表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した元社畜、普通に安全確認してるだけなのに無双扱いされる ~異世界の常識が、どう考えても信用できない件~  作者: 黒木ソウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/28

第1話 異世界、思ったより雑だった

※この物語は、

無双したい主人公の話ではありません。


異世界の常識にツッコミを入れながら、

「危ないことを減らしたい」

それだけを基準に行動する主人公が、

なぜか世界のほうから過剰評価されていくお話です。


・主人公は基本的にやる気がありません

・戦闘より判断を優先します

・シリアスになりすぎないコメディ寄りです


気楽に読んでいただければ幸いです。

 第八十六営業日連続残業の帰り道で、俺はトラックに轢かれた。


 ──らしい。


 というのも、痛みとか恐怖とかは特になく、気づいたら真っ白な空間に立っていたからだ。


「えーっと、聞こえてる? あ、よかった」


 正面に、光っている人型がふわふわ浮いている。

 天使とか神様とか、そういう分類の存在だと思う。たぶん。


「えー、では説明しますね。あなたは不幸な事故で亡くなりました」

「不幸っていうか、まあ、はい」

「そこで! お詫びに異世界転生をプレゼントします!」


 軽い。

 テンションが福引の当選発表くらい軽い。


「え、ちょっと待って。異世界って、説明それだけですか?」

「大丈夫大丈夫。行けば分かります」

「いやそれ一番信用できないやつ……」


 抗議する間もなく、視界がひっくり返った。


 ──次に目を開けたとき、俺は草原に倒れていた。


 空は青く、空気は澄んでいて、身体は妙に軽い。

 どうやら本当に異世界らしい。


「……まあ、生きてるだけマシか」


 立ち上がって周囲を見渡すと、石造りの街道と、小さな町が見えた。

 ファンタジーのテンプレみたいな景色だ。


「とりあえず、人がいるところ行くか」


 歩いて町に入ると、剣を腰に下げた人や、ローブ姿の人が普通にいる。

 ああ、うん。完全に異世界だ。


 しばらく歩いていると、広場の端で人だかりができていた。


「また失敗か……」

「魔力が足りないんだよ」

「才能ないんじゃないか?」


 覗いてみると、若い男が杖を構えて、何かを唱えている。

 目の前には小さな石。


「──火よ!」


 杖の先が光る。

 ……が、何も起きない。

 石はそのままだ。


「……失敗だな」

「やり直しだ」


 周囲からため息。


 俺は首を傾げた。


「え、今ので終わり?」


 つい、声が出た。


 全員がこっちを見る。


「何か?」

「いや、その……魔法、なんですよね?」

「当たり前だろ」

「えっと……」


 俺は少し考えてから言った。


「その詠唱、毎回同じ結果になります?」

「は?」

「条件変えてないですよね。距離も、対象も、魔力量も」


 男が眉をひそめる。


「魔法なんて、気合と才能だろ」

「……再現性ないの、怖くないですか?」


 ざわ、と空気が揺れた。


 俺は近くに落ちていた小石を拾う。


「ちょっといいです?」


 杖はない。

 でも、さっき見た感じ、やってることは単純だった。


 集中して、イメージして、力を流す。

 要はエネルギーの出力制御だ。


「……」


 石に向かって、必要最低限だけ熱を与えるイメージ。


 ──パチッ。


 小さな火花が散り、石が赤く熱される。


 ……成功。


 周囲が、静まり返った。


「え?」

「いま……?」

「杖なしで……?」


 俺は慌てて手を振る。


「いやいや、今のはたまたまです。偶然」

「偶然で魔法は発動しない!」

「いや、理屈的には──」


 説明しようとしたが、誰も聞いていない。

 全員、俺を見ている。


 なんか、嫌な予感がする。


「禁忌だ……」

「詠唱を省略するなど……」

「理を無視している……」


 いや、理屈でやったんだけど。


「えっと……普通に考えたら、こうなると思うんですが」

「普通……?」


 誰かが呟いた。


 その声が、やけに重かった。


「……あなた、名前は?」

「あ、カナメです」

「カナメ殿……」


 殿?


 俺は空を見上げた。


(この世界、思ったより雑じゃないか?)


 そう思った瞬間、背後で誰かが小声で言った。


「神が遣わした存在なのでは……」


 やめてほしい。

 本当にやめてほしい。


 俺はただ、再現性がないのが怖いだけの元社畜だ。


 なのに。


 どうやらこの異世界では、それが“普通じゃない”らしい。


 ──第1話・完


ここまでご覧いただきありがとうございます。


当面の間は、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ