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十色の追想  作者: 詩庵
出会い編。
38/47

村の記憶。

「今日も寒いの〜。」

「そうだな〜。前に雪蓮花が咲いてからもう五年か。待ち遠しいな〜。」

「あぁ、そうじゃの。」


「そういえば雪野さん家は大丈夫かな?

あの家族だけで山の中に住んで、今年も雪が酷いから心配だ……」

「どうじゃろうな、まぁ今まで大丈夫だったんだ。大丈夫じゃよ。」

「それにしてもあそこの家族は良く出来た人達じゃ。

この雪の止まぬ村に、いつも薬草やら肉やらを持ってきてくれて感謝してもいいしきれぬの〜。」

「それに美人じゃしの。」

「あぁ、間違いない。麗さんみたいな女房がいれば、やる気ももっと出るんだろうな〜。

叶和のやろうが羨ましいぜ。」


「何言ってるんだい!そんな台詞はもっと真面目に働いてからお言い!

それにあんたらには逆立ちしたって麗ちゃんのような嫁さんは来やしないよ!

それこそ叶和君並の性格の良さと顔があってこそだね!

そしてあんたもだよ!このだめ亭主!!美人じゃなくて悪かったね!」

「すまんよ、母さん。そんなつもりで言ったんじゃないんだよ。

母さんはいつまで経っても一番の美人じゃよ!」

「まぁ!口だけ達者になったのねー。」

「口だけなんて!本心じゃよ!」

「はぁ、そういう事にしておいてあげるわよ。」

ほっ……


「そういえば、今日はやけに村に若いのが少ないがなにかあったのか?」

「なんか金持ちの奴が、山に用があるらしくて体力のある若いのを連れて行っちまったんだよ。」

「山に?」

「そうだよ。なんか不味かったか?」

「不味いというか、あの山は体力があるだけの若いのには厳しいんじゃ。

それこそ雪野さんとこみたいに慣れた人間じゃないと迷う事になるぞ。」

「それは不味いな。

それについて行っちまったのは体力自慢の馬鹿だけだ。下手に迷うとそれこそあの世行きだ……

俺、今から山に行って様子を見てくるよ!」

「そうか。気をつけるのじゃぞ。」

「あぁ!ありがとう父さん!!」


「母さんや、あやつは雪野さん家の事を知っておったか?」

「確か、知らなかったと思うけど、どうだったかしら?」

「あの家族には手を出してはならんのに、厄介な事をしてくれたものよ。」

「そうね、何事もなく済んでくれればいいんだけど。」

「あの家族ありきのこの村だ。」


「父さん!母さん!大変だ!!」

「あいつらやらかしがった!

麗さんと叶和のこと殺して子供達を奴らに売りやがった!!」

「なんてことだ!今すぐ止めなさい!!

なんとしても阻止せねば!」

「キャーーー!!」

「何があった?!」

「雪崩よ!四方から雪崩が襲ってくるわ!」

「どうしてだ?!今までこんな事一度もなかったのに!」


「父さん!母さん!急いで逃げるんだ!!」

「どこに逃げると言うんじゃ?」

「どこにって、そんな事言ってる場合じゃないよ!

とりあえず今は逃げなきゃ!!」

「無駄じゃよ。儂らは禁忌を冒したんじゃ。雪野家に手を出してはならんかった。

この村は彼等にずっと護られていたのに、その恩を仇で返したのじゃ。

やった奴らも、止められなかった儂らも同罪じゃ。覚悟を決めるんじゃ、」

「そんな、知らなかった。」

「うわぁーーーー!」

「今度はどうした!?」

「雪崩が……凍った!!」

次の瞬間、また叫び声があがった。


「村の皆が次々に凍って、氷像に!!」

「逃げるんだー!」

「何処に?!」

「何処か遠くに!!」

「無理だ。ここは四方を山に囲まれているんだぞ?逃げられるものか!」

「助けてー!」

「ままーーー!どこーーー?」

「えーんえーん……」

「もうこの村はおしまいだ。」

「皆!早くヒナンヲ、スル……」

「雪緒君!!お前達もぼさっとしてないで避難を!

村長もお茶なんか啜ってないで逃げて下さい!!」

「儂らのことはいい、どうせ死を待つだけの身じゃ。儂らはこの村と生涯を共にしようぞ。

逃げれるものだけ逃げなさい。」

「お供いたしますよ。あなた。」

「すまんな、雪子。最期まで苦労をかける。愛しておるぞ。雪子。」

「その言葉だけで十分私は幸せですよ。白造さん。」


優夜から見せてもらった記憶は、

ここで途絶えていた。

「うそだろ」

「こんな事が……」

「ほんとだよ!」

「そうだよな。ありがとう優夜。」

「うん!なんか眠くなってきちゃったからもう寝るね。

あ、それと村の人だけど多分死んでないよ。」

「どういうことだ?!優夜?!」

「すーーー。」

「寝てる、何時もこんな寝付き良くないだろ……」

「力を使ったから疲れたのかな?」

「だろうな」

「どうする?」

「とりあえず怜燈さん達に報告するか。」


「怜燈さん!」

「どうした〜?」

「実は……こういう事が起きていたんです。」

「あー、なるほど」

「行くのやめる?」

「ううん。行くよ。行かなくちゃいけないんだ。」

「どうして?」

「どうしてもだ。」


怜燈さんは一体どうしたのだろうか……

何時もの怜燈さんならきっと、こんな危険が予測される旅はしない。

何が彼をそうさせるのだろうか。

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