想いの丈。
ー時雨視点ー
どれくらい時間が経ったのだろう。
目を開けると俺は布団の上に寝かされていた。
横には、響さんが青白い顔で横たわっていた。
勢いよく起き上がると、俺の足元にいた怜燈さんと目があった。
怜燈さんは、そっと人差し指を鼻に当てて俺に静かにするようにと言った。
落ち着いて周りを見ると怜燈さんの膝の上では桜花が。
響さんの横には紫音が、その横にはあの女の子が眠っていた。
凪や優朝、優夜が見当たらず動揺して怜燈さんを見ると、
「大丈夫。凪は二人を連れて綺麗な水を汲みに行っただけだ。皆生きてる。」
そう言われた。
「響さんは大丈夫なのか?こんなにも生気のない顔色なのに!」
「もうすぐ紫音が目を覚ますはずだ。
俺達に出来ることはない。紫音に賭けるしかないんだ。」
あまりにも落ち着いた声で怜燈さんが言う為、俺は怜燈さんの正気を疑いそうになった。
家族が、妹がこんなに苦しんでいるのに、どうしてもそんなに落ち着いていられるんだ……
でも怜燈さんの目は、見殺しにする目ではなかった。
むしろ包み込むような。
優しくて、真剣な目をしていた。
ー怜燈視点ー
アウラ様が去ってすぐ、俺は響と紫音を抱え、時雨達の所へ向かった。
幸いな事に、気欠の時雨以外は皆大した怪我もなく、元気そうだった。
動ける皆で手分けして、動けない者たちを人目の付かなそうな森の奥に運んだ。
そっと桜花を見ると、桜花はこくり頷き次の瞬間には木造の小さな家を創り出した。
家に持っていた布団を敷き、動けない者たちを寝かせた。
まだ動けそうな凪に、双子の面倒を頼み俺は時雨の手当をした。
かなり無茶をしたようで、時雨の体は気の流れも乱れ酷い状態だった。
気の補充は出来ないが、気の流れだけでも元に戻すために、
ゆっくり俺の気を時雨の気道に沿って流していった。
三十分もすると、自ら気が巡りだした。
これで大丈夫だろう、後は痛みに耐えるだけだ。
そこは時雨に頑張って貰おう……
時雨の状態が安定したのを見届けると、静かに袖を引っ張られた。
桜花だ。
先程の創造で疲れたのだろう。
眠たそうにしながら、心配そうに皆を指さした。
「大丈夫だよ。もう寝な。」
それを聞くと少し安心したのか桜花は、眠りに落ちていった。
時雨が目を覚ました。
さっきの出来事から、まだ一時間経つか経たないかで目覚める精神力は本当に尊敬する。
でも、今は興奮して体の痛みを感じていないのだろう。
時雨は本当に家族思いの奴だ。
後は紫音が起きるだけだ。
正直、怖い。
姉思いのこの子はきっと自分を責めるだろう。
俺がどんなに慰めたとしても、きっと自分を許せない。
俺がそうだったように……
「ここは……?」
布の擦れる音がした。顔をあげると紫音が目を覚ましたところだった。
そしてすぐ、
「いや、いや……いやーーーー!!
もういや、もう傷つけたくない!
ごめんなさい、ごめんなさい……ゴメンナサイ……」
狂ったように叫び、謝る紫音。
彼女を前に俺は、声をかける事すら出来なかった。




