残された者。
ー時雨視点ー
紫音が桜花を宥めてくれた。
俺だけでは絶対にできなかった。
寄り添ってあげることができない。
やったのは桜花の頭を撫でることだけだった。
今日の判断が正しかったのか分からない。
凪と響さんを置いて行った俺は、間違っていたのではないか。
そう思ってしまう。
桜花は落ち着いたけれど、俺達の空気は重いままだった。
自分がどれだけ怜燈さんや響さんに頼っていたのか、思い知らされた。
凪の素直さにも、どれほど救われていたのか。
こんな状況になっても、ないものに縋ってしまう。
答えなんて出ない。
どれだけ願っても、失った時間は戻らない。
残るのは、痛みと後悔だけ。
だからこそ進まねば。
残されたならば、残されただけの価値を示せ。
自分にないものを嘆くな。
できることをしろ。
皆、堪えている。
紫音は小さく震えている。
桜花は涙が止まっていない。
鈴音はきっと全部知っているのに……
誰もがお互いを気遣っている。
俺には何ができる?
俺だからできることは?
「戻ろう。怜燈さんのところに戻ろう。」
俺には、転移する力も周囲を視る力も、誰かを支える力もない。
頼ろう。信じよう。
俺は英雄ではない。
繋ぐ存在だ。
「危ないわ。それに、もうきっと手遅れよ。」
紫音にそう言われた。
「そうかもしれない。でも、怜燈さんならきっと助けてくれる。」
「怜燈兄さんはいないのよ?」
「大丈夫。怜燈さんのところへは俺が繋ぐ。だから信じてくれないか?」
「……いいえ。私は信じない。」
「どうして……」
「後悔してるのは、時雨だけじゃないわ。
時雨にだけ負担はかけない。私も一緒に頑張る。
信じてなんて言わないで、私達は家族よ。支え合う存在よ。
だから、一緒に行こう。」
紫音の言葉に驚いた。
結果、独りよがりになっていたのかもしれない。
それなら……
「わかった。一緒に行こう。」
「えぇ。でも、一度休憩しましょう。」
「えっ?そこは出発しましょうじゃないのか?」
「切り替えは大事よ。皆、顔から出るもの全部出てるわ。
そんなんじゃもっと不安になるでしょ?それと、衛生的にちょっと……」
きっと空気を軽くしようとしてくれたのだろう。
紫音はやっぱりすごい。
「わかった。」
そう言って俺は顔を拭いた。
逃げる時は長く感じた道も、戻りは速く感じた。
山を登り切ると、怜燈さんがいた。
そしてその横には、アウラ様と見知らぬ男がいた。
言いづらい。
でも言わねば……
「怜燈さん!申し訳ありません、響さんと凪が……」




