願い箱庭に居る案山子
願い事が生まれ心に宿った時、『願い箱庭』へと行く事が出来る。そこには願い事を叶える為に努力する人々が植えた『願い苗木』が育ち、中には大木になるまでに成長を続けるきも木も根付いている。『願い苗木』の番をする案山子の望さんは、今日も『願い箱庭』の手入れをしている。「ふう……っ」望さんの口から大きな息がこぼれた。朝から草むしりを続けていたせいで、青いエプロンは泥まみれ、長い髪や額も汗だらけ。(あらかた整備は済んだかな?後は、『願いの実』に袋をかければ一先ず作業は終わり)少し疲れている。何せ『願い苗木』の数はあまりにも多くて、まるで森のように思えるものだ。『願い箱庭』は広く、そこを守る案山子は望さんの他に夢さんだけ。二人の案山子が『願い苗木』を育てていて、夢を叶えたい人たちの実をも育てるのだ。「ただいま、『願いの実』を『願い人』さんに渡してきたよ。スッゴク喜んでた」夢さんが今、帰ってきた。育てた『願いの実』を一つ『願い人』に捧げ、夢の育ち具合を報告するのも案山子の役割。夢さんも遠い距離に住んでいる『願い人』に対面しないといけないから、体力をかなり消耗している。「お帰りなさい。大変だったね。休んでお茶でも飲んでて」「いいや、『願いの実』の袋かけ、していくよ」「え?」疲れて帰ってきた夢さんに作業はさせられない。「夢さん、袋かけはあたしが……」「数が多いから、二人でパパッと片付けよう!」夢さんは姉御はだ。年は近いのに、便りになる存在。「ありがとう、本当さスゴク助かるな」「へへっ」脚立を立てて、『願いの実』に袋をかけていると、羽音が近付いてきた。「「あ」」二人が振り向くと、カラスのクロハさんがタオルを咥えて跳んできていた。「二人とも大変だね。これで汗を拭いて」クロハさんはとても気が利く優しいカラス。案山子たちとは仲が良い。「ありがとう」「汗がびしょびしょで拭きたいと思っていたんだ」タオルは二枚。綺麗な緑色だ。「……」クロハさんは物欲しそうに『願いの実』を眺めている。「クロハさんはの『願いの実』もスクスク育ってるよ」側に在るクロハさんが宿した『願い苗木』は、滞りなく順調に実っている。クロハさんが願う事は『箱庭の森』が実現する事。この『願い箱庭』がいつか育ち、『箱庭の森』にまで成長した時、いなくなった仲間が戻って来るような気がする。「本当……案山子さんたちの作業のおかげで、『願いの実』が綺麗に鈴なりしてる!感謝するわ」大きな『願いの実』を見て、クロハさんの瞳も大きく見開き輝いた。「いつか仲間のカラスさんたちが、戻って来ると良いですね」「ありがとう。待つわ、戻るのを」クロハさんの仲間は、かつて数が増えすぎた為に一面の実を食べつくし、別の地に実を求め去っていった。「さあ、作業はもうすぐ終わるよ。休憩にはおいしい『願いの実』をいただくとしましょう」『願い苗木』に支障がない程度に食べれば、問題はない。『願い箱庭』に優しい風が吹き、時間がたおやかに流れていく。




