異世界コンビニ無双
気がつくと、私は見知らぬ草原に立っていた。
制服姿のまま、手にはコンビニのレジ袋。中身は肉まん三つと割り箸とおでんの玉子。いや、なぜこのラインナップで異世界に?
驚いている間もなく、背後から唸り声。ゴブリンだ。三体もいる。現代日本の一般人にはちと荷が重いですな。私は割り箸を構え、ゴブリンを睨みつける。
キシャアッ。
躍りかかる影に、私は箸先を突き出す。
突如、割り箸が光り輝き、ゴブリンの身体をまるで紙のように切り裂いた。
「は?」と呟いた瞬間、画面のようなものが視界に現れる。
《神器:セブンの箸 攻撃力+999》
と浮かんでいた。
誤解のないように補足するが、セブンとは七支刀のことであり、割り箸の七つのささくれを七支刀に見立てたのだろう。
残り二体のゴブリンも向かってくるが――それこそ《いらっしゃいませ》だ。一太刀で斬り捨てる。
血煙の中、再び視界に浮かぶ文字。
《スキル獲得:深夜シフト耐性》
《称号:異世界アルバイター》
「……なんだこの扱い」
すると倒れたゴブリンが光に変わり、ポップコーンと肉まんを落としていった。ありがたくドロップアイテムをいただくと、拾ったものが文字として浮かんだ。
ステータスも見れたりするのだろうか。念じてみるとあっさり浮かぶ。
《名前:茣蓙屋敷 夢喰人》
《レベル:2》
《職業:コンビニバイト》
職業欄の下に、さらに小さな文字が追加された。
《特殊能力:値引きシール貼付》
《発動条件:消費期限切れ30分前》
「……おい、これは勇者スキルじゃないのか?」
呟いた瞬間、遠くからオークが牛丼を掲げて迫ってきた。
警戒しながら出方を窺う。するとオークは牛丼を差し出し、何か言いたげな視線を投げる。
私は瞬時にラベルに目をやる。消費期限は明日だ。首を横に振ると、オークはそのまま停止する。
まさか割引シールの時間まで待つつもりか?
異世界での戦いは始まったばかりだ。




