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十色の追想  作者: 詩庵
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神の力。

「た、大変申し訳あり……」

「あっははははは。

わらわに啖呵を切るか。月夜の王は相変わらず愉快な者たちが多いな!

まずは先程の非礼を詫びさせていただこう。

不快な思いをさせてしまい申し訳なかった。」

訳を聞くと俺が王である事を自覚せず遊んでいるのではないか、

と心配になり、喝を入れようとしてくださったらしかった。

紛らしい……

それにしても、あまりにも迫真の演技すぎて思わず本音を言ってしまった。


「こちらこそ、失礼な物言いをしてしまい申し訳ありませんでした。」

「お互い様だ。君さえ良ければ水に流してくれないか?」

素に戻したアウラ様は風を司る神なだけあり、とても自由、いや爽やかな方だった。


「さっき心配してた者たちだが、

気欠になっている方の者は、一週間ほど安静にしていれば回復するだろう。

それより、危険なのはこちらの者たちだな。

倒れている方も不味いが、暴走している方がもっと危険な状態だ。

神族の暴走は、人間の精神崩壊よりも重篤だ。

徐々に体に流れる神力がその体を蝕み、その身を滅ぼす。

早く正気に戻さねばならぬ。

特にこの者は、リーフの所の神族の力だけでなく、ラアルの加護を持っておる。」


ラアル。それは毒を司る神の名だった。

「誤解しておるようだが、リーフという名の神もラアルと言う名の神も存在せんぞ。

どちらもイハネスの別人格だ。」


リーフもラアルも、破壊の神ヘレスから生まれた病を司る神イハネスの別人格らしい。


かつて光の神ルチアと闇の神アビスがイハネスを封印しようとした際、力の衝突が起きた。

その影響で、イハネスの中に二つの人格が生まれたのだという。


「そんな事はどうでもいいのです!どうしたら紫音を助けられるのですか?!」

「どうでもいいって、君案外度胸あるよね。

いつもなら「ない」と言うところだけど、今回君達は運がいい。

聞いた所、原因が感情の乱れによるものみたいだから、カタルシスがどうにかできるよ。

そろそろ帰ってくるはずだ。」

『『ただいま戻りました。』』

「ああ。帰ってすぐのところ悪いんだけど、カタルシス。そこの子を助けてくれ。」

『本当に急ですね。わかりました。少々お待ちください。』

「で?クロニクル。何がわかったんだい?

カタルシスの仕事が終わるまで報告を聞こうか。」

『実は……です。』


クロニクルの話をまとめると、

鈴音は、この近くの村、風鳴村に住む

神風家の長男・神風鈴桐と

神桜家の次女・神桜悠乃の間に生まれた子供らしい。


兄と姉がおり、火の国の近くの村で家族仲良く暮らしていたらしい。

しかし、二人はほぼ駆け落ちした身であった為、二人を探していた同じ一族のものたちに見つかり連れ戻されてしまった。

その結果兄と姉は母方の方に引き取られ、

風の神の愛し子だった鈴音は、父方の方に引き取られ離れ離れにされてしまったそうだ。

父親の実家に帰ってすぐは、風の神の愛し子として大切にされていたらしいが、

成長するにつれ、彼女の感情が風に大きな影響を与える事がわかったそうだ。

彼女が泣けば嵐が起こり、癇癪を起こせば竜巻が起こった。


村人は彼女を愛し子ではなく、呪い子だと思い込んでしまった。

そして彼女を持て余し始めた。


神は、自ら加護を与えた子の状態を常に把握できる。

だからこそ、村の神木から通じる異界に彼女を閉じ込め、自由を奪ったのだった。

異界では、ほとんどの神が様子を探れぬ為丁度良かったのだろう。


それだけならばまだ良かったのだが、村人は彼女に五感を徐々に失わせる毒を盛り続けた。

彼女は五感の視覚、聴覚、感覚を既に失っている状態になってしまった。

もちろん、彼女の父親は反対していた。

しかし、一人の意見では村の意見を変えられなかった。

そんな父親は、今行方不明になっているのだそうだ。

そこへ俺達が来た。

というのが事のあらましだった。


「改めて礼を言う。私の愛し子を助けてくれてありがとう。」

『私からも感謝申し上げます。

それに私の眷属である、優夜の事も大切にしていただいて嬉しく思います。』

『終わったよ?』


そんな話をしているうちにカタルシスが、

気を失ってぐったりしている紫音を抱きかかえてこちらに戻って来た。

カタルシスは紫音を俺に預けると、


『状態は安定させたけど、ほっとけばすぐ悪化しかねないから、

定期的に様子を見てあげてね。歳の割に結構抱え込んでるみたいだから。』

と言ってきた。


知らなかった。

やはり俺は皆の事をちゃんとわかってないんだな。

『あんたが思い詰める必要はないさ。

あんたは大人の様に見えても、まだ十四歳の子供なんだからさ。

そんなに後悔するなら、これから変えて行けばいいんだよ。

あんたには、それができるだけの力も思いやりもあるんだからさ。』

俺の心を見透かした様にカタルシスはそう告げた。


「さぁ、あまりここに居続けると良くないな。

私達は國に帰るとするよ。鈴音にすまなかった。

これからはもっと大切にすると伝えてくれ。また会いに行くともね!

それと解毒は明日の夜明けまでにはしないと、取り返しがつかなくなるから気をつけてね。

今は私の力で毒の進行を遅らせてるけど長くは持たない。

忘れないでね。」

そう言い残し、アウラ様達は去って行った。

神の奇跡だった。

だが、頼ってばかりではいられない。

次は俺の番だ。

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