古の血と想い。
ー紫音視点ー
姉さんに「解毒を!」と言われ、思わず合点がいってしまった。
私は、この子を助けたかったのではなかった。
この子の中にある毒に惹かれていたのだ。
なんて最低なのだろう、冷静になろうと思っても冷静ではいられなかった。
「紫音!」
もう一度名前を呼ばれた、姉さんの優しげな桃色の瞳が、
少し怒ったようにまっすぐ私を見つめていた。
そこからは記憶がない。
怖い、苦しい、恥ずかしい、欲しい、
感情が渦を巻き、私の心を覆い尽くした。
そこにいるのは、もはや毒を振りまくだけの蟲だった。
ー響視点ー
紫音が固まって動かなくなった。
いやそうではない、これは暴走だ。
古から伝わる、神族の血が暴走し始めたのだ。
私達の家は、少し人口の多い街の病院だった。
腕の良い治癒士の父様と、どんな病も治す薬を作りだす母様と、私と紫音の四人暮らし。
とても平和で、居心地のいい場所だった。
父様と母様は二人とも神族だった。
父様は強い治癒の気を持つエルフの末裔だった。
私はそんな父様の一族の血を、強く受け継いだ先祖返り。
その力はとても強く、小さな傷から大きな傷、
そして死者までもを生き返らせる力があると言われていた。
もちろん死者蘇生を行えばその代償は高くつくと言われていた為、使った事はなかった。
母様は、薬を司る神リーフ様からの加護を強く受けた一族の出だ。
解毒から製薬まで幅広く活躍していた。
元々力の強い母様の力を濃く受け継いだ紫音は、母様をも超える力を持っていた。
だからこそ危険なのだ。
強すぎる力は、幼い紫音には毒でしかなかったのだ。
暴走を始めた紫音の気は、周囲に毒を撒き散らし始めてしまった。
もう止められない。
私には、紫音を止める術がなかった。
一刻も早く怜燈さん達を遠くへ避難させなくては。
怜燈さん達に避難するよう伝えようとした時、ふっと悪寒が走った。
紫音から出てきた毒が形をなし始めたのだ。
それはまるで人の手のようだった。
その手は、私が治癒していた女の子へゆっくり伸びていった。
咄嗟に水の気を使い、女の子を怜燈さんのところに飛ばした。
そこで毒を吸いすぎてしまったのか、私の記憶は途切れてしまった。




