


「戦闘せずに、完全封鎖」

「被害ゼロ」

「再現不能」


 誰かが、舌打ちした。


「切り札だな」

「いや、危険思想だ」

「どちらにせよ、放置できない」


 意見は、真っ二つだった。


「才能や根性を否定するやり方だぞ」

「既存の流派が崩れる」

「現場は助かっている」


 感情と現実が、噛み合っていない。


「本人の思想は?」

「穏健」

「むしろ、面倒事を嫌っている」

「……それが一番信用できない」


 苦笑が漏れる。


「自覚がない切り札ほど、扱いづらいものはない」


 結論は、すぐには出なかった。


「当面の方針だ」

「自由行動は維持」

「監視は継続」

「外部への情報共有は制限」


 誰かが付け加える。


「ただし」

「次に何かあった場合」

「優先的に、彼を呼ぶ」


 ――決まった。


 本人の知らないところで。


 一方その頃、俺は。


「……ん?」


 摘んだ薬草を見て、首を傾げていた。


(これ、乾燥工程ミスってないか……?)


 依頼主の保管方法が、どう見ても雑だ。

 だが、余計なことは言わない。


(仕事は仕事)


 ギルドに戻ると、空気が微妙に違った。


 視線が集まる。

 距離が、一定以上近づかない。


(避けられてる……?)


 受付のリナが、気まずそうに手を振る。


「お疲れさまです」

「何か、ありました?」

「……いいえ。特には」


 明らかに、ある。


 依頼完了の手続きをしていると、

 背後で、ひそひそ声が聞こえた。


「今日も、普通の依頼だぞ」

「なのに、あの扱い……」

「やっぱり、危険人物だろ」


 俺は、聞こえないふりをした。


 ガルドが、壁際に立っている。

 目が合った。


 少し迷ったあと、彼は歩み寄ってきた。


「……無事、だったか」

「はい。薬草だけなので」

「そうか」


 それだけ言って、去っていった。


 それで十分だった。


 夕方。

 宿に戻ると、見慣れない男が一階に座っていた。


 服装は、冒険者ではない。

 だが、ただ者でもない。


 視線が、合う。


「……カナメ殿」

「はい?」


 嫌な呼ばれ方だ。


「少し、お話を」

「今、疲れてまして」

「短時間で」


 断りづらい。


 席に着くと、男は名乗った。


「私は、都市管理局の者だ」

「……はあ」


 来たな、外部。


「今回のダンジョン封鎖」

「非常に、合理的だった」

「そうですか」


 本音は、「当たり前」だが、言わない。


「あなたの判断力は、危険だ」

「……褒めてます?」

「評価しています」


 やっぱり、嫌な言い方だ。


「今日は、顔合わせだけだ」

「今後、正式な調査が入る」

「拒否権は?」

「……形式上は」


 形式上。


 男は立ち上がった。


「あなたは、まだ選ばれていない」

「ですが」

「選択肢には、なっています」


 それだけ言って、去っていった。


 部屋に戻り、ベッドに座る。


「……評価、進みすぎだろ」


 薬草の匂いが、まだ指に残っている。


 俺は、ただ静かに稼ぎたいだけだ。

 危険を減らしたいだけだ。


 それなのに。


(世界の方が、勝手に位置づけてくる)


 窓の外を見る。

 町は、いつも通りだ。


 でも、確実に。


 俺の立ち位置だけが、一段階――

 おかしな場所に移動していた。


 ──第11話・完


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