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十色の追想  作者: 詩庵
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なにも聞こえない六月だった。

「鈴音姉さんって、どうして組手の時いつも目を瞑るの?」


弟に言われた何気ない一言にびっくりした。

今まで、気づかなかった。


私は普段、ほとんど何も見えていない世界で過ごしている。

目が、目としての役割を失っているのだ。

眼鏡をかけたところで、何も変わらない。

だけど、今まで生活で困った事はなかった。

風が全て、教えてくれるから……


ふと香る雨の香り。

このところずっと雨だ。


今思えば、それは梅雨だったのだろう。

けれど昔の私は、雨の音さえ聞こえない世界にいた。

何も見えず、何も感じられない世界。

身体は動かず、言葉を発する事もできなかった。

まるで生きた死体だった。


記憶にある限り私は、怜燈兄達と暮らし始めるまで、そんな世界にいた。

分かっていたのは、

たまに香る風の匂いと、

少し刺激のある液体を飲まされていることだけ。

ずっと寝たっきり。

何も分からない、何もできない。

それが当たり前の世界だった。

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